第82話 郁斗VSオリヴィア②

 バトルは郁斗が優勢かな。

 上手くオリヴィアの思惑を掻い潜っている。

 それにまだゴーストタウンのフィールド効果が何なのか不明。

 もしかしたら俺が気づいてないだけで、既にその効果を発揮している可能性もある。


「ネメア、アースサイズ」


「アルマ、エネルギー解放、デュアルブレイク!」


 これじゃあエネルギー解放でクールタイムがリセットされたデュアルブレイクでネメアのスキルが破壊されて強制的にクールタイムに突入する。

 さっきのチェーンリストレイントの二の舞になる。

 一体、郁斗は何を考えてるんだ。


 フィールド上で2体のモンスターが激突する直前、郁斗はネメアに一つの指示を出す。

「今だ!」と。

 これに最も敏感に反応したのがオリヴィアとアルマだった。

 その効果が謎に包まれているゴーストタウン。

 フィールドを利用して何かしてくるに違いない、そう考えた。


 シュッ! シュッ!


 ネメアの大鎌とアルマの剣が再びぶつかる直前にネメアの姿が消えた。

 そして背後にその姿を現した。


 背後を取られたアルマはデュアルブレイクを空撃ちし、ネメアの攻撃を受けて倒れる。


『アルマ DOWN』


 これで郁斗が一歩リード。

 オリヴィアからすると少し嫌な流れだな。

 ここからカーラで2体抜きしないといけないことを考えると少し厳しいかな。

 うーん、でもカーラならって考えちゃうな。


 ゴーストタウン、まさかフィールド上を自由自在にテレポートできる類のスキルか?

 だとしたら強力すぎる。

 何かしらのデメリットがある筈。

 可能性としてはテレポートそのものに制限があるか一度のバトル中にテレポートできる回数に限りがある。

 今パッと思い浮かんだのはこの二つ。

 全くの検討ハズレの可能性もあるけど、相手にするなら無制限にテレポートできると思って身構えた方がいいだろうな。


「君臨せよ、カーラ!」


 遂にオリヴィアのエースモンスター、カーラの登場。

 DランクになってLv上限が45になった。

 つまり、カーラも更に進化している可能性がある。

 どれだけ強くなったのか要注目だ。


「真打ち登場だな!この時をずっと待ってた。今日は新入生代表トーナメントのリベンジを果たさせてもらうぜ!」


「もちろん、受けてたちます!カーラが」


 うん、オリヴィア。最後の一言が全て台無しにした気がするよ。

 ちょっとカッコイイって思ったじゃん!!


「ねえ、蓮はどっちが勝つと思う?」


「流れは郁斗だけど、カーラが進化して悪魔総裁になっていたら正直、状況は五分かな」


「やっぱり私と同じ考えね」


 悪魔騎士がLv40になると悪魔総裁に進化する。

 悪魔や天使は決まった進化ルートがある。

 余程、下手な育成をしない限り決まった進化を遂げる。

 育成の仕方が上手いと更に上をいくこともあるらしいけど。


 もし、悪魔総裁に進化していたらあのスキルが使える。

 あのスキルが使えるならオリヴィアのこの不利な状況も一気に覆る。


「カーラ、悪魔の祝福!」


「!?やっぱり使えるのか。対策は用意してる。ネメア!」


 悪魔の祝福はバトル開始直後のみに使用可能スキルで、効果は相手に強制的にデバフや状態異常を付与する。

 デバフや状態異常を付与した悪魔がやることは一つしかない。


「カーラ、ナイトメア!」


 この一撃でネメアは倒れる……筈だった。

 オリヴィアとカーラの計算では。


「え?どういうことですか?ナイトメアが当たっていない?何で…」


「ふふはは、まさかこんなに上手くいくとは思わなかったよ。ゴーストタウンの効果はデバフ・状態異常の反射」


「え?デバフ・状態異常の反射?なら先ほどのテレポートは一体…」


 あ!あれってもしかしたらテレポートじゃなくてあのスキル!?

 それなら可能性があるどころかそれしかない!

 あれはタッグEトーナメントの1回戦で戦ったシャドウレイスの使っていた影渡り。

 あれはテレポートしていた様に見えて実は影から影に渡っていただけ。

 でも、タイミング良く渡ることで背後にテレポートしたかのように見せたんだ。

 そうすることでフィールド効果はテレポート関係だと思わせた。


 先入観が働いた。

 最初に展開したフィールドの効果が謎に包まれていた。

 郁斗の「今だ!」の声にフィールド効果を利用すると無意識下で考えてしまった。


「さっきのテレポート紛いのは影渡りだよ。タイミング良くやればテレポートしてる様に見えただろ?」


「うー、むむむ。そんな単純な手に引っ掛かかってしまうとは。ですが、ネメアを倒してしまえば問題ありません!カーラ、ダークウェーブ」


「ヤバッ!ネメア、影渡り!」


「カーラ、後ろです!霞連槍」


 あー、誘導されたな。ネメアの残りHPやカーラの攻撃力の高さから直撃は不味いと判断したんだろうな。

 回避するには影渡りしかないけど、影渡りを使えば狙い討たれる。

 ネメアの最後は呆気なく、カーラに仕留められた。


『ネメア DOWN』


「え?どういうことですか?」


 ここで一つオリヴィアにとって想定外のことが。

 ネメアが展開したゴーストタウンが消えずに残っている。

 普通、スキルを使って展開されたフィールドはそのモンスターが倒されたら消える。

 ネメアは今、カーラに倒されたから消えないとおかしい。


「悪いけど、ネメアのゴーストタウンは消えない。永続効果を持ってるからな」


「永続効果!?私の想像を遥かに超えてきますね、郁斗は」


 まさかまさかの永続効果持ちのスキル。

 これは他のフィールドスキルで上書きするとかしないとこのまま展開され続ける。

 このままではカーラはナイトメアを封じられたも同然。

 でも、郁斗の方にも大きなデメリットはある。

 タッグEトーナメントでタッグを組んだからわかる。

 コンの稲荷狐の祟りと祈りが使えない。

 恐らく、カーラにデバフを付与しようとしても反射されてコンに付与されるだろう。

 そしたらゴーストタウンでナイトメアを封じた意味が無くなる。

 まあ、悪魔の祝福によるデバフ・状態異常付与を反射してるし、使う意味は無いけど。

 でも、稲荷狐の祈りも使えるのか気になるところだ。

 郁斗はデバフ・状態異常の反射と言ったけど、バフはどうなのか?

 もしバフも反射するならこのバトルでは決して使わない筈。

 それで判断するしかないか。


 それにしても郁斗がネメアという名前を与えたのも納得がいったよ。

 これだけ強力なスキルを持っている訳だし。

 あの日、間違えて合成したら予想外に強くなったと言っていたけど、ここまでとは思わなかったよ。

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