第119話 火の墓守③

 鬼狼オーガウルフのステータスはバランスが良い。

 回復魔法も使えて、近接戦、遠距離戦と両刀。

 もちろん、できないことだってあるけど、それでも総合力は高いモンスターだと思ってる。

 今まではまだその力を発揮できていなかったけど、今は違う!!

 それをノーブル騎士相手に証明してみせる!


 ノーブル騎士は体勢を立て直すとすぐさま、リーフィアに向かって駆け出す。

 これは盾のリヴィングウェポンのスキル、挑発の影響だ。


鬼狼オーガウルフ、シャインダイブ!」


 とりあえずブルーは万が一に備えて待機。それにブルーが何もしないだけでノーブル騎士にはプレッシャーを与えられる。

 そして、リーフィアに気を取られているところを鬼狼オーガウルフが横撃するも盾に防がれる。

 しかし、これは想定の範囲内。盾を持つ左手側から突っ込めば、必然と右手に持つ剣で迎撃ではなく、盾で防御するのは読めていた。

 鬼狼オーガウルフは左手で盾をしっかりと押さえて飛び、突っ込んだ勢いそのままにノーブル騎士の上を取る。

 左手一本で且つ不安定な盾の上での逆立ち状態にも関わらず、右手でライトクローを放つ。

 ノーブル騎士も咄嗟に剣でガードするも鬼狼オーガウルフの方が一枚上手だ。

 その状態で前方にわざと倒れ込み、右足でフレイムクローを放ち、ノーブル騎士の顎を蹴り上げる。

 火属性のフレイムクローだとダメージは期待できないけど、それは問題無い。

 特訓の成果は確実に出ている。


鬼狼オーガウルフ、プチシャイン」


 蹴り飛ばされてやや体勢を崩したが、すぐに建て直す。

 そこに速さが最大の特徴の光魔法で追撃する。

 プチシャインの威力ではノーブル騎士の体勢を崩したりできない以上、ここで突っ込めば、カウンターの餌食となるな。

 ノーブル騎士に遠距離攻撃の手段があるとはいえ、ここは一度距離を取って仕切り直すか。


 本当ならこっちにはモンスターが3体いる訳だし、連携して一気に叩きたいとこだけど、個々の成長に重点を置いたこともあって、連携がイマイチ取れないんだよな。

 まだお互いに何がどれだけできるのかわかってないって感じだからもっと経験を積めば、今まで以上のバトルができるようになると思う。


 距離がある程度あるからか、今度は突っ込んで来ず、遠距離から魔法を使って攻撃してくる。

 槍の形をした炎が十本近く飛んでくる。これってエルナが使ってるフレイムランスじゃ…いや、そんなことどうでもいい!この数はさすがの防ぎきれない。

 ブルーのディバインシールドはまだクールタイムから明けてない。

 一か八かブルーに相殺してもらうか。でも、全部はさすがに無理あるよな。

 すると、リーフィアが前に出る。まるで私が防ぐと言っているようだ。

 …あ、え、でも、さすがにこの数は無理じゃない?


 俺の考えを否定するかのようにリーフィアは騎士王の風刃閃で全て斬った。

 確かにリーフィアは魔法斬りができるけど、これはちょっと想像以上だわ。

 まあおかげで何とかなったし、いけるかもって思えた。

 今なら連携して戦える、そんな気がする。


「ブルー、プロミネンス!リーフィアは常にノーブル騎士の間合いに!鬼狼オーガウルフ、ノーブル騎士の背後に回って!」


 挑発スキルのおかげでノーブル騎士は常にリーフィアに意識がいっている。

 それを利用してブルーは遠距離から攻撃しつつ、鬼狼オーガウルフが隙を見て背後から仕掛ける。

 リーフィアの攻撃を何回も受けているからノーブル騎士の動きが徐々に鈍くなっている。

 今は通常攻撃だけで斬り結んでいるけど、リーフィアの攻撃には闇属性が付与されている。

 ダメージを負ってもすぐにブルーと鬼狼オーガウルフのプチヒールで回復できる。

 斬り合いも少しずつではあるけど、リーフィアが押している。

 最初はリーフィアとの斬り合いも余裕ありげな感じだったノーブル騎士から余裕が無くなっている。

 このタイミングを待っていたかのようにブルーと鬼狼オーガウルフが仕掛ける。


 ブルーは再び、フレイムフォースを放つ。しかし、鬼狼オーガウルフはオーガフレイムを放たないから目眩ましとしてはやや不十分だ。

 それでも至近距離でリーフィアと斬り合っているこの状況では効果覿面こうかてきめんのようだ。

 ブルーとリーフィアのばかり気を取られ、なりを潜めていた鬼狼オーガウルフが意識の外へと消えていた。

 進化し、四足歩行から二足歩行になった鬼狼オーガウルフだが、敢えて四足歩行で駆けることで姿勢を低く保つことで更に気づかれにくくなっている。

 完全に鬼狼オーガウルフを見失ったノーブル騎士は次の瞬間、宙を舞い、下から蹴り飛ばされる。


 今、鬼狼オーガウルフはノーブル騎士の足を払い、体が宙を舞ったところですかさず、ライトクローで蹴り飛ばした。

 宙を舞い、自由に身動きが取れないノーブル騎士は格好の的でしかなかった。

 ブルーは遠距離から、リーフィアと鬼狼オーガウルフは至近距離で使えるスキルを総動員して総攻撃を仕掛ける。

 それでもまだノーブル騎士のHPは1割ほど残っている。

 こちらは全ての攻撃スキルを使ったから、クールタイムが明けるまで通常攻撃で攻めるしかない。


 ノーブル騎士は剣に炎を纏わせて、攻撃に意識が偏り、防御が疎かになっているリーフィアに向けて剣を振り下ろす。

 リーフィアは捉えたと思われたが、ノーブル騎士の炎を纏った剣は見えないシールドか何かに阻まれている。

 そう、ブルーのディバインシールドだ。

 総攻撃を仕掛けている最中にクールタイムから明けていたが、防御スキルの為、使われなかったのがここで役に立つ。

 しかし、今の一撃を防ぐので精一杯みたいで、ディバインシールドは割れてしまう。

 すぐさま体勢を立て直して追撃を試みるノーブル騎士だが、二撃目はリーフィアの防御が間に合う。

 リーフィアとノーブル騎士が鍔迫り合いをしている中、背後から鬼狼オーガウルフが迫るが、ノーブル騎士も二度目は無い。鬼狼オーガウルフには最大限の警戒をしている。

 それを感じ取っているのだろう。距離を詰める速度が極端に遅い。


 この時、ノーブル騎士は間違えた。最大限警戒すべきは鬼狼オーガウルフではなく、ブルーの方だ。

 あの総攻撃の最中さなか、ブルーは遠距離攻撃に徹していた。

 至近距離でリーフィアと鬼狼オーガウルフが猛攻の前に立ち入る隙が無かったからだ。

 つまり、ブルーにはまだクールタイムに入っていない攻撃スキルがある。


「ブルー、電光迅雷!!!!」


 雷を纏い、高速と化したブルーには反応すらできなかった。

 このバトル中に電光迅雷は何回か使ったけど、ノーブル騎士は挑発スキルでリーフィアにばかり意識がいっていた為、この大事な場面でブルーの電光迅雷が頭から消えていた。

 もちろん、電光迅雷だけではノーブル騎士の残りHPを削り切ることはできない。

 いくらデバフで弱体化しているとはいえ、元々のステータスが高い。

 あとちょっと足りない。

 でも、そこはプロミネンスアタックとリーフィアと鬼狼オーガウルフの通常攻撃でどうにかした。


 ノーブル騎士は目の前から消滅する。

 つまり、俺たちの勝ちだ!!!!

 やった、勝った。三度目の正直だな。

 でも、これまだ第1エリアなんだよな。しかもこのノーブル騎士ってエリアボスとかじゃないし。

 ここのエリアボスって普通に考えたらもっと強いよな。

 それ考えるともっともっと強くならないとな。


 プルプルプルプル、プルプルプルプルプルプル

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