第113話 蓮の弱点

『闇の祭壇』第1層のエリアボス、ドウラグを倒して俺は第2層に向かう。

 そこで攻略階層の記録だけ行って、ホテルへと帰ることにした。

 この前挑戦したタワーダンジョン『ゴブリンパニック』全2層しかなかったので、階層の記録はできなかったけど、全10層ある『闇の祭壇』ではそれができる。

 このゲームでは、全5層以上の階層を持つタワーダンジョンでは、攻略階層の記録ができて、次に挑戦する時にもう一度第1層から挑戦するか、記録に基づいた攻略階層から挑戦するかを選択できる。

 一度、攻略階層の記録をすると次に上書きするまで、決して消えることは無いので、もう一度第1層から挑戦しても問題無い。


 ホテルに戻った俺は真っ直ぐに部屋へと向かわずに備え付けのレストランに行く。

 そこで夕食を済ませて部屋へ向かう途中に薫先輩と琴音先輩に遭遇した。

 先輩たちも既に夕食を済ませているらしく、俺の『闇の祭壇』攻略状況を知りたいとのことでラウンジへと向かう。

 そこで苦戦していて、今日ようやく第1層のエリアボス、ドウラグを倒すことができたこと、琴音先輩の情報に助けられたことを伝えた。


「うんうん。頑張ったね!あれを一回で倒すとは」


「ああ、俺は戦ったこと無いけど、そこそこ強いとは聞くからな。やっぱ闇属性が付与されてるから戦いづらいのか?」


「うーん。というより、巨大化してる時の攻撃力が異常に高い!あれにやられるモンスターが続出だよね」


「なるほどな」


 薫先輩と琴音先輩の2人だけでどんどん話が進んでいく。

 なんか蚊帳の外だな、俺。

 その後、薫先輩からこれからどうするのかを聞かれた。

 常夏の白黒モノクロフェスも残すとこ1週間となっている。

 俺は残された時間は『闇の祭壇』第2層攻略に費やすつもりでいると伝えたら琴音先輩が第2層のモンスターについて詳しく教えてくれた。

 話を終えた後は部屋に戻ってゆっくりくつろぐ。


 毎回のようにARフィールドを展開した瞬間に現われるブルー。

 いつものようにプルプルしながら甘えてくる様は可愛いんだよな。

 よしよし、なでなで。


 プルプルプルプル


 ?そういえば、最近ARフィールドを展開してもリーフィアの姿が見えないな。

 いつもならブルーと戯れる為に足速に俺のとこまで来るのにな。

 鬼狼オーガウルフはいつも通り、毛繕いしてる。

 何かあったのかなと思ってたら剣と盾のリヴィングウェポンを持ったリーフィアも現れる。

 床に座るとリーフィアはリヴィングウェポンの手入れを始めた。

 ブルーと鬼狼オーガウルフからは何事も無く、まるでいつも通りのような感じがするな。

 俺が知らないだけでリーフィアはいつもこんな感じなのかな。


 そういえば、あんまり気にしてなかったけど、ブルーより剣と盾のリヴィングウェポンを装備したリーフィアの方がステータス高いんだよな。

 これはちょっと予想外だけど、正直ありがたいな。

 リーフィアのステータスが高い分、前衛は安定して任せられる。

 ブルーは後衛として相手モンスターと距離を取って戦うことを前提とするなら今のステータスでも問題は無いか。


 そうなると鬼狼オーガウルフをどうにか強化したいな。

 Lvを上げるはそんなすぐにできることじゃないよな。

 そもそも安定した前衛と後衛が揃っている状況だよな。

 だとすると鬼狼オーガウルフには何が必要だ?

 うーん、バランスは良いよな。

 特にこれといってなー。


 ピコン!


 ん?今のスマホの通知音だよな。

 メッセージ?誰だろう?

 …シグマさん!?え、何でシグマさん?


 シグマ「蓮くん、『闇の祭壇』攻略はどうだ?生保内薫と柊琴音とギルド鬼姫が同じチーム。プロフェッサーとしても注目している。もうボスのジャック・オ・ランタンを倒したか?」


 ああ、なるほど。

 というより、シグマさん郁斗たちがチームから離脱したこと知らないのかな?

 プロフェッサーの情報網には引っかかってもおかしくないと思うけどな。

 てか、『闇の祭壇』のボスってジャック・オ・ランタンなんだ。


 蓮「郁斗、莉菜、オリヴィアの3人は2日目にチームを離脱しました。俺は薫先輩と琴音とも話し合って、今は1人で『闇の祭壇』に挑戦しています。ちょうど今日、第1層のエリアボスのドウラグを倒したところです」


 シグマ「マジか!!?それギルドは大丈夫なのか?」


 蓮「ギルドは大丈夫だと思います。3人とも更に強くなる為にチームを離脱しただけなので」


 シグマ「そうか、大変だな。ちなみに蓮くんはどうするんだ?」


 俺がどうするのか?

 正直、これといったものが何も無い。

 あるとすれば、とにかくDランクダンジョンでリーフィアと鬼狼オーガウルフのLv上げをするくらいかな。


 シグマ「何も返ってこない辺り、特にこれといったものは無さそうだな。なら発想を逆転させてみるといい」


 発想の逆転?

 強くなる方法を模索している現状、その逆となると弱くなる方法?

 ????意味が…。


 蓮「どういうことですか?」


 シグマ「強くなるというのは強みを伸ばすこと。その方法を見い出せないならその逆、弱点の克服をしたらどうだ?」


 弱点の克服。

 弱点、俺の弱点。

 俺の弱点って改めて考えると何だろう?

 いや、そもそも強みって何だ?


 蓮「シグマさんは俺の弱点、何だと思いますか?」


 シグマ「だいぶ迷走してるな。個人的には教えてあげたいけど、それじゃあ蓮くんの為にならない。これは蓮くん自身が考えて結論を出さないとな」


 やっぱりそんなに甘くないか。

 自分の弱点は自分で見つけろってことだよな。


 シグマ「ヒントだ。二階堂郁斗、姫島莉菜、オリヴィア・ブラウンにはあって、蓮くんには無いもの。それが蓮くんの致命的な弱点だ」


 郁斗たちにはあるけど、俺には無い。

 何だろう?

 俺個人じゃなくてブルーやリーフィア、鬼狼オーガウルフを含めての話だよな。

 となると郁斗の場合、コンとネメア、莉菜はエルナとマリン、オリヴィアはカーラとアルマか。

 ???ますます訳わからない。

 シグマさんは一体何を言いたいんだ?



 *****



 蓮くん、君には致命的な弱点がある。

 それを克服しないことには上には上がれない。

 君には上まで来て欲しい。

 スライムにブルーという名を与え、魔法適正を与え、ここまで強くした。

 しかし、ブルーは今のままだとこれ以上強くなるのは厳しい。

 君ならきっと克服できる。

 Aトーナメントで君とバトルできる日が来るのを楽しみに待っているよ。

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