第92話 蓮VSオリヴィア③

 よし!デュアルブレイクを防いだ。

 あとはアルマを倒す大チャンス!

 あれを使うのは今しかない!


鬼狼オーガウルフ、この一撃で決めるぞ!オーガフレイム!」


「アルマ、剣を盾に突っ込んで下さい!!」


 口から炎を噴射する鬼狼オーガウルフ

 ここまで温存してきた鬼狼オーガウルフ最強の攻撃スキル。

 アルマとのバトル、恐らくこれが最後の攻撃となる。

 そこに照準を合わして最強の一撃を温存していた。

 それに対してオリヴィアはアルマに攻撃に突っ込むよう指示。

 これには蓮も何が何だかといった雰囲気になるが、アルマを倒せばオリヴィアの思惑など関係ないと割り切る。

 するとどこからともなく、ピーピーピーと音が鳴り始めるが、残念なことに鬼狼オーガウルフの放つオーガフレイムがゴーゴーと燃え盛る音で掻き消されて蓮の耳には届かない。

 その間にもアルマのHPは刻一刻と削れている。

 あと少しでHPが0になるというタイミングで突如としてフィールドで大爆発が起きる。

 大爆発の余波で起きた土煙が晴れるとそこには、


『アルマ DOWN』


鬼狼オーガウルフ DOWN』


 二つのウインドウが表示されており、フィールドにモンスターは1体もいない。


 偶然かそれとも必然か、オリヴィアの狙い通りの結果となる。

 あの大爆発、2体ともたおれている状況から蓮は最後の攻防で何があったのかは察していた。

 ピーピーピーという音が聞こえてこなかったことだけが、疑問として残り続けるが、バトルはまだ終わっていない。

 寧ろここからが本番とも言える。

 オリヴィアと蓮のエースモンスター、カーラとブルーの初バトル。



「マジか!!エネルギー大噴出でみちづれ。あれは連の運が悪かったとしか言えないな」


「あははは、ははっ、はあ、」


「流石に笑いすぎだろ。気持ちはわかるけどさ」


 ここに1人、アルマと鬼狼オーガウルフのバトルの結末に大爆笑している女がいるが、戦っている2人のプレイヤーは知る由もない。



 まさか自爆特攻をしてくるとは思わなかった。

 今ので流れが嫌な方向に傾き始めてる気がするな。

 それでもブルーならカーラに勝ってくれる。

 今の俺にできるのはブルーを信じることだけ。


「君臨せよ、カーラ!」


「出でよ、ブルー!」


「カーラ、悪魔の祝福、ナイトメア!」


「ブルー、プチヒール」


 悪魔の祝福でデバフ付与からのナイトメア。

 これを耐えれるモンスターか否かで悪魔と戦う資格があるか判断される。

 このコンボで一撃死するような雑魚モンスターで悪魔と戦うなどおこがましいということだ。

 もちろん、ブルーは余裕ではないが、耐えている。

 ナイトメアで削られたHPも即座にプチヒールで回復しているが、デバフや状態異常までは回復できない。

 ブルーにとっては早期決着が望まれる。


「カーラ、ダークウェーブ!」


「ブルー、フレイムフォースで相殺しろ!」


「まだです!闇刺突!」


「プロミネンスアタック!」


 最初からフルスロットルの全開バトル。

 しかし、ブルーは完全に後手に回っている。

 ただでさえデバフや状態異常が付与されており、不利な状況。

 常に先手を取り続けて戦いたいところだが、オリヴィアとカーラがそれをさせない。


「今ならいける!ブルー、電光迅雷!」


「それならカーラ、霞連槍!!」


 ここまでカーラが有利にバトルを進めていたが、ここにきてブルーに流れが傾き始める。

 電光迅雷による高速移動に初見ではカーラも対応しきれず、簡単に背後を取られ、まともに攻撃をくらう。

 これにより霞連槍は放たれることなく、クールタイムに入る。


「よし!ブルー、鳴神、プチサンダー、プロミネンス、ファイアボール、スカーレットアロー」


「カーラ!!」


 今使える攻撃スキルを総動員してカーラを仕留めにかかる。

 カーラは回復魔法が使えないから与えたダメージを回復されることはない。

 早期決着が望まれる以上、ダメージは与えられる時に与えるに限る。

 もちろん、ブルーも回復を怠らない。

 プチヒールのクールタイムが明け次第、即回復を繰り返す。


 あと少しまでブルーを追い詰めても回復されてしまう。

 その状況から少しカーラに焦りが出始めるが、オリヴィアは冷静に現状を分析し、勝つ為の道筋を見つける。


「カーラ、ダークボール」


「ブルー、ディバインシールド」


 ディバインシールドでダークボールは防げても状態異常によるスリップダメージまでは防げない。

 ジワジワとブルーのHPが削られて既に残りHPは5割を下回っている。

 先ほどプチヒールによる回復は行ったばかりでクールタイムはあと数分ほど明けない。


 カーラが今使えるスキルは先ほどクールタイムから明けたばかりの霞連槍のみで、他のスキルは全てクールタイムに入ってるか使えないのどちらか。

 カーラの残りHPも2割ほど。

 ここは思い切って勝負に出るしかない。


 たぶん次にプチヒールのクールタイムが明ける前に決着はつくと思う。

 次にカーラのナイトメアのクールタイムが明けたらブルーのHPからして負ける。

 ここまでの感じからしてナイトメアのクールタイムは恐らくあと1分ほどで明ける。

 今、ここで決めるしかない!


「カーラ、霞連槍!」


「ブルー、鳴神!」


「カーラお願いします!!!!!」


「え!?嘘でしょ?」


 この大一番でカーラはぶっつけ本番、魔法をリーフィアのように斬る、いや、穿つの方が正しいか。

 それでもこの大一番で成功させるのはカーラの巧みな技術あってこそ。

 鳴神を槍で穿ったが、これが偶然かどうか蓮には関係ない。

 カーラもリーフィアと同じように魔法を捌く術がある。

 大事なのはこの結果だけ。

 だからこそ魔法での攻撃は選択肢から消える。


「電光迅雷!!」


 ややブルーが有利な局面だったが、カーラが鳴神を穿つことで状況は五分になる。

 電光迅雷を使ったブルーの速さにもカーラも今度は対応する。

 ドス黒い水?を纏った槍と雷を纏ったブルーが激突する。

 意地と意地のぶつかり合い。

 両モンスター、コイツには負けたくない。

 その思いがヒシヒシと伝わってくる。

 霞連槍と電光迅雷は完全に相殺、その反動で両モンスターは大きく後方に吹き飛ぶ。


「ブルー、プチサンダー」


 ナイトメアのクールタイムが明けるまでおよそ後10秒くらい。

 それまでに何としてでも勝つ。

 カーラが魔法を穿つことができても全てのスキルがクールタイムに突入している状況ではできない。

 今なら魔法が通る、はずだった

 この時、ブルーがプチサンダーを放つことは無かった。

 ブルーが蓮のことが嫌いになり、指示に背きたくなったとかではもちろんない。

 天地がひっくり返ってもありえないだろう。


 蓮は大きな読み違いをしている。

 ナイトメアのクールタイムが明けるまで残り10秒ほどと考えていたが、実際には違った。

 ここまでのカーラとバトルでナイトメアの発動間隔からクールタイムを推察していたが、そこにはオリヴィアが用意した罠があった。

 ここぞという時に役に立つかもしれないとナイトメアのクールタイムが明けても約10秒ほど待ってから使っていた。

 この10秒という秒数に特別な意味はない。

 ただ、長すぎず短すぎない秒数がオリヴィアの中では10秒だっただけ。

 たったの10秒だが、その読み違いが敗北に繋がる。

 蓮の予想より10秒早くナイトメアが放たれてブルーのHPが0になる。


『ブルー DOWN』


 全員が2回ずつバトルを行い、1勝1敗で横並び。

 残るバトルは莉菜VSオリヴィアと蓮VS郁斗。

 この残る2回のバトル、それぞれの勝者がギルドマスター、サブマスターになる。

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