第118話 火の墓守②

 ホテルに帰った俺は、今日のバトルを振り返っていた。

 そこで思ったのはもっとLvを上げないとだ。

 いろんな人に指摘されたことだから明日からは攻略というよりもLv上げに重点を置こうと思う。


 プルプルプルプルプルプル、


 部屋でARフィールドを展開したらいつものように真っ先にブルーが甘えに来たけど、リーフィアに捕まる。

 俺が考え事してたからかな?

 プルプルしながら今か今かと待つブルーを「まだダメです」と言って抑えている。


「リーフィア、ありがとう。もういいよ」


 プルプルプルプル、プルン、プル


 うわっ、OKした瞬間にリーフィアの腕から抜け出して一目散に俺に向かって来た!

 プルンと飛び跳ねて俺の腕の中にプルと収まるブルー。

 よしよし、なでなで。




 こうしていつも通り甘えて来るブルーを可愛がったりしてたら1日が終わる。

 次の日からも引き続き『王家の墓』第1エリア『火の墓守』に挑戦を続ける。

 しかし、あまり状況は芳しくなかった。

 第1エリアとはいえ、奥に進むと出現するモンスターの数が一気に増える。

 しかも出現するのが見習い騎士ではなく、騎士、エリート騎士といった見習い騎士の上位互換とも言えるモンスター。

 全体的にステータスが見習い騎士よりも高く感じる上に複数体同時に相手しないといけないから厄介だ。

 それにエリート騎士は火属性の魔法が使えるので、遠距離攻撃でチクチクコツコツができない。

 その為、まだ『火の墓守』のエリアボスがいるボス部屋にすら到達していない。





 フランスに来て2週間が経過した頃、


「ブルー、鳴神!リーフィア、騎士王の風刃閃!鬼狼オーガウルフプチシャイン、プチファイア、オーガフレイム!」


 よくやく『火の墓守』に出現するモンスターとのバトルに慣れてきたところ。

 最初は見習い騎士を倒すので精一杯だったけど、今は騎士やエリート騎士が相手でも難なく勝てる。

 今、ちょうどエリート騎士1体と騎士3体を相手に勝ったところだ。

 だが、それでも未だにエリアボスがいるボス部屋には辿り着けていない。

 騎士やエリート騎士を倒して更に奥に進むと必ずノーブル騎士が出現する。

 同時に2体、3体と出現する訳じゃないけど、とにかく強い。

 まるでこの先にいるエリアボスに挑戦したければ自分を倒して行けって感じで、相変わらず、すごい威圧感。

 これでエリアボスじゃないんだからDランクダンジョンはやっぱり一筋縄じゃいかないな。


 ノーブル騎士が戦闘態勢に突入するとほぼ同時にリーフィアが単身駆け出す。

 過去に2回ほど戦って正面から馬鹿正直に挑めば負けるのはわかった。

 だから時間は掛かるけど、徹底的にデバフや状態異常を付与して弱体化させたところを叩く。

 その為にはまずリーフィアの攻撃を当てるところから。


「リーフィア、風薙ぎ!!ブルー、フレイムフォース!鬼狼オーガウルフ、オーガフレイム!」


『火の墓守』に出現するモンスターは例外無く、火属性の攻撃の効きが悪い。

 ブルーみたいに火属性耐性を持っているんだと思う。

 だから最初の頃はかなり苦戦したけど、攻撃はダメージを与える以外の目的でも使える。

『ゴブリンパニック』でのレッドゴブリン戦でもしたようにフレイムフォースは目眩ましに使える。

 でも、それだけだとここのモンスターには通じなかった。

 そこでフレイムフォースと同時に鬼狼オーガウルフにオーガフレイムを使ってもらう。

 同じ火属性の魔法だからか、フレイムフォースとオーガフレイムが合わさってかなり強力になった。

 このコンボなら通用することがわかってからはここでの戦いがかなり楽になった。

 ダメージ自体はそこまで期待できないけど、目眩ましの役目はしっかりと果たす。

 炎が吹き荒れる中、リーフィアの風薙ぎが決まる!


「よし!!!」


 たった一撃当てただけなのに思わず声を出して喜んでしまったが、こればかりは許して欲しい。

 ノーブル騎士を相手にまともに攻撃を当てられたのはこれが初めてだから。

 このまま追撃を…、いや違う。今は攻める時じゃない。


「ブルー、ディバインシールド!!」


 ブルーがディバインシールドを展開するとほぼ同時に轟々と燃え盛る炎の弾丸が飛んでくる。


 ゴン、ゴン、ゴン、ゴン、ゴン、ゴン


 全部で6発、何とか防げたけど、今のでディバインシールドが割られた。

 完全に風薙ぎが決まって追撃のチャンスだったけど、何とか踏みとどまれた。

 何となくだけど、レッドゴブリンにカウンターを決められた時と同じ感じがした。

 そしたら案の定、とんでもないカウンターが飛んできたよ。

 でも、カウンターを防ぎきった今こそ攻めるチャンス。

 俺が指示出さなくても、既に動いてくれてる。

 当然、カウンターにはカウンターで返す!!!

 素早い身のこなしとその嗅覚でノーブル騎士に突撃をする鬼狼オーガウルフ

 光り輝く右手の爪、ライトクローで引き裂こうとするが、ノーブル騎士が左手に持つ盾に阻まれる。

 そのまま右手に持つ剣に炎を纏わせて鬼狼オーガウルフを斬ろうとしたところで謎の衝撃に襲われる。

 謎の衝撃の正体はブルーだ。

 ブルーが電光迅雷を使い、瞬時に鬼狼オーガウルフのカバーに入りつつ、リーフィアに繋ぐ。

 リーフィアの剣の間合いの外にいるからリーフィアからの攻撃は最も警戒していないと思う。

 でも、リーフィアにも遠距離攻撃の手段は一つだけある。

 スケルトンナイトの時からずっと愛用しているスキル。


「リーフィア、閃撃!!」


 ブルーと鬼狼オーガウルフに挟み込まれ、近接戦も油断できない状況。

 そんな中、遠距離から漆黒の斬撃がノーブル騎士目掛けて飛んでくるも回避できず、被弾。

 そのまま距離を一気に詰めてダークスラッシュで更なる追撃を行う。


 これでリーフィアのスキルが全てクールタイムに入った。

 騎士王の風刃閃はさっきのバトルで使って、まだクールタイムから明けていない。

 ここまではリーフィアを軸に戦ったけど、スキルが使えないとダメージはそこまで期待できない。

 だから次は鬼狼オーガウルフを軸に戦う。






 フランスに来てランク変動型ダンジョン『王家の墓』に挑戦して、今まで通りの戦い方じゃダメだと思った。

 そこで何かヒントは無いかと思い、去年行われたAトーナメントの映像を見返した。

 それを改めて同じプレイヤーとして見て気づいたのは、強いのはエースモンスターだけじゃないってことだ。

 エースモンスター以外のモンスターもエースモンスターと同じくらいに強い。

 それでもエースモンスターはエースと言われるだけの何かを持っていた。

 ここぞという時に頼れる存在なのは間違いないけど、エースモンスターの風格みたいなものがある気がした。

 俺のエースモンスターは間違いなくブルーだけど、エースモンスターの風格みたいなものは無いと思う。

 あるのは、甘えてる時の可愛さとかかな。

 エースモンスターの風格みたいなものはそう簡単には身につかないと思う。

 だからまずはリーフィアと鬼狼オーガウルフをもっと強くする!!


 実際にこの前、練習バトルをしたらリーフィアも鬼狼オーガウルフもブルーに完敗したからな。

 ステータスでは剣と盾のリヴィングウェポンを装備したリーフィアの方が高いけど、まだブルーの方が強い。

 鬼狼オーガウルフからは全体的にステータスがバランスに特化してるから強みが無いってリーフィアを経由して抗議されたな。

 でも、俺は鬼狼オーガウルフならバランスの高さを強みに変えられると信じてる。そう伝えたら鬼狼オーガウルフとどうしたらもっと強くなれるのか毎日のように一緒に考えるようになったな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る