第58話 タッグEトーナメント2回戦 蓮&郁斗

 莉菜とオリヴィアはやっぱり強い。

 それを再認識させられた。

 でも、俺たちだって負けてない。

 それを証明する為にも勝ち上がらないと!


『時間になりました。タッグEトーナメント2回戦 鬼灯蓮&二階堂郁斗 VS井伊神いいがみ鷺亜ろあ徳宗とくむね介司かいじを開始します』


『バトルSTART』


「出でよ、ブルー」


「出でよ、コン」


「来い、山太郎」


「頼むぞ、ジャック」


 相手のモンスターは山太郎という名前の河童かな?

 ちょっとイメージと違うけど、たぶん河童だ。

 河童の色って赤と黒なんだ。

 まあ、外見は置いといて河童は妖怪種のモンスター。

 何かしらの妖術が使える可能性がある。

 それには要注意だ。


 もう1体はジャックという名前の天狗だ。

 天狗も河童と同じで妖怪種のモンスター。

 それに翼があるから空を自由自在に飛べる。


 スキルを温存なんてしている余裕はないかもしれない。

 でも、まずは相手の出方を伺おう。


「コン、稲荷狐の祟り、稲荷狐の祈り」


「ブルー、ジャックにプロミネンス」


 コンはいつも通り、祟りと祈りを使う。

 コンの場合、開幕はこれしかないからね。


 ブルーにはジャックの方にプロミネンスを放つよう指示。

 山太郎は河童だから火属性の攻撃には強いと思う。

 だから消去法でジャックを選んだ。


 ジャックはブルーの攻撃を飛んで回避する。


「ジャック、旋風」


「山太郎、川への誘い」


 上空から風魔法の旋風が飛んでくる。

 地上では山太郎が妖術を発動。

 ただ、旋風はブルーとコンがいる場所とは全然違う前方に向けて放たれている。


 ミスかな?

 でも、これは逆にチャンスかも。


 ブルーとコンはジャックの旋風を躱そうとはしなかった。

 当然だ。

 自分たちに向かって来ない攻撃を躱そうとはしないだろう。

 しかし、それが仇となった。


 攻撃に移ろうとした時に異変は起きた。


 ブルーとコンが自分の意思とは正反対に山太郎の方へ引きずり込まれた。

 もちろん抵抗はするが、それも虚しく徐々に引きずり込まれる。


 もしかしてこれ山太郎の使った妖術!?

 このままだと2体とも旋風に被弾する。

 やっぱり出し惜しみしてる場合じゃないか。

 フレンドリーファイアはないし、あのスキルを解禁しよう。


「ブルー、フレイムフォース」


 ブルーを起点に全方位に炎が吹き荒れる。

 もちろんコンも巻き込まれる形となるが、問題ない。

 フレンドリーファイアがないからだ。


 自分たちの思い描いた通りの状況に引きずり込めたことに予想外の反撃が相まって山太郎とジャックは反応できなかった。


 山太郎が攻撃に被弾すると同時にブルーとコンは妖術から解放された。


 ブルーとコンを引きずり込もうとする力が消えた。

 山太郎にフレイムフォースが当たったのとほぼ同時だったと思う。

 てことは、山太郎に攻撃を当てれば解除される類の妖術か。

 ならどうとでもできる。


「マジかよ、あのスライムってあんなスキルも使えるのか」


「初見のスキルだ。仕方ないと割り切るしかないな」


 タッグバトルだから当然先に片方を落とせれば、有利を取れる。

 山太郎とジャック両方とも厄介だけど、未知数の多い山太郎から落としにいくべきかな。

 まだ妖術を幾つか隠し持ってるだろうし、ここは速攻で叩く。


「ブルー、山太郎にプチサンダー、プロミネンス」


「山太郎、躱せ!」


 プチサンダーとプロミネンスは山太郎をある場所に誘導する目的で放つ。

 恐らく火属性には強く、雷属性に弱い。

 だからプロミネンスは被弾してもいいという構えで、プチサンダーはより大袈裟に回避すると踏んだ。


 見事に俺の予想は的中した。

 プチサンダーを山太郎のやや右側に向けて放った。

 確実に回避するには左側しかない。

 そして雷属性の攻撃を嫌って大きく左に動いた。

 それを想定してそこにはプロミネンスを放ってある。


 山太郎はプチサンダーの回避には成功するもプロミネンスには被弾する。

 しかし、ブルーの攻撃はこれだけでは無かった。


 ブラインド攻撃。

 プロミネンスの真後ろから鳴神が迫っていた。

 完全に死角となるように放った一撃。

 気づける筈がない。


 山太郎は気付かぬ内にプロミネンスだけでなく、鳴神にも被弾した。


 これだけでは山太郎のHPを削り切るのは厳しいだろう。

 僅かに残ると思う。

 でも、これはタッグバトル。


「コン、鬼火」


 ジャックの横槍が入る可能性もある。

 それを潰すのも兼ねた鬼火による全体攻撃。

 これにより、ジャックの横槍ご入ることなく、山太郎への追撃が成功する。


『山太郎 DOWN』


「え?何が起きたんだ?」


「クソ、マジかよ」


 残すは空を飛んでいるジャックのみ。

 コンが狐火を使って追撃を試みたが、サラッと躱された。


 空を飛ぶ相手てのバトル。

 みんなと別れてから散々苦労した。

 でも、今のブルーなら面倒な相手だけど、勝てない相手じゃない。


「ジャック、天雷、旋風、炎熱の風」


「ブルー!」


 上空から怒涛の攻撃。

 ブルーはそれをディバインシールドを展開し、完全にシャットアウト。


 今、敢えてスキルの名前を言わなかったけど、ブルーにはちゃんと伝わってたみたいだ。

 さっき莉菜とエルナがやっていたことを真似してみた。

 それにディバインシールドの存在はできる限り、隠したい。

 周りにはマジックシールドだと誤認させておきたい。


 ジャックの攻撃がやんだ。

 スキルがクールタイムに突入したかな。

 なら反撃開始だ。


「ブルー、プロミネンス、ファイアボール」


「コン、狐火」


 ジャックは空中を縦横無尽に移動してその尽くを回避する。


 今はそれでいい。

 空中を縦横無尽に移動できる相手と戦う時は勝負を焦ってはダメだ。

 状況は2対1で俺たちが有利なんだ。

 何一つ焦る理由はない。

 どのみち、ジャックは回復魔法が使えない。

 こっちは反撃の時が来るのを待つだけだ。


「ジャックもう一度、天雷、旋風、炎熱の風だ」


 この時を待ってたよ。

 攻撃に意識がいく瞬間、確実に防御はおろそかになる。

 今度は確実にブルーのディバインシールドを突破しようと画策しているだろう。

 尚のことカモだ。


「ブルー!」


 ここまではさっきと全く同じ展開。

 ここからはさっきとは違う。

 お互いに。


「ジャック、烏神社からすじんじゃ、天の怒り」


 フィールド上に烏を祀っていると思わせる神社が出現した。

 恐らく、ここまで隠していたジャックの妖術だろう。

 そして、天からの激しい落雷がブルーとコンを襲う。

 正に天が怒っているかのような激しい落雷だ。


 しかし、相手が悪かった。

 ブルーはディバインシールドと鳴神で全ての攻撃を防いだ。

 それに加えて、鳴神とジャックの魔法が衝突した影響で、フィールド上が煙幕に包まれて視界不良になった。

 これではお互いに位置が把握できず、攻撃のしようがない。

 全方位に攻撃できるスキルが無ければの話だが。


「ブルー、フレイムフォース!」


 この攻撃でジャックがどこにいるのか見極める。

 ジャックにもブルーの居場所がバレる恐れはあるけど、問題ない。

 ちゃんと対策は用意してある。


 見えた!あそこだ!


「ブルー、プロミネンス、ファイアボール、プチサンダー」


 ブルーの放った攻撃はジャックを捉えた。

 それと同時にジャックもブルーの居場所を掴んだ。


「ジャック、天雷、旋風、炎熱の風」


 ジャックも今使える攻撃スキル全てを駆使してブルーを攻撃しようと試みたが、少し遅かった。

 これはタッグバトル。

 ジャックが相手しているのはブルーだけじゃない。

 コンもまたジャックの居場所を掴んでいた。


 結果的にコンの放った攻撃によってジャックのHPは0になった。


『ジャック DOWN』


 相手は強かったけど、これで2回戦突破だ。

 次は3回戦か。

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