第106話 最強種の強さ、その片鱗
打ち合わせが終わって、これから『闇の祭壇』へ挑戦するチーム1。
『闇の祭壇』の中はかなり薄暗く、アンデッドモンスターの巣窟というイメージが一番しっくりくる様な場所となっている。
いつモンスターと遭遇しても大丈夫のように6人全員がモンスターを召喚する。
「今日もお願いね、シルヴィーユ!」
「頼んだぞ、ドランバード!」
「出でよ、コン!」
「君臨せよ、カーラ」
「降臨せよ、エルナ!」
「出でよ、ブルー!」
長い翡翠色の髪を束ねることなく、凛とした感じで弓を装備している女性がシルヴィーユ。
人類種のエルフだからやや耳が長く尖っている。
そしてシルヴィーユに負けず劣らず、すごい迫力を感じさせるのが、ドランバード。
2本の角、肩にかかるかどうかくらいの長さの水色の髪。
遠目だと2本の角が生えた人間の様に見えるが、近くで見ると所々に竜鱗が見られる。
ファンタジーとか登場する竜人とかに限りなく近い種族、そういう見た目をしている。
エルナとカーラ、コンは何か威圧的なものを感じ取ったのか召喚された場所から一歩も動けずにいるが、怖いもの知らずが1体いた。
プルンプルンと飛び跳ねながら軽快にシルヴィーユとドランバードに近づいていく。
シルヴィーユとドランバードの前まで行くとプルンプルプル、プルンプルプルと飛び跳ねてはプルプルしてコミュニケーション?を取っている。
この光景を目の当たりにしてブルーが下手なことして怒らせないといいなと天に願う者がいたが、それは杞憂に終わる。
プルンプルン飛び跳ねているブルーをシルヴィーユが空中でガシッと両手で挟むようにキャッチ。
そうして放たれた第一声が、
「あら、可愛い!!ねえ、ドランバードもそう思わない?」
「俺はノーコメントだ」
「ケチ!減るもんじゃないのに」
「そういう問題じゃない」
何だかどこかで既視感があるような会話だったが、エルナやカーラ、コンもシルヴィーユとドランバードに近づき、ぎこちないが会話を始める。
あ、何か上手くやれてるみたい。
はあー、良かった!ホントに。ブルーが何かやらかさないか心配して損した気分。
シルヴィーユの両手でガシッと挟まれてるけど、ブルーの雰囲気的に大丈夫そうだな。
それにしてもブルー何を話したんだろうな?
※ブルーにとっては必須の挨拶です。え?それが何かって。それは乙女の秘密です。
そうこうしていると『闇の祭壇』第1層に出現するモンスター、グールと遭遇する。
その数は2体。
「お、来たよ~。2体か、頑張ろうね、みんな」
「じゃあ、1体はとりあえず引き受けるよ。ドランバード、
背中の翼をバサッと広げ、ものすごい速さでグールに突っ込む。
そして、右手の爪で引っ掻くようにグールを殴り飛ばす。
ドランバードはそのまま殴り飛ばしたグールと1対1で戦うべく、距離を詰める。
「はーい。ここは薫くんに甘えて私たちはもう1体を5体がかりで倒すよ!」
「「「「はい!」」」」
「フレンドリーファイア無いから構わず範囲攻撃とかバンバン撃っていいからね」
いや、普通のモンスターはそんなバンバン撃てるほど範囲攻撃スキルとか持ってません!
恐らく、蓮だけでなく、莉菜や郁斗、オリヴィアも似たようなツッコミを心の中でしたことだろう。
「とりあえず、コン、稲荷狐の祈り、影分身、陽炎、蜃気楼」
「カーラ、闇刺突、霞連槍!」
「エルナ、ロックオン、スターバースト!」
「ブルー、鳴神、電光迅雷」
「よし、私たちもいくよシルヴィーユ!サウザンドアロー」
本来なら前衛はドランバードとカーラだが、ドランバードがグールを分断する為に単独で1体と戦っており、前衛がカーラだけでは心許ない状況となっている。
その為、コンが妖術を用いてグールを惑わせて、ブルーが中衛の位置から前衛まで上がる。
それにグールはアンデッドモンスター、つまり光属性が弱点。
その弱点を見事にエルナがつく。
最大戦力のシルヴィーユは先ほど少し離れた場所でグールと1対1で戦っているドランバードをも巻き込む広範囲攻撃を放つ。
空中に向けて放たれた1本の矢が無数に分裂して2体のグールを襲う。
しかし、これだけの猛攻撃を受けたにも関わらず、2体のグールには大したダメージが入っていない。
特にドランバードとシルヴィーユ以外のモンスターの攻撃でほとんどダメージを受けていないと言っても過言では無い。
嘘でしょ。いくら何でもダメージ少なすぎない?
まともにダメージを与えられてるのも先輩たちだけで、俺たちの攻撃ではほぼノーダメージ。
Cランク相当の難易度、出現するモンスターも強いとわかってはいたけど、これは想像以上だ。
想像よりもダメージが入らなかったショックによる一瞬の硬直。
この一瞬でグールは反撃に移る。
それに当たり前のように対応するプレイヤーが2人。
「ドランバード、
「シルヴィーユ、ストームアロー、イグニスアロー」
反撃に移ろうとしたグールだったが、攻撃を仕掛ける前にそれぞれドランバードとシルヴィーユに攻撃されて、反撃は失敗に終わる。
鋭い爪による斬撃をものすごい速さで飛ばし、離れた相手にも攻撃をすることができる竜爪牙とまるで拳だけワープしたかのように触れること無く、少し離れた場所にいたグールを殴り飛ばした竜掌拳。
そしてブルーとカーラに狙いを絞り、闇属性を纏わせた左腕を大きく振り下ろそうをしたグールはその大きすぎる攻撃モーションによって生まれた防御の穴に的確に2本の矢を受ける。
この攻撃により、2体のグールのHPは残り5割を下回る。
今、先輩たちが対処してくれていなかったらヤバかったかも。
俺もブルーも全く反応できなかった。
というより、攻撃されるって気づくことすらできなかった。
「カーラ、ダークウェーブ、ダークボール」
「コン、狐火、鬼火」
「エルナ、プチシャイン、スターフレイムショット!」
しっかりしろ、俺!まずは目の前のモンスターを倒さないと。
その為にもみんなみたいに攻撃しないと!!
「ブルー、スカーレットアロー、プロミネンス」
「シルヴィーユ、シューティングスター、コスモフォールン!」
「ドランバード、
カーラ、コン、エルナ、ブルーの放った魔法はグールが両腕に闇属性を纏わせて、大して鋭くも無い爪で切り裂くが、魔法じゃないシルヴィーユのシューティングスターは切り裂くことができず、被弾する。
そして、コスモフォールンは宇宙世界を地に落とす、つまり無重力空間を地上に作り出すスキル。
これによって2体のグールは自らの意思に反して空中に浮き始めて、その身動きを封じられる。
シルヴィーユは2体のグールを1カ所にまとめて、空中に浮かし続ける。
そこをすかさず、ドランバードが二つのスキルを叩き込み、仕留める。
水竜爪・滅と水竜爪・破はコンボスキルとなっており、水竜爪・滅の直後に水竜爪・破で攻撃するとスキルの威力が大幅に増強される。
ドランバードの攻撃力の高さと水竜爪・滅、大幅に増強された水竜爪・破の威力が合わさって2体のグールのHPは一気に0になる。
グールの強さはあくまでCランク相当。
薫はまだBランクに昇格したばかりとはいえ、ドランバードの強さは十分にBランクに値する。
そもそも竜は最強種と呼ばれるくらいに元々のステータスは高く、スキルも凶悪なものを普通に取得する。
一つとはいえ、ランクが下のモンスターを相手にしているからこの結果は必然とも言える。
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