第94話 莉菜VSオリヴィア②

「マリン、アクアカッター」


「躱して下さい、アルマ!」


マリンとアルマ、お互いにスキルのクールタイムが明けてバトルが再開してからはマリンが一方的に攻撃をする展開。

アルマも上手く凌いではいるが、少なからずダメージは受けている。

流れは確実にマリンに傾いている。


「マリン、アクアトルネード」


「アルマ、デュアルブレイク!」


デュアルショットモードのアルマから放たれるデュアルブレイクはアクアトルネードを相殺して爆発を引き起こす。

先ほどと同様に煙で視界が遮られる。


「マリン、どこかしらからアルマが来るよ!」


「うん!」


莉菜とマリンは先ほどの教訓を活かしてしっかりと警戒している。

マリンは下手に動き回るより動かず気を窺う。

アルマは先ほどと全く同じようにセンサーでマリンの位置を特定して接近を試みる。

これでは先ほどと同じ展開になりそうだが、何故か接近を試みているのにも関わらず、アルマはデュアルショットモードのまま。

普通なら接近を試みるなら先ほどみたいにデュアルエッジモードに切り替る。

今回、モード切り替えをしないということは何かしら考えあってのことだろう。


するとアルマはある程度接近したところで止まり、銃口をマリンに向ける。

そしてダブルショットを放つ。

機械で作られた銃だからか発射音はしない。

無音の銃撃がマリンを襲う。

アルマはこのタイミングでエネルギー解放を使ってダブルショットを二回放っている。


「マリン、攻撃が飛んできた方向にアクアボール」


直ぐに立て直して反撃を試みるが、アルマは場所を移動した後でアクアボールは当たらない。

今のがダブルショットによる攻撃だと見抜いている莉菜は次は近接戦で攻撃してくると読み、フィールドのちょっとした変化も見落とさないよう心掛けている。

すると、フィールドのどこからかピーピーピーと音が鳴り始める。

この音が何を意味するかはアルマのこれまでのバトルから誰もが理解している。

莉菜としてはマリンとアルマの一々交換は最悪にも程がある。

まともにエネルギー大噴出をくらえば、マリンのHPは確実に0になる。

エネルギー大噴出が発動する前にアルマから距離を取るかアルマを倒すかしないといけない。

この時、莉菜はマリンの残りHPから距離を取るではなく、アルマを倒すことを選択する。

下手に動き回ってアルマに接近したら最悪。

ならば音から位置を割り出して倒すと考えた。


音は鳴り響いているが、アルマが常に動いているからか場所を特定できない。


「マリン、お願い!頼んだわよ!」


「うん、任されたよ。莉菜」


オリヴィアもアルマに指示を出している素振りはない。

つまり、この局面で両プレイヤーともにモンスターに全てを託したことになる。


アルマVSマリンのバトルはその後、すぐに決着。

結果だけ言うとマリンの勝ちだ。


マリンを確実に倒そうと更なる接近を試みたが、それが逆効果だった。

マリンはそれで音源が近いと察して僅かな水の流れと音から凡その位置を特定できた。

あとは渾身の一撃、アクアトルネードをアルマがいるであろう場所に向けて放つ。

それが見事に直撃してアルマのHPは0になる。


『アルマ DOWN』


「よし!!マリンありがとう!」


「ここでマリンを倒せたら大きかったのですが、仕方ありません。アルマは十分頑張ってくれました」


オリヴィアは気持ちをリラックスさせる為か大きく深呼吸をする。

そして2体目のモンスターを召喚する。


「君臨せよ、カーラ!」


「真打ち登場ね!」


「カーラ、悪魔の祝福、ナイトメア」


『マリン DOWN』


「……うん。マリンここまでありがとう」


悪魔の祝福による強制デバフ付与からのナイトメア。

開幕必殺コンボでマリンが倒される。

しかし、アルマ戦でHPが9割以上削られていたマリンにこれを耐えろと言うのはあまりにも酷な話だ。


「降臨せよ、エルナ!」



「新入生代表トーナメントの決勝戦の再来だな」


「そうだね。どっちが勝つのか」


「俺はエルナに一票だな。蓮はどっちだ?」


「んーどうだろ。かなりいい勝負に…」


プルプルプル、プルプルプル、プル、プルン


「よしよし、なでなで。ブルーはカーラが勝つと思ってるみたいだし、俺はカーラに一票」


「……蓮、おまえブルーが何言ってたのかわかったのか?」


郁斗は驚きのあまり逆にリアクションに困っている。

驚いているというより、現実を理解することを脳が拒んでいるのかよくわからない顔をしている。


プルプル、


「ブルー、主の邪魔はいけません」


プル!?プルプル、プル


ブルーが郁斗の言葉に反応して照れてるところでリーフィアがこっちに来る。

すると俺の膝の上に特等席を構えていたブルーはリーフィアに連れて行かれる。

プルプルと大きく震えてリーフィアに猛抗議している感じの雰囲気がブルーからしたけど、さすがに気のせいか。

だって、リーフィアがこれ以上ないくらいに満面の笑みを浮かべてるしね。

俺のモンスターは3体とも仲が良さそうだな。

鬼狼オーガウルフもブルーを爪でツンツンしてるし。


「何かいろいろと凄いな、ブルーは」


「ん?いつもこんな感じだよ」


「……そっか」


何だろうな。

今、ちょっと会話の間が長かった気がするな。

いや、気にしすぎか。

きっとネメアはたぶん無理だろうけど、コンはブルーみたい膝の上に乗ったりしないのだろう。

それが当たり前になっている俺とブルーを見て、きっとどう言葉を返していいのかわからなかったんだ。

郁斗はたぶんいろいろと複雑に考え過ぎちゃったんじゃないかな。



プルプルプル!プル、プル


「ブルー、主の邪魔はいけません!主にブルーが女の子だと、」


!?プルプルプルプルプルプル!プル


「ふふふ、わかればよろしい」


ブルーを抱き抱えたリーフィアと共に先ほどまで鬼狼オーガウルフもいたのだが、今はコン、ネメアと共に離れた場所にいる。

鬼狼オーガウルフの本能がこのままブルーとリーフィアと一緒にいてはヤバいと察し、すぐさま近くにいたコン、ネメアと和気藹々、楽しくやってる。

それを知らない蓮は3体仲良くはしゃいでるんだろうなとか思ってたりする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る