第59話 タッグEトーナメント2回戦 莉菜&オリヴィア
『時間になりました。タッグEトーナメント2回戦 姫島莉菜&オリヴィア・ブラウン VS 稲嶺俊樹&久遠夏を開始します』
『バトルSTART』
「降臨せよ、エルナ」
「君臨せよ、カーラ」
「来い、アルラ」
「いくよ、ミリアナ」
2人の相手モンスターは両方とも人類種か。
獣人やエルフ、ドワーフではなさそう。
片方は装備的に魔法使いっぽいかな?
でも、人類種のどの種族なのかまではわからない。
もう1体に関しては見た感じだと何もわからないな。
「エルナ、シャインランス」
「カーラ、ダークウェーブ」
「アルラ、魔障壁の
「ミリアナ、メガファイア」
え?今、何が起きたの?
カーラとエルナの攻撃がどんどん弱くなって、最終的にアルラが展開した障壁に阻まれて、相手には届かなかった。
逆にミリアナの放ったメガファイアはどんどん威力を増しているように見えた。
2体とも上手く飛んで回避していたけど、どういうカラクリなんだ?
「ミリアナ、メガサンダー、メガシャイン、メガダーク、メガウォーター、メガアース」
火属性以外の魔法が徐々に威力を増加させながらエルナとカーラに襲いかかる。
しかし、空を縦横無尽に駆け回る2体にはかすりもしない。
「ならカーラ、霞連槍!」
「物理で来るか。アルラ、攻魔の詠、物理障壁の詠」
「ミリアナ、ファイアストーム」
霞連槍でアルラの展開した障壁を力技で突破しようと試みたが、途中でミリアナのファイアストームがカーラに直撃し、連続攻撃が途切れた。
1対1なら霞連槍で十分突破できるだろうが、これはタッグバトル。
相方からの妨害はあって当然。
この連携を崩さない限り、2人に勝利は無い。
ここまで見てもまだもう1体の種族がわからない。
片方は見た通りに魔法使いっぽい。
でも、もう1体はサポートに徹している。
人類種でサポートに特化したモンスター…。
何かいたと思うけど、思い出せない。
何だっけ?
「もしかして、あのモンスターって吟遊詩人なんじゃないか?」
「え?あ!それだよ、郁斗。さっきからずっと思い出せなくてさ」
「まあ、かなり珍しいからな。サポート能力は強いんだけど、単体じゃほとんど戦えないからな」
「でも、タッグバトルなら無類の強さを発揮するよね」
「だな」
莉菜とオリヴィアはどうするのかな?
ここまでバトルは膠着状態。
お互いに攻撃しても相手にかすりもしない。
でも、エルナとカーラの方が若干ではあるが、不利な状況だ。
エルナとカーラは攻撃を全て躱している。
逆にアルラとミリアナは完全にシャットアウトしている。
この差は大きい。
バトルが長引くにつれて精神的に大きく影響するだろう。
「郁斗は2人が勝てると思う?」
「んー、俺らの知ってる2人のままなら無理だな。でも…」
「でも、何?」
「1回戦で見せたエルナの隠し球。あれ次第ではワンチャンあるな」
「あのスキルでアルラを倒せればってこと?」
「いや、アルラの展開した障壁を突き破ってミリアナを倒せたらだ」
エルナとカーラは時間が経つにつれて、少しずつ押され始めた。
アルラがミリアナにはバフを、エルナとカーラにはデバフを付与しているからいつも通りに戦えない。
デバフならエルナがキュアヒールを使えば、解除できる。
しかし、クールタイムに突入している間に再びデバフを付与されてしまう。
それに一番の問題はアルラが展開している障壁を突破できないことだ。
この問題を解決しないことには勝ちの目はない。
「ミリアナ、メガサンダー、メガファイア、ファイアストーム」
「エルナ、スターフレイムショット、フレイムランス」
「カーラ、プチダーク、ダークボール」
「アルラ、魔障壁の詠」
ここまで似たような攻防が続いている。
エルナとカーラはアルラの展開する障壁を突破できない。
ミリアナはエルナとカーラに攻撃を当てられない。
当ててもプチヒールで即座に全回復してしまう。
どちらも決定打に欠ける状況だ。
このバトルを見ている人はどちらが勝ってもおかしくないと思っているだろう。
ただ、一部の人を除いて。
そう、ここまでの攻防からこのバトルの勝敗が見えている人もいる。
暫くの膠着状態の後、先に動いたのは莉菜とオリヴィアのコンビだった。
「カーラ、霞連槍!」
「無駄だ!アルラ、物理障壁の詠」
「ミリアナ、ファイアストーム!」
「今よ、エルナ!」
カーラがアルラの展開した障壁と突き破ろうと奮闘し始めたタイミングでミリアナのファイアストームが炸裂する。
今までは深くは踏み込まず、すぐに下がって回避していたが、今回は下がることなく、霞連槍による攻撃を続けた。
とうとう痺れを切らして無茶な攻めに出た。
傍から見れば、そう見えただろう。
実際は少し違う。
莉菜とオリヴィアは反撃するチャンスを窺っていたのだ。
ミリアナは攻撃スキル全てがクールタイムに突入しないようにちゃんとペース配分を考えている。
だから攻撃スキルが一つを除いて全てクールタイムに突入するタイミングを時間を掛けて見計らった。
一つ一つのスキルの大凡のクールタイムなどを全て計算し、自分たちが思い描いた反撃の時が来たので行動に移した。
エルナにはここまで相手に見せていないスキルがまだある。
このスキルは共に『静寂の魔巣』を攻略していた蓮と郁斗、オリヴィアの3人しか知らない。
だからこそ、奇襲には打って付けのスキル。
エルナはカーラがファイアストームに飲み込まれる直前に見当違いな方向へとシャインランスを放っていた。
あまりにも見当違いな方向へと放たれたシャインランスはアルラとミリアナの頭から無意識に消えていた。
まさかそれが本命の攻撃だとは思わないだろう。
突如としてミリアナはエルナの放ったであろうシャインランスに被弾する。
「え?」
何が起きたのかさっぱり理解できないミリアナ。
「カーラ、ダークウェーブ」
「しまった、間に合わない」
この隙を見逃しはしなかった。
カーラはすかさず、ダークウェーブで追撃をする。
そして、遂にアルラとミリアナにデバフや状態異常を付与することに成功する。
これが意味することは一つ。
「カーラ、ナイトメア!」
ナイトメアがアルラとミリアナを襲い掛かる。
『ミリアナ DOWN』
ここで攻撃の要であるミリアナが倒れた。
こうなってしまえば、形勢は決まったも同然。
「参った、降参だ」
『アルラ RESIGN』
最後は拍子抜けのあっさりとした決着。
だが、それも仕方ない。
吟遊詩人は一切、攻撃スキルを取得できない。
このままバトルを続けても勝つことは不可能。
「まさか、1回戦で見せた隠し玉を使わずに勝つとはな」
「ロックオンのスキルってああいう使い方もあるんだ」
「初見であれを防ぐのは無理だな。初見殺しすぎるだろ、あれ」
これほどの強敵とのバトルでエルナは1回戦で見せた隠し球を使わなかった。
もしかしたら1回戦で見せたのはわざとじゃ…。
2回戦以降の相手に警戒させるだけ警戒させて、使わずに勝つ。
これは次に戦う相手からすると嫌だろうな。
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