第57話 タッグEトーナメント1回戦 莉菜&オリヴィア
1回戦は無事に勝利できた。
次は2回戦の前に莉菜とオリヴィアの1回戦がある。
決勝戦で当たるかもしれない相手だからちゃんと偵察をしておきたい。
『時間になりました。タッグEトーナメント1回戦 姫島莉菜&オリヴィア・ブラウン VS 谷川駿&戸川純を開始します』
『バトルSTART』
「降臨せよ、エルナ」
「君臨せよ、カーラ」
「立ち塞がれ、ガーディアン」
「貫け、トリトン」
莉菜とオリヴィアの対戦相手のモンスターはガーディアンという名前のゴーレムとトリトンという名前のトリケラトプスか。
俺たちの時と一緒で相手は明確な役割分担をしていると思う。
ただ、俺たちの時は前衛と後衛だったけど、莉菜とオリヴィアの相手は攻撃と防御という分担をしている気がする。
ゴーレムが攻撃よりも防御に特化している。
それに加えて、素早さが低いから近づいてきた相手にカウンター狙いとワンパターンな戦いしかできない。
それでも使うプレイヤー次第では大化けするモンスターだ。
相手プレイヤーの技量次第では莉菜とオリヴィアが1回戦敗退もあり得るかも。
トリケラトプスは言うまでもなく、一般種最強角の恐竜モンスター。
あの三本の角は特に警戒が必要だ。
エルナとカーラは常に空を飛んでいるけど、一度地上に落とされたらヤバい。
攻撃と防御、両方がハイレベルで備わっているのがトリケラトプス。
空中にいる敵の対策も当然している筈だ。
それに上手く対処できるかだな。
「カーラ、ダークウェーブ」
「ガーディアン、城壁召喚」
まずはカーラが仕掛けた。
ダークウェーブで2体まとめてデバフと状態異常を付与しようと考えたのだろうけど、ガーディアンが地面から城壁を召喚してあっさりと防がれた。
「トリトン、角ミサイル」
「エルナ、撃ち落として」
その直後、トリトンが自身の角をミサイルみたいに発射した。
それをエルナは正確無比な射撃で撃ち落とす。
ちなみにトリトンの角は発射した直後には何事もなかったかのように顕在だった。
エルナの射撃が上手くなってる。
あれから日本全国のEランクダンジョンを巡った成果かな。
前みたいにノーコンじゃないってことか。
まぐれ当たりじゃなければ。
「さすがだな。まずはその翼を封じるとしますか。ガーディアン、大地の怒り」
「!これは…」
突然、エルナとカーラが空から落ちてきた。
一体、ガーディアンが使ったスキルは何なんだ?
「あれってもしかして…」
「郁斗は何か知ってるの?」
隣で莉菜とオリヴィアの1回戦を偵察している郁斗にはあのスキルについて心当たりでもあるのか。
何やら神妙な顔をしている。
「たぶんだけど、自分に有利になるフィールドを展開する類のスキルじゃないか?それも時間制限付き」
「それって一部の上位プレイヤーが使うフィールド展開スキルってこと!?え、でも時間制限付き?何で?」
「Eランクのモンスターじゃあんな強力なスキル、普通じゃ使えないよ。何かしらのデメリットがある。一番ありがちなのは時間制限」
「なるほど」
さすがはゲーマー。
その辺りのことは俺よりも詳しい。
俺がこのゲームのこと調べなさすぎなのかもしれないけど。
でも、翼をもがれたも同然の状態。
2人の勝ち筋は空中から一方的に攻撃だと思っていたからこれは厳しいかな。
地上だとトリトンが猛威を振るう。
「カーラ、霞連槍」
「エルナ、スターフレイムショット」
「ガーディアン、鉄壁!」
カーラの攻撃は明らかに闇属性ではない。
つまり、直接防いでもデバフや状態異常を付与されることはないと判断したか。
ガーディアンはカーラとエルナの攻撃を直接、防御スキルを使って防ぐ構えだ。
あ、それは悪手でしょ。
まあ、何も知らない相手からすると最善なのかな。
カーラとエルナの攻撃は完全にガーディアンに防がれたけど、オリヴィアの思惑通りだった。
莉菜も当然、それに気づいている。
だから遠距離から高威力の攻撃スキルで且つ全体攻撃のスターフレイムショットを上に向かって放っている。
そうすることで、ガーディアンに直接防ぐ系の防御スキルを使わせたのだ。
先ほどダークウェーブを防いだ城壁召喚ではスターフレイムショットを防げぎ切れない。
あの類のスキルは全体攻撃との相性が悪い。
それに今回は上から攻撃が飛んでくる。
召喚した城壁の上をすり抜けるのは容易に想像できる。
ならどうするべきか。
トリトンの前に立ち塞がり、攻撃を一心に引き受けるしかない。
普通に考えたら完璧な立ち回りだよ。
でも、カーラの持つ槍って闇属性付与のスキルを持っているから。
本来なら水属性の霞連槍も闇属性が付与されている。
正面から受けたら最後だよ。
デバフや状態異常を付与されてナイトメアで削り倒されるのがオチ。
案の定、そうなった。
「はあ、何でデバフや状態異常が付与されてるんだよ!」
「やられたな。闇属性付与のスキル持ちか。新入生代表トーナメントでの戦いでも持っている可能性は十分にあった。その可能性を失念していたな」
「カーラ、ナイトメア」
こうなればナイトメアは必中の攻撃スキル。
防御するにはナイトメアを使われたタイミングでコンマ数秒のズレもなく、防御スキルを発動するしかない。
仮にそれができたとしても、毎回それをするのは厳しいだろう。
スキルにはクールタイムがある。
とにかく攻撃して相手に防御スキルを使わせる。
そして全ての防御スキルがクールタイムに突入したタイミングでナイトメアを放つ。
これで相手の防御は崩せる。
「厄介なガーディアンは時間の問題ね。オリヴィア、一気にいくわよ」
「はい!」
「エルナ、シャインランス」
「カーラ、プチダーク、ダークボール」
「まだだ!ガーディアン、城壁召喚、城壁開放」
「トリトン、トライデントホーン!」
ガーディアンは再び城壁を召喚してエルナとカーラの攻撃を見事に防いだ。
それだけでなく、なんと城壁が真ん中で真っ二つになって、左右に開いた。
さながら門が開くかのように。
そして、そこから三本の角を輝かせたトリトンが猛烈な勢いでエルナとカーラ目掛けて突っ込む。
これはいくらエルナとカーラでも防げない。
もし直撃したら一撃死もあり得るんじゃ…。
「エルナ、プチシャイン、プチファイファ、フレイムランス、ファイアボール」
「カーラ、闇刺突」
エルナはとにかく攻撃を当てて勢いを弱めようと試みる。
カーラは闇刺突で完全に迎え撃つ構えだ。
エルナの攻撃に一切怯むことなく、トリトンは突っ込む。
そしてエルナの攻撃がやんだタイミングでカーラが動く。
え、もしかして正面から迎え撃つ気?
それはさすがに無茶なんじゃ。
「なるほど、そういうことか。正に肉を切らせて骨を断つだな」
何やら郁斗は2人の作戦を理解しているみたいだ。
肉を切らせて骨を断つ?
つまり、カーラがダメージを負うのと引き換えにトリトンを倒すってこと?
でも、どうやって?
この後、すぐに誰もが予想だにしなかった展開となった。
いや、ただ1人だけこの展開を読み切っていた男がいた。
『ガーディアン DOWN』
気づいたらこのウインドウが表示されていた。
城壁を開放した時はまだHPが4割近く残っていた筈。
それがトリトンがカーラと衝突している間に0まで削られていた。
状態異常のスリップダメージでもここまで早くHPが0になることはない。
なら、何故か。
トリトンとカーラの攻防を他所にエルナが誰にも気づかれることなく、ガーディアンの残りHPを吹き飛ばしたのだ。
カーラもトリトンとの攻防で大ダメージは負ったけど、エルナのプチヒールで即座に全回復。
肉を切らせて骨を断つ?
いやいや、2人がやったのは肉を切らせず骨を断つだ。
この一点だけは郁斗の予想を上回っていた。
ガーディアンがDOWNしたことで大地の怒りは解除されて、エルナとカーラは再び空へと舞い上がった。
こうなったらもうエルナとカーラの独壇場だった。
トリトンも奮闘したが、健闘空しく散った。
『トリトン DOWN』
やっぱり2人とも強いな。
それにエルナがどうやってガーディアンを仕留めたのか見れなかった。
カーラとトリトンの攻防に注目が集まっているのを利用された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます