第114話 先輩たちに相談

 今は『闇の祭壇』第2層に挑戦している。

 ここではゾンビが出現する。

『嘆きの墓地』でもゾンビとは戦ったけど、ここで出現するゾンビは根本から何か違うと思わされる。

 一番大きな違いは攻撃に闇属性が付与されていることだけど、それ以上に連携して来られるのが厄介だ。

 リーフィアが装備している盾のリヴィングウェポンの挑戦スキルが全てのゾンビに作用するから余計に大変だ。

 常夏の白黒モノクロフェスが終わるまでに第2層を攻略するのはこのままのペースだと厳しいかな。

 今日だけで進めたのはマッピング率的に1割くらいかな。

 やっぱり連携してくるゾンビを倒すのに時間がかかり過ぎるな。


 昨日、シグマさんから指摘された俺の弱点。

 それが何なのか未だにわからない。

 数で押されたら弱いとか?

 それとも連携してくるモンスター相手に弱い?

 いろいろ考えてはいるけど、どれもこれもピンとこない。

 正直、ゲームを始めた頃に比べてかなり強くなった。

 ブルーがいて、リーフィアがいて、鬼狼オーガウルフがいる。

 個人的にはかなりバランスが良いと思っている。

 それに運が良かっただけかもしれないけど、新入生代表トーナメント、タッグEトーナメントとベスト4に入った。

 ギルドマスター決定戦でもオリヴィアには負けたけど、新入生代表トーナメントの準決勝で負けた莉菜には勝てた。




 ホテルに戻った俺は薫先輩に相談することにした。

 困った時は相談しろ的な話をされたから時折相談に乗ってもらってた。

 事前にメッセージ送って、今は部屋にいるから部屋に来てくれと言われたので、薫先輩の部屋に向かう。

 部屋の前に着いたらインターホンを押す。

 すると、すぐに薫先輩が出迎えくれる。

 薫先輩に言われるままに部屋の中へと入る。


「で、今日はどうした?」


「ある人に言われたんです。弱点を克服するべき的なことを。でも、考えても全然わからなくて…」


「なるほどな。(それを鬼灯に伝えた奴はかなり先を見据えてるな。一体誰だ?まだその段階じゃないだろ?いくら何でも早過ぎる。さて、何て答えたものかな)」


 ピンポーン、ピンポーン


「?誰だろ、こんな時間に。悪い、鬼灯。ちょっとそこで待ってくれ」


「はい」


 薫先輩がドアを開けてインターホンを押した人が誰か確認する。

 薫先輩に隠れて誰が訪ねて来たのかわからなかったけど、声ですぐにわかった。


「薫くん、鬼灯くんが来てるって聞いたよ!私も交ぜて!!」


「琴音先輩、その情報どこで仕入れたんですか?」


「それは秘密!」


 薫先輩はため息をつき、何を言っても意味が無いと判断したのかすんなりと琴音先輩を部屋に迎え入れた。


「あ、いたいた〜。2人で何の話してたの?」


 俺は薫先輩にした話と全く同じことを琴音先輩にも伝えた。

 話を聞いた瞬間、琴音先輩の雰囲気が激変する。

 ちょっといや、かなりふわふわしていたけど、一気に引き締まった感じ。

 あと、俺の気のせいかもしれないけど、ほんの一瞬、琴音先輩が薫先輩と何か話したそうにしてたような。

 たぶん俺の気のせいかな。


「うーん、あ、そうだ!薫くん、ARフィールド展開してよ!そっちの方がみんな交流が持てて楽しいでしょ?」


「え、あ、なるほど」


 薫先輩が言われるがままにARフィールドを展開する。

 するといつもの様に展開とほぼ同時にブルーが現れる。

 ただ、今日はすぐに後を追うようにリーフィアも現れた。

 理由はブルーを回収する為ぽい。

 俺にプルプル、プルンと飛び込んで来たブルーだけど、空中でリーフィアにガシッとキャッチされて連れて行かれた。

 それを見た薫先輩と琴音先輩が大爆笑してたよ。

 うん、最近これが当たり前になりつつあるけど、普通は違うよな。


「はー、ごめんね。かなり面白い子だね。おいでシルヴィーユ」


「ふー、おまえも来いドランバード」


 一息ついてから琴音先輩と薫先輩はそれぞれモンスターを1体呼んだ。

 それに呼応するかのように再びブルーが、後を追うようにリーフィアが現れ、すぐにブルーを捕まえる。


「主に迷惑をかけてはいけませんよ、ブルー」


 プルプルプルプルプルプル、プルプルプル


「ブルー、ダメなものはダメです!」


 ブルーとリーフィアが言い合い?をしているとシルヴィーユがブルーをリーフィアの手から奪う。


「へえ、鬼灯くん、ブルーすごいね。シルヴィーユが気に入るって珍しい。ブルーが可愛いと認められたね」


「琴音先輩のシルヴィーユは可愛いモンスターに目がないからな」


 なるほど。シルヴィーユとブルーというより、薫先輩のドランバードの方がちょっとヤバそうな雰囲気ありません?

 今、リーフィアとすごく睨み合ってますよ。

 これかなりヤバい感じじゃ……。


「ほう、強いな。名は?」


「リーフィアと申します。貴方は?」


「失礼。俺はドランバード……」


 どうやらリーフィアと薫先輩のドランバードと仲良くやれそうな感じだな。

 良かった。


「これまた珍しいな。ドランバードが認めるか。しかもエースじゃないモンスターを」


「あの強さが全てのドランバードが認めるって鬼灯くん、スゴすぎ!!」


「え?そうなんですか?」


「うんうん。やっぱ将来有望株だね」


 全然実感がわかない。

 でも、琴音先輩にそう言ってもらえるのは素直に嬉しいな。


「そんじゃあ話戻すけど、まず鬼灯のモンスターはDランクの上限Lv45に到達してるのか?」


「えっと、ブルーだけLv45に到達してます」


「それならまずはLv上げだろ?弱点の克服云々はそれが終わってから考えればいい。強くなる余地がわかりやすくLv上げという形で残ってる。やれることをまずはやれ」


「うん、そうだね。これが既にLv上限に達してて何年もトーナメントで1回戦敗退とかだったら話は変わってくるけど、鬼灯くんは違うしね」


 確かにその通りだ。

 まだブルー以外はLv45に遠く及ばない。

 焦ってるのかな、俺。


「あとリーフィアだっけ?人類種だよな?リヴィングウェポンは持ってるのか?」


「あ、はい。武器と防具両方ともリヴィングウェポンを装備してます」


「リヴィングウェポンのカテゴリーは?」


「剣の方が武器種で、盾は武具種です」


「ならやっぱり今はLv上げじゃないかな?」


 こうして薫先輩と琴音先輩からはLv上げに専念すべきという話をされて、俺は薫先輩の部屋を後にした。

 でも、琴音先輩は何か薫先輩に話があるとかで部屋に残っている。



「ねえ、薫くん。誰かな、鬼灯くんに弱点克服の話を持ち掛けたの」


「さあ?でも、その人の気持ちはすごいわかりますよ。鬼灯は可能性の塊だし。だけど、まだ早い。鬼灯には確かに致命的な弱点はあるけど、これは一朝一夕でどうこうできる問題じゃない」


「うん。でも、教えてあげても良かったんじゃない?遅かれ早かれいつかはぶつかる問題だよ。薫くんにも考えはあるだろうし、薫くんが言わないなら私も言わないけどさ」


「ありがとう、琴音先輩」


 まだ早いんだ。鬼灯にはもっと伸び伸びとゲームを楽しんで欲しい。

 鬼灯が自分の弱点と真に向き合わないといけないのはCランクに昇格してからだ。

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