第81話 郁斗VSオリヴィア①

「ネメア、デスサイズ」


 フィールドを展開したネメアは直ぐに武器を召喚した。

 死神が持っているような大鎌。

 最初にフィールドに召喚された時に武器を持っていなかったから遠距離攻撃に特化しているのかなと思ってけど、後から武器を召喚するタイプみたいだ。


「アルマ、エネルギー充填、ダブルスラッシュ!」


 アルマの持つ二本の剣にエネルギーが浸透し始めた。

 そして先に攻撃を仕掛ける。


 エネルギーを浸透させ纏わせた二本の剣をクロスさせて、背中からエネルギーを逆噴射することで超スピードでネメアに向かっていく。


「ネメア、受け止めろ!」


 郁斗はネメアに攻撃でも回避でもなく、受け止めるように指示。


「これ何かあるわね」


「うん、普通なら攻撃か回避の二択だからね」


 俺と莉菜の考えは一致した。

 きっと郁斗には何か狙いがある。

 俺たちが気づいてる訳だし、オリヴィアもきっと気づいてる。

 それを理解していながら郁斗は何か仕掛けるつもりだろう。


 しかし、何も起きないままアルマの攻撃をネメアはそのまま受け止めた。


 もしかして何か狙いがあると思わせるのが真の狙いで本当は何も無いとか。

 いや、それはさすがにな。

 それなら受け止めるフリだけして攻撃や回避といった選択をすればいい。

 それをしないってことはここから何かある。


「ネメア、チェーンリストレイント」


「チェーンリストレイント?…chain restraint!アルマ下がって下さい!」


「もう遅い!ネメアそのままウインドサイズ!」


 ネメアの持つ大鎌の柄の部分の先端から鎖が飛び出てアルマを瞬時に拘束する。

 防御する側が一転して攻撃する側に。

 流れるような動きで風属性が付与された大鎌で薙ぐ。


「それならアルマ、エネルギー大噴出!」


 ピーピーピー、ドカーン!!!!


「え?マジかよ。何でそんなネタスキル仕込んでんだよ!?」


「万が一に備えてです!(これではパーツの合成を間違えて取得させてしまったなんて言えません)」


 エネルギー大噴出、簡単に言えば、自爆スキルだ。

 自分がダメージを受けるのは当然として攻撃範囲内に相手モンスターがいたら相手モンスターもダメージを受ける。

 それだけじゃなく、エネルギー大噴出など自爆スキルはフレンドリーファイアを貫通する。

 仲間をも巻き込む可能性のあり、発動したから少しラグがあることからネタスキル認定されている。

 さっき、ピーピーピーって鳴ったけどあれが実際に今から自爆しますよと告げている。

 今みたいな状況でも無い限り、躱せる筈だ。


「さすがの郁斗もこれは想定外かな」


「万が一に備えてね…。オリヴィアのことだから絶対もっと違う理由があるわね」


 莉菜がオリヴィアの発言をめっちゃ疑ってる。

 まあ確かに少し目が泳いでたから本当の理由はもっと別なんだろうなって気はしてる。


 バトルの方はアルマの方がダメージは大きそうだ。

 ネメアの残りHPはちょうど5割くらいだけど、アルマは3割ほどしか残っていない。

 もしかしてアルマって防御面のステータスが低い?

 じゃないとこれだけダメージを受ける訳ないよね。


「なるほどな。オリヴィア、アルマの弱点見切ったぜ!」


「うっ、アルマに弱点なんてありません!」


 今、ちょっと返しに詰まった。

 アルマってやっぱり防御面が脆そうだ。

 でもあの感じからすると他にもありそうだな。


「ネメア、もう一回チェーンリストレイント!」


「それはもう効きません。アルマ、デュアルブレイク!」


 先ほどは至近距離で攻撃に意識がいっており、且つ初見のスキルだったことでまともに受けてしまった。

 しかし、今はお互いに距離を取っている。

 さすがにこの状況では二度目は無い。

 オリヴィアもしっかりと対策を講じている。

 ここでブレイク系のスキルを選択した。


 ブレイク系スキルには破壊効果が付与されている。

 破壊効果は主に二種類の効果を発揮する。

 一つはスキル破壊。

 スキル破壊は強制的にスキルの発動を中断し、クールタイムに突入させる効果がある。

 そしてもう一つは武器破壊。

 バトル中のみに限って相手モンスターの武器を破壊する。

 破壊された武器はそのバトル中のみ装備効果を失う。

 一応、バトルが終われば無事に元通りに戻る。

 ただ、防具とリヴィングウェポンは破壊できない。



 このままネメアの大鎌の鎖とアルマの剣がぶつかればネメアの大鎌が破壊されるまではいかなくても鎖は破壊されてこのバトル中は使えなくなるだろう。


 しかし、ネメアの大鎌の鎖は破壊されることは無かった。


「え?どういうこと?デュアルブレイクが不発?」


「それは違うわ!もし不発ならチェーンリストレイントが破壊されているのはおかしい」


「あ、確かに。てことはネメアの大鎌に何かしらの秘密がある」


「それしか無いわね」


 俺と莉菜の予想を裏付けるかのように郁斗がネタばらしをする。


「まさかブレイク系スキルが使えるとは思わなかったよ。マジでこんな所で俺の失敗が役に立つとはな」


「??失敗?どういうことですか、郁斗。普通なら武器も破壊される筈です」


「前に話したことあっただろ?ドワーフにレイスとエルフと原人を合成しようとしたら間違えてレイスに合成したって」


 ドワーフ、エルフ、原人、今何か引っかかったような。

 ドワーフ、エルフ、原人……。

 あ、そういうことか!わかった!!


「合成素材となったドワーフね」


 あ、莉菜も気づいたみたいだ。

 ドワーフを合成してそのスキルをあのレイスも引き継いでいるのだとしたら全てに説明がつく。


「ドワーフはバトル中に武器を作ることができる。今ネメアが持っている大鎌はバトル開始と同時に作ったもの。壊されたらもう一回作ればいい!破壊と同時に作っていたから他から見たらデュアルブレイクが不発に終わったように見えるって寸法よ」


「なるほど。さすがは郁斗ですね!こうも簡単にデュアルブレイクを防ぐとは」

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