無限の可能性 進化と退化の軌跡 Let's Monster Battle

第77話 レッドゴブリンへのリベンジ②

　レッドゴブリンはブルーの攻撃を受けてダウンしていたけど、すぐに復帰する。

　自分たちが優勢の中、追撃してこないことを不気味に感じたのか、ブルーたちの出方を窺っている。

　しかし、少し待っても一向に動きを見せないことから時間稼ぎが狙いと気づいたのだろう。

　レッドゴブリンが一番近くにいたライトウルフ目掛けて突っ込む。

「ライトウルフ、ライトクロー！」

　ライトウルフがレッドゴブリンと1対1をしたらたぶん勝てない。

　レッドゴブリンもそれがわかっていてライトウルフを狙ったと思う。

　でも、これは誘い。

　前回の戦いで身に沁みて感じだ。レッドゴブリンの回避能力の高さを。

　迎え撃つ素振りを見せれば、きっとカウンター狙いでギリギリまで攻撃を引きつける為に絶対に足を止める。

　そこを逆にカウンターで返り討ちにする。

　レッドゴブリンがライトウルフとの距離を詰める。

　それに対してライトウルフも自らレッドゴブリンに突っ込んで反撃の構えを見せる。

　受けて立つと言わんばかりに動きを止めてからレッドゴブリンは両手に炎を纏わせて、待ちの構え。

　レッドゴブリンが足を止めた瞬間、リーフィアが動く。

　盾を前に構えてレッドゴブリンに向かって走り出す。

　当然、レッドゴブリンもそれに気付いているが、その視線は変わらずライトウルフに向いている。

　リーフィアよりライトウルフの方が自身の元まで到達するのが早いと瞬間的に判断したからだ。

　ここまでは作戦通り。

　恐らく、この後ブルーが何をしても対応されると思う。

　ブルーへの警戒を怠っているように見えて、最も警戒している。

　レッドゴブリンからはそれが痛いほど伝わってくる。

　レッドゴブリンが万全の状態なら。

「リーフィア、閃撃。ブルー、電光迅雷！」

　本来、ブルーに近接戦をさせるつもりは無かったけど、さっき上手く攻撃が決まったから予定変更。

　ブルーもやる気みたいだし、ここはブルーを信じて任せよう。

　正面から迫り来るライトウルフ。

　側面からはリーフィアの閃撃とブルーの電光迅雷。

　この局面を冷静に見極めて、レッドゴブリンはいち早く自身の元に辿り着くのはライトウルフと判断し、正面から迫り来るライトウルフ意識を集中する。

　それは悪手だよ。

　このチャンス、ブルーは指示しなくても大丈夫だよね？

　ライトウルフがレッドゴブリンの間合いに入る寸前にブルーがフレイムフォースを放つ。

　フレイムフォースはブルーを起点として周囲に炎を噴出する。

　当然、レッドゴブリンとの距離を詰めるべく動いていたリーフィアやライトウルフも巻き込まれるが、このゲームにはフレンドリーファイアがない。

　この攻撃でダメージを負うのはレッドゴブリンのみ。

　それに加えて炎で視界が潰されたので、リーフィアとライトウルフの居場所が掴めなくなった上に閃撃がいつ自身の元に到達するのかわからなくなった。

「リーフィア、風薙ぎ、ダークスラッシュ！、ライトウルフはプチシャイン、シャインダイブとライトファング」

　リーフィアとライトウルフはレッドゴブリンの居場所を炎の中でもしっかりと把握していた。

　今日までただLv上げをしていた訳じゃない。

　どうしたらレッドゴブリン相手に攻撃が当たるか、どうしたら不意を突けるかって考えていろいろとその辺のモンスター相手に試していた。

　あと、ちょっとズルだけどシグマさんに一回相談したりも。

　その成果を発揮する時だ！

　グギャァ――――！！！

　よし！上手く攻撃が決まった！

　この調子でHPをまずは削る。

　本番はHPが2割を切った狂乱モードに入ってから。

　元々攻撃力の高いレッドゴブリンの攻撃力が更に上がる。

　Lv30に到達したけど、下手に攻撃を受けると一撃でやられる可能性だってある。

　ライトウルフは防御力に一切SPを割り振らなかったから尚更。

　今の攻撃でレッドゴブリンのHPは残り3割まで削れた。

　ここからはスキルを温存しつつ、HPを削っていく必要がある。

　残り1割はリーフィアに削ってもらう。

「リーフィア、作戦通り頼んだよ！」

「お任せを！」

　前の戦いでレッドゴブリンの動きはある程度把握できている。

　リーフィアにはブルーとライトウルフのスキルを温存する為に1対1（サシ）でレッドゴブリンと戦ってもらう。

　それでリーフィアなら1割削れるのは前回、証明されている。

　あれからLvが上がってステータスも上昇している。

　今回は前回みたいに倒されたりしない。

　レッドゴブリンはリーフィアの度重なる攻撃でデバフや状態異常が付与されており、それなりに弱体化している。

　状態異常による継続ダメージもある。

　事前の想定よりも早く狂乱モードに入るかもしれないな。

　リーフィアとレッドゴブリンの戦いはかなり拮抗している。

　今はレッドゴブリンが一方的に攻めているが、リーフィアはそれら全てを回避している。

　今はまだ待っている状態。

　レッドゴブリンのある攻撃を。

　リーフィアも気付いている。

　盾を前に構えて受け止める体勢だ。

　レッドゴブリンがリーフィアとの距離を取った。

　素手で戦うことを基本としているレッドゴブリンが自ら距離を取る。

　この動きはあの攻撃が来る前兆。

　俺には上手くやってくれると信じることしかできないけど、リーフィアなら大丈夫。

　レッドゴブリンは足に炎を纏うとリーフィア目掛けて真っ直ぐ走り出す。

　最高速度まで加速したレッドゴブリン前方にジャンプしてドロップキックで攻撃する。

　あまりにも速すぎで前回の戦いでライトウルフは何もできなかったけど、来るとわかっていれば対処はできる。

　盾で受け止めると思わせて、ギリギリのタイミングで盾を引きつつ、右足を軸に体を回転させることで完璧な回避に成功。

　目の前を無防備な状態で横切るレッドゴブリンにはもちろん、リーフィアの手痛いカウンターをくらわせた。

　そうしてレッドゴブリンのHPは2割を下回り、狂乱モードに突入する。

「速攻で倒す！ブルー、リーフィア、ライトウルフ、作戦通りに！」

　作戦は至ってシンプル。

　3体の総攻撃でレッドゴブリンのHPを削りきる。

　守りは基本的に捨てるけど、一回だけならブルーのディバインシールドで防げる。

　本来なら遠距離から魔法を撃つ役目のブルーも距離を詰めて戦っている。

　この距離でレッドゴブリンはブルーじゃなくリーフィアを最大限警戒しているように感じる。

　今ならブルーでいけるかも。

「ブルー、電光迅雷！」

　プル

　これだけの近距離で発動したのにも関わらず、レッドゴブリンは前回同様にタイミングよくバク宙することで華麗に躱した。

　そして、その手には炎を纏っている。

　これでは前回の二の舞になると思うかもしれないけど、そうはならない。

　万が一に備えさせていたから。

「ライトウルフ、プチシャイン。リーフィアは閃撃！」

　プチシャインは光魔法だからとにかく速い。

　その分、威力は低いけど、そこは問題ない。

　空中でプチシャインに被弾したことで体勢が崩れた所をリーフィアが閃撃で狙い斬る。

　そこからはブルーの独壇場だった。

　鳴神やスカーレットアローといった強力なスキルでダメージを与えつつ、完全に体勢を立て直す前にプロミネンスアタックで更なるダウンを奪った。

　リーフィアとライトウルフもこの猛攻に加わり、気付いたらレッドゴブリンのHPは0になっていた。