第110話 もう!まったくもう!!

 莉菜、オリヴィア、郁斗と送られてきたメッセージの内容はほとんど同じ。

 俺や薫先輩、琴音先輩への謝罪、もっと強くなりたいけど、このままチームに残ったら強い先輩たちに頼り切りになる気がする。だからチームを離れる。

 莉菜は再び日本全国のダンジョンを巡る。

 オリヴィアは母国アメリカに帰り、特訓。

 郁斗だけは特にこれと言ってどこで何をするかはメッセージでは何も言ってない。


 きっと3人ともすごく悩んだろうな。

 チームを離脱した後にこうしてメッセージを送ってきたのがその証拠だと思う。

 どんな理由だろうとチームを離脱するって聞いたら絶対に止められる。

 俺が逆の立場でもそうする。

 3人ともチームを離脱するとは言ってるけど、ギルドを抜けるともチームに戻らないとも言ってない。

 きっと3人とも強くなって戻ってくる。

 俺は3人を信じる。


 プルプルプルプルプルプル


「よしよし、なでなで。心配かけてごめん、ブルー、それにリーフィアも」


「いえ、主が僅かながらでも元気を取り戻して良かったです」


 プルプルプルプル


 薫先輩と琴音先輩にも心配かけちゃったな。

 3人から俺にメッセージが送られてきたってことは薫先輩と琴音先輩にもきっと送ってるよな。(誰も送ってません)


 チームの今後のことは薫先輩と琴音先輩に任せよう。

 俺は俺でもっと強くなる方法を模索しないと。

 強くなって戻ってきた3人に笑われないように。


 どうしたら強くなれるか、か。

 ブルーは既にDランクのLv上限の45に到達してるからこれ以上Lvを上げるはできないよな。

 敢えてブルーじゃなくてリーフィアで挑戦するとか。

 でも、ブルーの相性が悪い訳じゃないしな。

 寧ろデバフや状態異常無効の影響でリーフィアの方が相性悪かったりしないか?

 んー、どうしような。


「主、ブルーから先日のダンジョンでのことは聞きました。お悩みでしたら主1人でダンジョンに挑戦してみてはいかがですか?」


「え、俺1人で?」


「Bランクの先輩方と一緒にダンジョンに挑戦するとランクが一気にCまで上がります。まだDランクのモンスターとの戦闘経験もそこまでありません。今はDランクの強さに慣れるところから始めるべきかと」


 プルプルプルプルプルプルプルプルプル


「ブルー、今は主と大事な話をしているので、少し大人しくしてください」


 プル、


 あ、ブルーが一瞬にして大人しくなった。

 今日は随分と素直だな、ブルー。

 いつもはリーフィアに言われてもプルプルしてるけどな。

 まあそこまで気にする必要は無いか。

 でも、リーフィアの言う通り、Dランクのモンスターとの戦闘経験は皆無。

 そんな中、いきなりCランクのモンスターとバトルして、薫先輩と琴音先輩に頼り切り。

 6人でダンジョンに挑戦してもこの状況、これは変えないとダメだよな。


「今の私たちには足りないものがあまりにも多いですが、強くなるのに近道はありません。一つずつ誤魔化すことなく、地道に努力して積み重ねていくしか」


「ありがとう、リーフィア。そしたら今は少しでも時間が惜しいな。ブルー、リーフィア、あとくつろいでる所悪いけど鬼狼オーガウルフも、今から『闇の祭壇』へ行こう!」


 こうして2日目途中から蓮は1人で『闇の祭壇』に挑戦する。

 3日目も最大限、時間を有効活用するべく、朝早くからダンジョンに挑戦している為、薫と琴音の2人からの連絡に一切気づいていない。

 2人からの大量のメッセージに気づいたのは3日目の夜、ダンジョンからホテルの部屋に戻ってゆっくりしようとスマホを取り出したタイミングだ。


 あ、ヤバイかも。薫先輩と琴音先輩に何も言わずに朝からダンジョンに行ってた。

 このメッセージ量的にかなり怒ってるかも。

 これ以上、時間が経つと余計に事態が悪化する可能性が高いし、さっさと返信しよっと。


 薫先輩と琴音先輩にそれぞれメッセージを送ると2人からすぐに返事が返ってくる。

 今、ホテルの自分の部屋にいるとメッセージで伝えるとすぐに行くとだけ返ってきて、数分後には部屋のインターホンが鳴った。

 部屋のドアを開けるとそこにはものすごく汗だくになっている薫と琴音がいた。

 2人とも今日1日、リゾート内の至る所を走り回って蓮の捜索を行っていたのだ。

 1日中、常夏のリゾートでそんなことをすれば、シャレにならないくらい汗だくになるのは当然。

 その姿を見た俺はすぐに冷蔵庫から冷たい水と綺麗なタオルを2人に渡して、琴音先輩はバスルームに案内した。


「もう!まったくもう!スマホの通知くらいちゃんと見なさい!!すっごく心配したんだからね!」


「まあ何事もなくて良かったよ。あ、水とタオル、サンキューな。マジで助かった。生き返るわ」


「すみません。俺のせいでご迷惑お掛けして」


「そんなに気にするな。鬼灯、後輩ってのは先輩に迷惑掛けて当然だ。俺だって琴音先輩にちょくちょく迷惑掛けてるしな。でもな、これで一つ学んだだろ?何がダメだったか、もし次があったらどうするか。もっと言えば、こうならない為にはどうするか。それをしっかりと考えろ。そしてその答えは行動で示せ」


「うんうん。薫くんの言う通りだよ。で、鬼灯くんは今日1日どこで何してたの?めっちゃいろんなとこ探したのに見つからないしさ。どこいたのさ?」


「えっと、『闇の祭壇』に1人で挑戦してました」


「ああ、なるほどな。ダンジョンにいる可能性までは考えてなかったわ。そりゃあ見つからない訳だな」


「あとでいろいろと協力してくれたみんなにお礼言わないとね」


 ん?みんな?いろいろと協力?もしかして俺の知らないところで大問題になってたりする?

 今でも申し訳ないと思ってるけど、なんか更に申し訳ない気持ちが溢れてくる。

 もうそこまでいろいろと手を回して下さった薫先輩と琴音先輩には頭が上がりません。


「あ、そうそう。あれから他の3人から何かメッセージとか届いてたりする?」


 え、メッセージ?他の3人から?

 …もしかしてあの3人、俺にしかメッセージ送ってない?

 いや、薫先輩と琴音先輩のこの感じからしてたぶん何も来てない。

 俺も人のこと言えないけど、さすがにそれは無いでしょ。

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