第93話 莉菜VSオリヴィア①

 夜も暗くなってきたことで、スタジアムの証明が点灯する。

 そこで次のバトルをどうするか話し合っている。


「もう夜の6時ね。夏だからまだ明るいほうだけど、さすがに照明は点くか」


「で、どうする?残っているバトルは莉菜とオリヴィア、俺と蓮の二つだけだ。どっちから始める?」


「俺はどっちでもいいかな。先でも後でも」


「はい!私は先にバトルしたいです!蓮に勝ったこの勢いのまま莉菜にも勝ちます!」


「すごい自信ね。オッケー!なら決まりね。私とオリヴィアが先、蓮と郁斗が後」


 こうしてバトルの順番は決まる。

 4人ともこのバトルの重要性を理解している。

 勝ったらサブマスター以上が確約となる。

 ここまできたらギルドマスターにさえならなければそれでいいといった考えが4人の頭には浮かんでいる。

 誰がギルドマスターで誰がサブマスターになるのかは神のみぞ知るところ。


『ギルドマスター決定戦、莉菜VSオリヴィア バトルSTART』


「来て、マリン!」


「お願いします、アルマ!」


「マリン、覆海」


「アルマ、エネルギー充填、デュアルショットモード」


 フィールドは海に沈むが、アルマは何の問題も無さそうだ。

 オリヴィアは実家に帰っている間にアメリカにあるランク変動型ダンジョン『機械の墓標』で沢山のパーツを入手している。

 その時にいろいろと手違いと起こしてエネルギー大噴出を取得させてしまったりしているが、ちゃんと考えてアルマにパーツを合成している。

 郁斗の実家、お食事処二階堂で4人でお昼ご飯を食べた時に莉菜が人類種の人魚を捕まえていて、名前を与えていると知り、次にバトルをする時に備えて水中でも戦えるようにパーツを合成している。

 それでも素早さなどはマリンの方が圧倒的に上、近接戦は厳しいと考えたかデュアルショットモードで遠距離から戦う姿勢を見せる。


「マリン、アクアトルネード」


「アルマ、デュアルブレイク!」


「いきなり使ったわね。ならマリン、アクアランス、アクアカッター」


「アルマ、ダブルショットで打ち落として!」


 マリンとアルマの攻撃は相殺され、水中で爆発が起きる。

 爆発の影響で発生した煙によって視界不良となり、相手モンスターの居場所を視認できない。

 煙が晴れるまで下手に動かずにジッとしていた方がいいと判断し、マリンは煙が晴れるのを待つ。

 一方でアルマはマリンとは違い、動いている。

 アルマからもマリンを視認することはできないが、そもそもアルマは機械種のモンスター。

 センサーで相手の居場所を感知することもできる。

 スキルとか全く関係ないので、忘れがちの機能。

 今回はこのセンサーが最大限、その機能を発揮する。

 センサーによってアルマはマリンの現在位置を特定、煙を上手く利用して自分自身の姿を隠しながら接近を試みる。

 接近を試みながらアルマはデュアルショットモードからデュアルエッジモードへ切り替えを済ませる。

 デュアルショットモードのままでは攻撃スキルがクールタイムに入っていて何もできないから接近して、デュアルエッジモードでマリンに大ダメージを与える魂胆だ。


「ん?っ、!!マリン、アルマが下から来てる」


 アルマの接近にいち早く気付いたのは莉菜だったが、少し遅い。


「アルマ、ダブルスラッシュ」


 莉菜の一声でアルマの接近に気付き、回避行動を取ろうとしたが、間に合わずダブルスラッシュが直撃する。

 オリヴィアもこのチャンスを逃したくはない。

 その思いが強かったのだろう、いきなりエネルギー解放を使ってダブルスラッシュによる追撃を行う。

 アルマはオリヴィアのその思いにしっかりと応える。

 追撃のダブルスラッシュも直撃し、マリンのHPは一気に半分を下回る。

 このままの勢いでアルマが決めるかと思いきや、マリンに更なる追撃は行わないどころか手痛い反撃をもらっている。

 アクアダイブによる頭突きをくらい、僅かに水中での体勢が崩れたところをアクアボールが直撃。

 その後、最初に使ったスキルのクールタイムが明けてアクアランスやアクアカッターを放つがそれはデュアルブレイクで防がれる。


「それはさっき似た奴を見た!マリン、アクアトルネード!」


「うっ、!!アルマ!」


 マリンによって発生した水中での竜巻はアルマを容易く飲み込む。

 アルマは既に使える攻撃スキルは殆ど使っており、クールタイムに入っている。

 ただ、それはアクアトルネードを放ったマリンにも同じ事が言える。

 マリンにはこのまま近距離で戦うメリットがないからか、そそくさと距離を取る。

 両モンスターのスキルがクールタイムから明けるのを待つ。バトルは完全に仕切り直しだ。



「やっぱアルマって機械種だから攻撃スキルが少ないな」


「そうだね。コンみたいに妖術とかがあれば別だけど、何も無いってなると手の内がバレてる相手に勝つのは厳しいかな」


「となると莉菜としてはマリンとアルマの一々交換は避けたいとこだろうな」


「マリンが健在の状態でカーラとのバトルになればかなり莉菜が有利だしね」


「悪魔の祝福からのナイトメアのコンボは厄介だからな。エルナならスキル発動の僅かな時間ラグでキュアヒールを差し込むとかできそうだけど、わざわざリスク背負ってまですることじゃないしな」



 そろそろ両モンスターのスキルのクールタイムが明け始める頃合い。

 スキルが使えなくても水中で鬼ごっこを続けていたが、水中ではマリンの素早さについていけず、アルマは距離を詰めることはできなかった。

 アルマとマリンのHPは既に半分を下回っている。

 決着のときはそう遠くないだろう。

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