第104話 いざ、白黒リゾートへ!

 遂にこの日がやって来た。

 常夏の白黒モノクロフェスの舞台となる白黒モノクロリゾートへ向かう船。

 そこで各自、好きなことをして時間を潰している。


「鬼灯くん、久しぶりだな。新入生代表トーナメントの予選以来か」


「あ、久しぶり!うん、そうだね。新入生代表トーナメント以来かな、クラス違うし」


「まさか覚えてもらえてるとはな」


「そりゃあ覚えてるよ。かなり強かったから」


「本戦ベスト4まで勝ち残り、タッグEトーナメントでもベスト4入りを果たした鬼灯くんにそこまで言ってもらえるのはお世辞でも嬉しいよ」


「お世辞じゃないんだけどな」


 この人、名前は知らないけど、めっちゃ強かったのは覚えてる。

 ブルーがプチヒールを使えなかったらきっと勝てなかった。

 それだけ予選の3試合目でバトルしたジャイコスは強かった。

 今はあの時よりも更に強くなってるだろうし、またバトルしてみたいな。


「ああ、そうだった。まだちゃんと自己紹介してなかったな。俺は辻峰つじみねまこと。よろしく」


「あ、えっともう知ってくれてるみたいだけど、一応俺も。鬼灯蓮です。よろしく」


「そういえば、鬼灯くんはやっぱチーム1?」


「うん。辻峰くんは?」


「俺はチーム9だよ。新入生代表トーナメントは予選敗退でまだEランクだからな」


 チーム9か。他に誰がいるのかな?

 2年、3年の先輩たちが誰かも気になるな。

 どんな人たち何だろう?


「チーム9って他にはどんな人がいるの?」


「んーと、1年は俺と同じように予選落ちした連中しかいないな。2年は野田のだ龍介りゅうすけ先輩で3年はあおい紋葉あやは先輩だよ」


「え、普通に2人ともすごい先輩じゃん!!チーム9にもそんなにすごい先輩たちが加わってくれるんだ」


「まあな。チーム1はやっぱ生保内先輩と柊先輩か?」


「うん。未だに信じられないよ。あのお2人と一緒にダンジョンに挑戦できるなんて」


「そりゃあそうなるよな。それでチーム1はどこのダンジョンに挑戦するんだ?」


「『闇の祭壇』に挑戦するよ」


「え、マジかよ!満点狙いか?」


「満点狙い?どういうこと?」


「まさか担任の先生から何も聞いてないのか?常夏の白黒モノクロフェスは攻略したダンジョンによって点数が与えられるんだ。『闇の祭壇』なら100点満点だよ」


 え、市川先生からは何も聞いてない。

 あ、でも、俺が『闇の祭壇』に挑戦したいって話をした時に生保内先輩が上を目指す気概が伝わってきた云々って言ってたけど、100点満点を狙う心意気が伝わってきたとかそういう意味?


「知らずに挑戦するのか。それでも『闇の祭壇』を選ぶのはすごいな。俺らチーム9は『火炎の精霊園』に挑戦する」


「『火炎の精霊園』か。『闇の祭壇』と同じランク変動型だよね?そんなに難易度が違うの?」


「もしかして『闇の祭壇』がどういったダンジョンか知らないのか?名前の通り、闇属性を使うモンスターが出現する。デバフや状態異常に苦しめられるダンジョンだよ。それに各エリアボスも強いらしい」


「なるほど。エルナがキュアヒールを使えるけど、それじゃあ間に合わないよな。確かに苦戦しそう」


「あ、あと、これは野田先輩に聞いたことだけど、『闇の祭壇』のモンスターにはデバフや状態異常が付与できないらしい。だから悪魔とかは相性が良くないらしいぞ」


「え、デバフや状態異常無効!?」


「まあ難易度が高い分、点数も高い。最終日終了時点で点数で1位を取れば、何かしらのゲームアイテムがもらえるらしいし、お互いに頑張ろうな」


 辻峰と別れて1人になった蓮は色々と考えている。


 うーん、最終的に点数が1位だとアイテムがもらえるか。

 一応、白黒モノクロ学園主催で白黒モノクロ学生限定のLet's Monster Battleイベントだけど、そこはちゃんと用意されてるんだな。

 あ、パンフレットに今さっき辻峰くんが教えてくれたことが色々と書いてある。

 ちゃんとパンフレットに目を通しておくべきだったか。

 持ち物とか必要最低限のことにしか目を通して無いんだよな。


「なあに1人で黄昏てるんだ、鬼灯」


「え、生保内先輩!?」


「うーん、やっぱしっくりこないな。鬼灯、俺のことは薫先輩と呼ぶように。あとの3人にもそう伝えといてくれ。なんか苗字で呼ばれるのしっくりこないんだよな」


「あ、はい。わかりました」


「で、1人どうした?何かあったか?俺じゃなくても琴音先輩とか誰でも相談に乗るぞ」


 俺はおぼ、薫先輩に何があったのか話した。

 薫先輩がここを通りかかったタイミングが良すぎただけで、落ち込んだりしてた訳じゃないことも伝える。


「ああ、なるほどな。その気持ちはめっちゃわかるぞ。俺も去年全く同じ状況に陥ったからな。まあパンフレットって結構分厚いだろ?大抵の1年はみんな目を通してないさ。目を通してる1年の方が珍しいんじゃないか?」


「薫先輩も…」


「1年にとっては初めてのイベントだ。いろいろと戸惑うこともあるだろう。些細なことでも困った時は先輩を頼れ。イベントの経験だけはあるからさ」


 これが先輩か。

 なんかめっちゃ頼りになる。

 でも、頼るのと依存するのは違う。

 先輩たちを頼るのは本当に困った時だけにしよう。


「ありがとうございます!何かあったらその時は頼らせていただきます」


 真剣な表情が一転して穏やかで明るい表情になる。


 こうして直接会って話をしてみると薫先輩ってイメージと全然違うな。

 もっと自分にも他人にも厳しい人だと思ってた。

 正直、すごい人が同じチームにいると思う反面、ちょっと怖いなとか思ってたから今、こうしてコミュニケーション取れたのは大きいな。


 その後、薫先輩と船の甲板に出て、海を見ながら軽く雑談をする。


「鬼灯、おまえは何でスライムに名前を与えたんだ?世界的に見てもかなり珍しいだろ?だからちょっと気になるんだよな」


「えっと、チュートリアルを終えて初めて召喚したモンスターがブルーだったんです。最初は青くて丸っこい何かがプヨプヨしててどのモンスターかわかりませんでした。でも、直ぐにスライムだって分かって少しこれからの事を考えました。それで決めたんです。プロを目指してる訳じゃないし、このスライムを俺だけのオリジナルモンスターに育てよう!って」


「プロを目指してないか。ゲームを始めたばっかの時は誰もが自分がプロになった姿とか夢に見るもんだと思うけど、鬼灯は違ったのか。でも、今はどうなんだ?鬼姫というギルドのギルドマスターになった。これには何か心境に変化でもあったのか?」


「ギルドマスターはみんなでバトルしてそれで勝った人がなるって決めてただけで、自分からやりたいって立候補した訳じゃないので、変化と言われても」


「そうか。鬼灯、おまえは人との出会いにかなり恵まれてるな。人との縁は大事にしろよ」


 話したいことは一通り話し終えたのか、薫は「じゃあ、また後でな」と言ってその場から立ち去る。


 人との縁を大事にしろか。

 確かに俺は人との出会いに恵まれてるな。

 薫先輩や柊先輩、シグマさんに輝夜さん、それに郁斗、莉菜、オリヴィアといったギルド鬼姫のみんな。

 ゲームを始めた当初はこんな事になるなんて思いもしなかったな。

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