第115話 常夏の白黒祭終了

 遂に常夏の白黒モノクロフェス最終日を迎える。

 俺はまだ『闇の祭壇』第2層を攻略できていない。

 数の暴力ともいえるゾンビの大群を相手にかなり時間がかかる。

 エリアボスにすらまだ挑戦できていない。

 今もエリアボスのいるボス部屋を探してダンジョン内を進んでいるけど、マッピング率は約70%ほど。

 まだ未探索エリアが30%ほど残っており、とても残り時間での探索はできない。

 帰り道にゾンビと遭遇することを視野に入れると、そろそろ切り上げないと集合時間にも間に合わなくなる。


「ブルー、リーフィア、鬼狼オーガウルフ今日はもう帰ろう。時間に間に合わなくなる」


 船で帰るのは明日の早朝になるけど、今日だけはこの後にイベント?があるらしい。

 遅刻厳禁だとかで、薫先輩と琴音先輩のお2人からメッセージで必ずこの時間までには帰って来いと釘を刺されている。


 集合時間まで僅かばかり時間があるので、一旦俺はホテルの部屋に戻ってゆっくりしてから行くことにする。

 すっかりARフィールドを解除するのを忘れてて、ベットで横になってゆっくり休もうとしたらブルーの突撃をくらった。

 いつもながら俺のお腹の上に乗ってプルプルしてる。

 何でブルーはいつもこんなに元気なんだろう?

 半ば諦めムードに入っているとリーフィアがすかさずブルーを連れて行った。

 俺はそのままベットに横たわったまま寝入ってしまう。

 そんな余裕は無いのに。



 プル、プル、プル、プル、プル、プル、プル


 んん、誰?プルプルしてるの?

 ん?プルプル?それって……


 やっぱりブルーだ。

 あれ、でも、リーフィアに連れて行かれてなかったっけ?

 いや、そもそも俺何か大事なことを忘れてる気がする。


「主、そろそろ向かわないと集合時間に間に合いません」


 しゅうごうじかん?

 何それ?……あっ!!

 ヤバッ、すっかり忘れてた!


「ごめん、ありがとう。ブルー、リーフィア助かったよ!」


 プルプルプルプル


「いえ、お役に立てて何よりです」


 急いで身支度を整えて、事前に言われていた集合場所へと向かう。

 集合場所に着くと既に大勢の人が集まっている。

 ほとんどが白黒モノクロ学園の関係者だけど。


「おっそーい!もう!時間ギリギリ!!まったく、もう!」


「どうせギリギリまで『闇の祭壇』で粘ったとかだろ?そしたらゾンビの大群と遭遇して倒すのに時間かかったとか」


「あははははは、すみません」


 いやあ、ホテルの部屋で少しゆっくり休んでから行こうと思ってたら寝入ってブルーとリーフィアが起こしてくれなかったら確実に遅刻してたとか言えないなあ。

 というより、何かすごくいい匂いがするな。

 先輩たちからは夕食は絶対に食べるな的なこと言われてたし、みんなでワイワイしながらご飯食べる感じかな。


「1年生諸君、初めての常夏の白黒モノクロフェスどうだった?いろいろとトラブルに見舞われたチームもあったと思うけど、存分に満喫してくれていたら私は嬉しい。――それでは今から常夏の白黒モノクロフェス最後のプログラム、常夏のBBQバーベキューを開催する!!!!!思う存分、食べ尽くしてくれ!!!」


「「「「「「「おおおおおお!!!!」」」」」」」


「「「「「「「食べるぞ!!!!!」」」」」」」


 何この熱気。一気にこの場所の熱量が跳ね上がったんだけど。

 しかも、屋外だからめっちゃ暑いし。


「鬼灯、これが白黒モノクロ名物、常夏のBBQバーベキューだ。まずは肉じゃなくてアイスを食べるといいぞ。ただでさえ暑いのにマジで暑苦しい連中のせいで余計に暑く感じるからな」


「オススメは白黒モノクロアイスだよ〜。左右が白と黒で別れてて味もかなり個性的。市販では売ってないから普段食べることもできないしね」


「俺、あんまし好きじゃないんですよね、白黒モノクロアイス。味が個性的すぎて」


 個性的な味?一体どんな味なの?

 恐る恐る薫先輩と琴音先輩に言われるがままに白黒モノクロアイスを手に取り、食べてみる。

 ………白い方は甘塩っぱい?しかも何か口の中がスーってする。そして黒い方はくっそ甘い!

 何なのこの味。


「んんんー、美味し〜!!!やっぱアイスは白黒モノクロアイスに限るね!」


 琴音先輩が美味しそうに食べてるけど、薫先輩は違うアイスを手に取って食べてる。

 ホントに白黒モノクロアイスがあんま好きじゃないんだ。


「鬼灯くんはどう?美味しいよね?」


「え、えっと、ちなみにこれ何味ですか?」


「ああ、えっとね白い方がたしか塩ホワイトチョコミント味で黒い方が黒糖蜂蜜チョコ味だったと思うよ」


 塩ホワイトチョコミント?

 黒糖蜂蜜チョコ?

 何それ?そんな味が存在するの?


「あ、豆知識だけど、白い方と黒い方を両方一緒に食べると更に美味しくなるよ!」


 パクっ、うっ!!水、水!!!

 あ、すみません薫先輩。ありがとうございます。

 助かります。

 ゴクゴクゴク、ぷはぁー。

 生き返った。無理!何あの味!!!


 その後、残すのはSDGsの2番、飢餓を無くそうだっけ?まあアレだから頑張って残さずに食べた。

 琴音先輩は「これすごく美味しいのに。薫くんといい、鬼灯くんといい、味覚変!」って言われた。

 口には出さなかったけど、内心では「絶対に琴音先輩の味覚が変なだけです」とか思ったりもした。


 白黒モノクロアイスを食べ終えると薫先輩がいろいろと口直しに良い料理を持って来てくれた。

 どれもこれもめっちゃ美味しかった。

 常夏のBBQバーベキューって言う割にはカレーとかラーメン、うどん、そば、丼物などなどいろいろとあった。

 もちろんBBQバーベキューもお肉、お野菜、お魚といろいろと用意されてて、一部のお魚はここで解体していたから刺身で食べたりもできた。

 何でも近くの海で採れた新鮮なお魚だとか。


 そういえば、郁斗たちは結局のところ最終日にも戻って来なかったな。

 薫先輩と琴音先輩には何一つ連絡が無いとか。

 俺のとこにもあの日以来、連絡は一切無い。

 3人とも大丈夫なのかな?心配だな。


「鬼灯くん、ちょっといいかな?」


「え、市川先生!?あ、はい。大丈夫です」


「二階堂くん、姫島さん、オリヴィアさんの3人から休学届けが提出されたの。ただ、理由がもっと強くなりたいからなの。鬼灯くんは何か詳しいこと知らないかな?これだと受理できるかちょっと微妙なの」


 俺が何をどう答えたらいいのか悩んでいると薫先輩と琴音先輩が来て、市川先生に1日目にあったことを話してくれた。

 それを聞いた市川先生は一言、「わかりました」と告げてどこかへ去って行った。


 これは後で知ったことだけど、郁斗たちの休学を認めてもらえるように薫先輩と琴音先輩が学園長のとこまで掛け合ったとか。

 そのおかげかどうかまではわからないけど、郁斗たちの休学は無事に認められる。

 でも、そのせいでと言うべきか、俺は2学期が始まっても郁斗たちに会うことができない。

 次に会えるのは一体いつになるのか検討もつかないよ。

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