第105話 共有

 船は数時間かけてようやく白黒モノクロリゾートへと到着する。

 船の発着場の近くには宿泊施設が並んでおり、これから各自、事前に割り振られているホテルの自分の部屋へ行く。


 この後、部屋に荷物置いてみんなと合流しないと。

 白黒モノクロリゾートに着いてからは慌ただしいとは聞いてたけど、もうちょっとゆっくりできないかな。


 部屋に荷物を置いたら各チーム毎に広場へと集まる。

 そこで学園長から常夏の白黒モノクロフェスの開会宣言が行われる。


「ええ、おっほん。我が学園が誇る白黒モノクロリゾートはこの時期かなり熱いです。熱中症には十分注意してゲームに励んで!各チームには上級生が2人います。1年生は困ったときは上級生を頼って下さい。…私からは以上!」


 あ、思ってたよりも話短かったな。

 これからどうするんだろう。

 ここまでのスケジュールは事前に決められてたけど、ここからはどうするんだろう?


「はーい。じゃあチーム1は白黒モノクロホテルの1号棟にあるラウンジに移動するよ」


「「「「はーい」」」」


 チーム1の1年生4人は琴音と薫の後に続いて白黒モノクロホテルの1号棟にあるラウンジに移動する。

 ラウンジは白と黒で統一されており、かなりおしゃれに見える。

 初めてここに来た1年生4人は驚きを隠せない。


「座って座って。ミーティング始めるよ~」


「まあ、そんな難しい話をする訳じゃないし、固くならなくていいぞ。お互いのモンスターは何ができて何ができないのかを共有するだけだ」


「あ、なるほど」


「そういやあ、先輩達とちゃんとした共有はしてないな」


「それじゃあ、私から共有するね。私は今回、シルヴィーユで挑戦します!知ってるかもしれないけど、シルヴィーユは弓を使う人類種のエルフ。もちろん、魔法も使えるけど、近接戦は全然って感じ。サポート面もあんまり期待しないでね。じゃあ次は薫くん」


 シルヴィーユって柊先輩のエースモンスターじゃ!?

 人類種のエルフでほとんどの相手は遠距離から一方的に攻撃されて、近づくことすら叶わず負けるって聞いたことある。

 近づくことすら叶わず負けるって今柊先輩の話を聞いた限り、シルヴィーユの弓と魔法による物量で近づかれる前に倒すとか力技でどうにかしてるのかな。

 何だろう、ちょっとイメージと違うな。


「俺はドランバードで挑戦する。ドランバードは幻想種の竜。基本は琴音先輩のシルヴィーユとは真逆で近接戦メインだ。一応、魔法も使えるけど、あまり使わないな」


 薫先輩のエースモンスター、ドランバード。

 最強種の竜ってまだ直接見たこと無い。

 どんな感じ何だろう。

 去年見たCトーナメントでは、ドランバードは他の竜とは違って人型だった気がする。

 12神序列2位のジャスパーさんのエースモンスター、ドレイクと同じ人型だったからよく覚えてる。


「次は1年生ね。誰からでもいいよ」


「じゃあ、俺から。モンスターはコンでいきます。妖怪種の狐で幻惑系の妖術が使えます。あと攻撃スキルは物理、魔法と両方ありますけど、あんまり数は無いです」


「次は私が。モンスターはカーラ、幻想種の悪魔です。メインは物理ですが、魔法も使えます」

(オリヴィアは物理メインで育成しているつもりです)


「えっと次は私かな。モンスターはエルナで幻想種の天使。武器は双銃で完全に遠距離特化です。回復魔法によるサポートもできます。あと、状態異常の解除も」


「最後は俺か。えっと、モンスターはブルーでいこうと思います。一般種のスライムです。遠距離メインで物理もいけます。エルナと同じで回復魔法によるサポートもできます」


 これでチーム1のメンバーは全員、モンスターの情報の共有が終わる。

 あとは簡単な確認という名の打ち合わせをしてダンジョンに挑むだけだ。


「うん、オッケー!それなら前衛はドランバードとカーラ、中衛はコンとブルー、後衛はシルヴィーユとエルナで決まりね。ただ、フォーメーションに捉われ過ぎないように注意してね。そこは臨機応変に!」


「即席のチームだし、やれることには限りがあるからな。変にガチガチに作戦を固めても逆効果って意味で自由奔放に戦っていいって意味じゃないからな」


「そして私たちチーム1が挑戦するのはランク変動型ダンジョンの『闇の祭壇』。私と薫くんがBランクだからダンジョンの難易度は一つ下のCランク相当と思います。『闇の祭壇』は全10層構造のタワーダンジョン。出現するモンスターは全て闇属性でデバフや状態異常を当たり前のようにしてきます。そしてそして何とこちらからは相手モンスターにデバフや状態異常が付与できません!!なので、カーラのナイトメアは完全に封じられたも同然の状態です」


 柊先輩のテンションが徐々に高くなってる気がする。

 すごい張り切ってるな。

 柊先輩を見てると頑張らないと!って思えてくるな。


「それに加えて、各エリアボスは相当な強さだ。同ランク帯のダンジョンの中でもかなり強い方に分類されるだろうな」


 船でチーム9の辻峰くんが教えてくれた通りだ。

 薫先輩と柊先輩がいるとはいえ、正直、勝てるのかかなり不安だ。

 いくら薫先輩と柊先輩が強くても俺たちが先輩たちの足を引っ張るかもしれない。

 不安にさいなまれているとある人の言葉を思い出す。

「大丈夫!蓮くんと同じチームの上級生2人を頼りなさい。あの2人がいて攻略できないはありえないから」

 輝夜さんはあの時、確かに攻略はできると言った。

 直接、お2人の名前は口にしなかったけど、きっと薫先輩と柊先輩のことに違いない。

 大丈夫!俺たちには最強のプレイヤーのお墨付きがあるんだから。


 俺たちはその後も軽く打ち合わせを続けて、ダンジョンに向かう前にこのままラウンジでお昼ご飯を済ませる。

 こうして全ての準備が整ったタイミングで俺たち6人は『闇の祭壇』へと向かう。

 そこでとても大きな試練が俺たち4人に待ち受けているとも知らずに。

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