第97話 蓮VS郁斗②

「ブルー、プチサンダー、プロミネンス」


「躱せ、コン!」


 未だにコン本体が発動した陽炎と蜃気楼のコンボは途切れていない。

 攻撃後、すぐに幻覚に紛れることでブルーに居場所を悟られないようにする。

 それもあってブルーの攻撃は今度もコンには当たらない。

 そのまま両モンスター、何一つ動きを見せず、遂に陽炎と蜃気楼のコンボが途切れる。

 これでブルーの視界はクリアになる。


「よしチャンスだ!ブルー、プチサンダー、鳴神」


「コン、躱して二尾の焔」


 大ジャンプでプチサンダーと鳴神を躱しつつ、空中で何回か回転し、勢いよくブルーに二本の尻尾を叩きつけるが、二本の尻尾を叩きつけられる直前にブルーはコンに向けてスカーレットアローとプロミネンスを放っており、二尾の焔では相殺しきれず、空中に弾き返される。

 空中で思うように身動きが取れないコンに向けてファイアボールが襲う。


「ブルー、電光迅雷!」


「コン、紅蓮の誓い!」


 ファイアボールに被弾して地に落ちてくるコン目掛けて突撃するブルーに対して、コンは何とか空中で体勢を立て直し、紅蓮の誓いで迎え撃とうとする。

 しかし、それに気づいたブルーがプルンと大ジャンプ。

 2体のモンスターは空中で激突する。

 重力に身を任せた自由落下中のコンはこれに対応できない。


「コン、狐火、鬼火!」


 ブルーの攻撃で吹き飛ばされながらも反撃をするが、この攻撃はディバインシールドに防がれる。

 ブルは意外にも攻防ともにかなりのハイレベルモンスターに成長を遂げている。

 少し前までの攻撃も防御も中途半端なブルーはもういない。

 そこから攻撃スキルを再び使い果たし、クールタイムに入ったコンはブルーの猛攻に防戦一方となる。

 それでも勝ち筋をたぐり寄せるべく驚異的な粘りを見せている。


「さすがにそろそろ決めたい。ブルー、スカーレットアロー!」


「コン!」


 つい先ほどクールタイムから明けただが、出し惜しむことなく、コンは既に稲荷の境界線を発動している。

 スカーレットアローがコンに当たる直前にブルーとコンの場所がチェンジし、自身で放った攻撃にブルーは被弾するもすぐにプチヒールでHPはマックスまで回復する。

 どうやらいつの間にかブルーは稲荷の境界線を越えていたようだ。

 これは気づかれないように発できるコンはさすがと言うべきか。


 稲荷の境界線か。これには最大限警戒しているのに。

 極力、近接戦は避けて遠距離から魔法を放つようにしていたけど、あんまり意味なさそうだな。

 早くしないと影分身とかのクールタイムが明けてしまう。

 そうなると戦局は一気に不利になる。

 その前に決めきらないと!



 ブルー、主は勝負を焦っています。

 今はまだ焦る時ではありません。

 それがわからないあなたではないでしょう?

 主に褒められたいならここでコンを倒して大活躍するしかありませんね。



 ここで郁斗の顔に不敵な笑みが浮かぶ。

 何か良いことでもあったのか。

 まるで勝ちを確信しているかのような雰囲気すら醸し出している。


「蓮、悪いけどブルーはもうコンには勝てないよ。コン、影分身、陽炎、蜃気楼!!!!」


「ヤバッ、しまった!!!間に合うか、ブルー、フレイ…え?」


「は?な!?ど、どういうことだ?今、何が起きた?」


 プルプルプルプル、プルプルプル


『コン DOWN』


 時間にして僅か数秒、その数秒でいろいろな事が起こり、ブルーVSコンはブルーの勝利に終わる。


 コンは確かに影分身を出すことに成功するが、その後、陽炎と蜃気楼のコンボを発動することは叶わなかった。

 影分身の出現と同時にブルーがフレイムフォースを放っていた。

 これにより、フィールド全体がブルーに放った炎に飲み込まれる。

 もちろん、影分身やコン本体も例外じゃ無い。

 ここまでのバトルでコンのHPは残り2割まで減っている。

 稲荷狐の祈りと祟りを二つとも発動していることでコンにはHP自動回復効果の付与で10秒毎にHPはほんの少しだけ回復するけど、この一瞬の攻防では意味をなさない。

 フレイムフォースに被弾し、影分身は消滅。

 影分身が陽炎と蜃気楼のコンボを発動する前に消滅したことで、がクールタイムに入っているコンは為す術なく、ブルーの追撃でHPが0になり、倒れる。


「来い、ネメア!ゴーストタウン」


 登場と同時にゴーストタウンを展開するか。

 こっちには防ぐ術は無いからどうしようもないけど。

 この状態でもブルーに付与されたデバフは何も変化が無い。

 ゴーストタウンが展開される前に付与されたデバフには効果を及ぼさない訳か。

 こっちはリーフィアを選出していないからゴーストタウンはあまり気にしなくていいかな。



「すご!ブルーやる~!」


「ですが、これから郁斗とバトルする機会があったらあれは使えますね。コンの影分身、陽炎と蜃気楼のコンボ封じになります」


「全ての影分身をタイミング良く一掃できたらの話だけどね」


「それにしても何故郁斗はコンを進化させていないのでしょうか?」


「んー、そこは進化しても稲荷の境界線以外で新しくスキルを取得しなかったとかじゃない?いや、それはちょっと変かな。エルナは権天使に進化してもスキルを取得しなかったけど、これは天使系モンスターは大器晩成型の種族で後から強力なスキルを取得するからだし。コンにはたぶん適用されないよね」


「一応、大器晩成型の種族という可能性もあります。稲荷の境界線もスキルの書で取得したという可能性はあります。それでもスキルの数が少なすぎると思います」


「コンがカーラに勝ったのもネメアのゴーストタウンによるデバフ、状態異常の反転が大きかったしね。ステータス面がエルナ、それにカーラと比べると低いのはあるわね。ブルーとは割と良い勝負かな、ステータスは」


 観客席でバトルを見ている2人は気付いているようだ。

 コンが二尾の稲荷狐から進化していないことに。

 DランクのLv上限は45だが、ほとんどのモンスターはLv40で一度進化させる。

 でないと、Dランクダンジョンでまともに戦えないからだ。

 一体、郁斗にどういう意図があってエースモンスターであるコンを進化させていないのか。

 考えれば考えるほど謎は深まるばかり。

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