第46話 セーブポイント

 スケルトンナイトとのバトルには色々と気になることがあった。

 攻撃に闇属性が付与されていた。

 少なくとも闇のオーラを纏ってからは付与されていたと思う。

 それに魔法適正を持たないスケルトンナイトが魔法らしきものを使った。

 あの手の形をした闇が迫ってくるのは魔法なんじゃ…。

 もし、あれが魔法ならこれから出現するモンスターも新たに魔法適正を得て、魔法を使ってくる可能性があるということになる。

 でも、これで納得がいった。

 ここのモンスターは倒しても捕まえることができない理由が。

 ここで出現するモンスターは普通では得られない力を持っていると考えた方が良さそうかな。


 その後、すぐにフェーズ5でウルフとバトルをした。

 ウルフもかなり強化されていたが、今のブルーの敵ではなかった。

 そこまで苦戦はせずに勝利できた。

 ウルフは魔法らしきものを使ってこなかった。

 全てのモンスターが魔法らしきものを使えるように強化されている訳じゃないのか。


 本来ならこの後、フェーズ6に移行しますかと表示されるところだが、全く違う表示が目の前のウインドウで出ている。


『フェーズ5 勝利を確認。 ここでセーブしますか? はい いいえ』


 フェーズ5を突破した所でセーブしますかと表示された。

 ずっと連戦を強いられると思っていたけど、実際にはセーブポイントが用意されているのか。

 これはかなり助かるな。

 セーブポイントが出現するタイミングはまだわからないけど、恐らくフェーズを5つ進めればかな。

 一先ずはここでセーブしようかな。

「はい」を選択したら続けるか中断するかの選択肢が表示された。

 まだ時間に余裕があるので、続けるを選択した。


『フェーズ6 ウインドウルフとのバトルを始めます』


 こうしてフェーズ6ではウインドウルフ。

 フェーズ7ではファイアウルフ。

 フェーズ8ではウォーターウルフ。

 フェーズ9ではアースウルフ。

 フェーズ10ではダークウルフ。

 フェーズ11ではライトウルフとバトルした。

 属性持ちのウルフもそれぞれ強化されていたし、使える魔法も増えていた。

 まさか属性持ちのウルフと魔法の撃ち合いをすることになるとは思わなかった。

 それでもウルフは本来集団でこそ力を発揮するモンスター。

 単体ではそこまで脅威ではなかった。

 フェーズ10終了時にセーブだけして、フェーズ12、ハイウルフとのバトルに望む。


『フェーズ12 ハイウルフとのバトルを始めます』


 今までバトルしたウルフに共通していたのはとにかく素早い。

 速さ勝負ではまず勝てない。

 それなら相手の足を止めて、そこを攻撃すればいい。


 バトル開始と同時にハイウルフはブルー目掛けて一直線に走ってくる。

 先ほどまでバトルしていたウルフたちよりも更に速い。

 でもこれは想定の範囲内。

 とにかく、ギリギリまで引きつける。

 ハイウルフがブルーへ攻撃する体勢に入った。

 四足歩行じゃ、攻撃の時だけは足が止まるでしょ。

 ここを狙い撃つ。


「ブルー、フレイムフォース」


 ここは全方位に攻撃できるフレイムフォースで確実にブルーの攻撃を当てる。

 他の攻撃スキルだと躱される可能性があったからだ。

 現にハイウルフは回避行動を取ろうとしていた。

 フレイムフォースが全方位攻撃でなければ、躱されていたかもしれない。

 でも、一度攻撃を当ててハイウルフの体勢を崩せたらこっちのもの。


「迅雷の一撃!」


 ここは速さ重視。

 相手に行動する時間を与えない。

 ブルーの持つ最速の攻撃スキルでの追撃が見事に決まる。

 素早さの高いハイウルフに自由を与えてはダメだ。

 このまま嵌める。


「プロミネンス、ファイアボール、プチサンダー、鳴神、プロミネンスアタック!」


 ここは持てる攻撃スキル全てを導入して倒しにいく。

 それでもハイウルフを倒しきれなかった。

 まだHPは3割ほど残っている。

 これでブルーの持つ攻撃スキルは全てクールタイムに突入した。

 それが明けるまで時間を稼ぐ必要がある。


 ハイウルフは迂闊に攻撃を仕掛ければ、手痛い反撃をくらうと学んだのか先ほどのように攻めてこない。

 こちらとしてはありがたいけど、何か不気味だ。

 悪いことが起きる前兆のような感じがする。


 そして良くも悪くも俺の予感は当たっていたみたいだ。

 完全に間合いの外にも関わらず、ハイウルフの攻撃が届いた。

 ノーモーションだったので、ブルーも反応すらできない。

 何が起きたのかわかっているのは、ハイウルフがブルーに攻撃したことだけ。


 一体、何が……。

 何かあった筈だ。

 完全にノーモーションで不可視の攻撃なんてある筈ない。

 何か、きっとある筈…なんだ。

 わからない。

 どうやってブルーを攻撃したのか。


 それからもノーモーションで且つ見えない攻撃がブルーを襲う。

 ダメージはそこまでだけど、何が起きているのかさっぱりわからない。

 種がわからないと無駄にダメージを負ってしまう。


 見極めろ、俺。

 種もカラクリも何もない筈ないんだ。

 何かある筈なんだ。

 見るだけじゃわからない何かがある筈なんだ。


 見るだけじゃわからない何か…。

 ……。

 もしかして、


「ブルー、プロミネンス」


 もしかしたらこれでわかるかもしれない。

 ハイウルフの使っている謎の攻撃の正体が。

 噂程度でしか聞いたことなかったから頭から抜け落ちていたけど、あれの可能性ならあるんじゃ。

 ここのモンスターは何故か魔法適正を得ている可能性がある。

 なら、あの魔法スキルを使えてもおかしくない。

 もし、あの魔法スキルならブルーのダメージが小さいのにも納得がいく。


 ブルーとハイウルフの中間地点の何もない場所でプロミネンスで何かと衝突した。

 これで確信した。

 ハイウルフが使っているのは無属性魔法だ。

 使い手が少なく、威力、速度ともに低く使い勝手があまり良くないと言われている無属性魔法に間違いない。

 無属性魔法を使うなら普通に攻撃した方がいいとまで言われている。

 今では一部の酔狂なプレイヤーが奇襲目的で使うくらいしか用途がないスキルだ。


 種がわかれば後は簡単。

 無属性魔法はその速度の遅さと威力の低さ故に使えない魔法とされている。

 つまり、弱点は明白。

 とにかく、動き回ればいい。


 無属性魔法を攻略した後は他のウルフ同様に時間こそ掛かったが、勝利できた。

 やはり、自分たちよりも素早い相手と戦う時を想定した戦略が一つ、二つくらいないと厳しいな。

 これからはそれも考えていかないと。

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