第95話 莉菜VSオリヴィア③
莉菜、オリヴィアのエースモンスター対決が始まろうとしている。
新入生代表トーナメントでは大方の予想を覆して莉菜が勝利を収めた。
今回、カーラはマリンを倒すのに悪魔の祝福とナイトメアを使っている。
悪魔の祝福は召喚されてすぐにしか使えないスキルなので、エルナとのバトルで使うことはできない。
ナイトメアもクールタイムに入っているので、しばらく使えない。
それに加えて莉菜はカーラとブルーのバトルからナイトメアの本当のクールタイムを把握している。
ブルー戦でやったクールタイムを誤認させることはできない。
これでは万全の状態のエルナに対してカーラの分が悪いと言える。
「カーラ、ダークウェーブ」
「やっぱりね(ボソッ)。エルナ、フレイムランス」
莉菜の呟きはオリヴィアには聞こえていない。
その内容から莉菜は最初はダークウェーブと読んでいたことになるが、フレイムランスではダークウェーブを相殺できず、被弾する。
ダークウェーブを読んでいたにしては少し対応がお粗末だ。
莉菜には何かしらの狙いがあるのか、それとも予想外の威力だったのか。
「まだナイトメアは使えません。ならカーラ、プチダーク、ダークボール」
「エルナ、プチシャイン、シャインランスで相殺して!」
「まだです!カーラ、連続突き(闇)」
「エルナ、ロックオンからのスターバースト」
エルナに回復されない程度のダメージを与えてナイトメアで倒したいオリヴィアだが、思うように攻撃が決まらない。
それもその筈。莉菜に読まれているのだから。
カーラの遠距離からの攻撃で警戒が必須なのはナイトメアくらい。
そのナイトメアを莉菜は封じる手立てを用意している。
ならば後は近接戦で霞連槍を使わせなければ、問題ない。
カーラを槍の間合いまで入らせなければ、負けないと莉菜は確信を持っている。
スキルによる攻撃が来なくても双銃による通常攻撃がエルナへの道を塞いでいる。
この道をこじ開けて近づければ、また戦局は変わるだろう。
「もうそろそろかな(ボソッ)」
再び莉菜が1人、何かを呟いている。
今度はオリヴィアも気づいた様子だが、何を呟いているのかまでは聞こえないので、あまり気にし過ぎないようにする。
「カーラ、」
「エルナ、キュアヒール」
「ナイトメア。え?……」
これが莉菜の用意したナイトメア封じ。
クールタイムを正しく把握しているからこそ発動の直前にキュアヒールを差し込むことができる。
これによってナイトメアは不発に終わる。
デバフや状態異常を付与していない相手には一切の効果を発揮しないスキルだが、一応使用しているので、再びクールタイムに入る。
「今よエルナ!スターフレイムショット」
「躱して、カーラ!」
その後も莉菜のナイトメア封じにより、ナイトメアは一度もまともに発動できていない。
ナイトメアを使わずともダメージは与えているが、それもプチヒールで回復される。
「はー、ふー、もうあれしかありませんね」
大きく一度深呼吸をして覚悟を決める。
オリヴィアにはこの状況を打開する策があるようだ。
これでダメなら勝てない、その想いが痛いほど伝わってくる。
「カーラ、闇刺突!」
「それならエルナ、シャインランス」
カーラは避ける素振りを一切見せず、シャインランスに突っ込む。
え?これってもしかして。
カーラもやっぱりリーフィアと同じでできるのかな。
ブルーとのバトルでもやってたし。
高速で飛来する光の槍とカーラの持つ槍がぶつかる。
少しの拮抗の末、光の槍は霧散して消え、カーラは勢いよくエルナに向かっていく。
「蓮のリーフィアみたいなことするじゃん!ブルーとのバトルはただのまぐれだと思ってたのに」
「ふふーん、カーラにだってやればできるんです!」
もちろんだが、ブルーとのバトルで成功したのはただの偶然だ。
バトルの後にブルーを間に挟んでカーラはリーフィアに魔法の斬り方、カーラの場合は穿ち方を教わっている。
このことを知らないオリヴィアと莉菜はそれぞれ違った反応を見せている。
プルプル、プルプルプル
「あんまり私の腕の中でプルプルしないで下さい。嬉しいのはわかりますが。…私もこうして誰かに技術を伝授できる日が来るとは感慨深いです」
プル、プル
「ふふ、そうですね」
バトルはかなり白熱している。
「カーラ、霞連槍!」
「エルナ、ロックオン、スターバースト」
迫り来る必中の一撃を霞連槍の初撃で的確に穿つ。
そのままの勢いで槍はエルナに襲いかかる。
カーラの猛攻に為す術なく、貫かれる。
このままカーラが勢いでバトルに勝利するかと思われたが、上手くいかない。
「エルナ、シャインランス、プチヒール」
至近距離で放たれるシャインランスを躱すのはカーラにもできない。
シャインランスに被弾したことで霞連槍の連撃は途切れ、クールタイムに入る。
その隙にエルナは回復を済ませて体勢を整える。
「ナイトメア!」
「ヤバッ!キュアヒール」
カーラにギリギリの所まで追い込まれたことで莉菜の頭からナイトメアのクールタイムが飛ぶ。
気付いたときには既に時遅く、キュアヒールでデバフや状態異常を解除するもその前にナイトメアによるダメージを負う。
プチヒールはついさっき使ったばかり。
「こうなったら速攻で倒す!エルナ、スターフレイムショット、プチシャイン、シャインランス、プチファイア、フレイムランス」
「カーラ、ダークウェーブ、プチダーク、ダークボール、連続突き(闇)」
エルナとカーラのバトル、開始当初はカーラにかなりの逆風が吹いていたけど、今は違う。
逆風を押しのけてエルナを追い込んでいる。
だが、カーラに余裕がある訳ではない。
カーラは回復魔法が使えないから今までのダメージが蓄積しており、既にHPは残り1割ほどとなっている。
エルナもプチヒールで回復こそしているが、回復量をダメージ量が上回っている。
プチヒールで回復しきれなず、残っていたダメージとナイトメアによるダメージでHPは残り2割ほど。
両モンスターが激しい攻防を繰り広げる。
エルナはカーラを近づけさせまいと弾幕を張り、カーラはプチヒールのクールタイムが明ける前に仕留めようと針の穴を通すように弾幕の隙間に攻撃を通す。
そうして遂にこのバトルに決着の刻が来る。
ダークウェーブを防いだことでほんの少しだが、弾幕に人が1人通れるくらいの穴が空く。
その一瞬を見逃さずにカーラは弾幕の防壁を突破する。
「カーラ、霞連槍!!!」
「やっぱりカーラは強い。でも、ちょっとだけ遅かったね」
こうしてカーラの槍がエルナを捉えたと思ったが、
『カーラ DOWN』
この結果を持って、莉菜とオリヴィアのギルドマスター決定戦は終了する。
莉菜、2勝1敗。
オリヴィア、1勝2敗。
莉菜はこの結果から蓮VS郁斗の結果を待たずしてギルドマスターもしくはサブマスターになることが決定する。
「最後の一撃、あれは莉菜が上手かったな」
「ロックオンを上手く使ってるね。でも、タッグEトーナメントの時にも一度だけ似たような使い方してた気がするよ」
「ああ、あれな。まあ、今回は弾幕で視界を遮られてたから気づかないのも無理ないだろ。てか、実際のバトル中にあれに気づけは少し無理あるぞ」
プルプルプル
「よしよし。そんなに落ち込まないでください」
プルプル、プルプルプルプル
「え?私ではなく、主になでられたい?そんな贅沢言わないでください」
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