第44話 追憶の回廊
市川先生に勧められたランク変動型ダンジョン『追憶の回廊』。
ここにはきっと何かがある。
それが何かはさっぱり見当もつかないけど、今は深く考えない。
まずは『追憶の回廊』を攻略する。
それができないとここまで来た意味がない。
正直、ここの情報は調べてもあまり無かった。
どれもこれも曖昧で情報が錯綜している感じだった。
どの情報が正しいのかわからなかったので、自分の目で見て確かめることにした。
『追憶の回廊』の中は真っ白の空間になっていた。
そこにはモンスターも何もいない。
どういうことだろうと疑問に思っていたら俺の目の前にウインドウが表示された。
『追憶の回廊に挑戦しますか? はい いいえ』
俺は「はい」を選択した。
すると再び、今度は違うウインドウが表示される。
『フェーズ1 ゴブリンとのバトルを始めます』
え?ゴブリンとのバトル?
どういうこと?
色々と現状を理解出来ずにいると1体のゴブリンが出現した。
特に武器とかは持っていないように見える。
モンスターを召喚するように催促するウインドウが表示されたので、慌てて俺はブルーを召喚した。
このダンジョンはモンスターを1体しか召喚できないという縛りがある。
その為、
とりあえず、ゴブリンとバトルすればいいのかな。
他にモンスターはいなそうだし。
でも、フェーズ1ってことはフェーズ2があるよな、普通。
今、ごちゃごちゃ考えても仕方ない。
流れに身を任せよう。
「ブルー、ゴブリンとバトルだ!プロミネンス、ファイアボール」
正直、相手がゴブリンだから油断していた。
今の俺たちなら余裕で勝てると。
でも、今この場に出現したゴブリンはそんなに甘くなかった。
プロミネンスで倒せると高を括っていたらあっさりと躱されてカウンターの一撃をもらった。
しかもたった一撃でブルーのHPが3割近く削れた。
ゴブリンってこんなに強かったっけ?
いや、そんなことよりゴブリンとのバトルをどうにかしないと。
「ブルー、プロミネンスアタック、鳴神!」
更なる追撃をブルーに仕掛けるゴブリンに対してギリギリまで攻撃を引き付けた上で回避。
そこからプロミネンスアタック。
怯んだところを鳴神で追撃。
これでもまだゴブリンのHPは僅かに残っていた。
そこはブルーが起点を利かしてプチサンダーで削り切る。
『フェーズ1 勝利を確認』
『フェーズ2に移行しますか? はい いいえ』
今度はフェーズ2に移行するかどうか選択するウインドウが表示された。
まあ、何となくわかってはいたけど、こんな感じに進むんだな。
とりあえず、「はい」を選択っと。
『フェーズ2 ゴブリンメイジとのバトルを始めます』
ゴブリンの次はゴブリンメイジ。
これは『ゴブリンの集落』と同じだな。
もしかして過去にバトルしたモンスターと順番にバトルしてるのか。
下調べした時に見つけた情報にそんなようなものもあった気がする。
ゴブリンメイジは出現すると同時にプチファイアをブルー目掛けて放つ。
これを避けるではなく、ブルーは防ぐを選択した。
ブルーの展開したマジックシールドは完璧にプチファイアを防ぎきった。
今度はこっちが反撃する番だ。
「ブルー、鳴神!プチサンダー」
二つの魔法はゴブリンメイジに直撃したが、魔法防御力が高いのか半分ほどしかHPが減っていない。
強いけど、Eランクダンジョンでバトルしてきたモンスターに比べたら全然弱い。
とか思ってたらプチファイアなど比べものにならない程大きい炎の塊をブルーに放ってきた。
ゴブリンメイジってプチファイア以外の魔法が使えるの!?
しかも一撃でブルーのマジックシールドが割られた。
でも、魔法しか使えないゴブリンメイジはクールタイムが明けるまで何もできない。
今が仕留めるチャンス。
「ブルー、距離を詰めてプロミネンスアタック!」
俺の考えは甘かったとすぐに思い知らされた。
ゴブリンメイジは竜巻を巻き起こした。
これは風魔法のトルネード。
そこにウインドカッターも飛んできた。
それを巧みに躱し、距離を詰めるブルー。
これはゴブリンメイジにとっては予想外だったのか驚きの声を上げている。
しかし、そんなこと関係ないと言わんばかりにブルーはプロミネンスアタックで攻撃する。
近接戦闘が全くできないゴブリンメイジにとってこの間合いは不利どころの話じゃない。
明らかに距離を取ろうとしている。
今だ!
「ブルー、鳴神!」
距離を取ろうとし、攻撃と防御の意識が薄れた瞬間を狙って鳴神を放ち、ゴブリンメイジのHPを削り切ることに成功する。
やっぱりかなり強化されている。
『追憶の回廊』はランク変動型ダンジョンだからEランク相当まで強化されているってことか。
相手がどんなモンスターだろうと油断はできないな。
俺たちの知らない未知の攻撃手段を持っているかもしれない。
それからフェーズ3ではゾンビ、フェーズ4ではグールとバトルした。
ゾンビとグール共に魔法こそ使わかなったが、ステータスが全般的に強化されており、かなりの苦戦を強いられた。
ただ、『嘆きの墓地』でバトルした時と変わらず、火属性が弱点だったのもあって何とかなった。
それでも苦戦を強いられたのは、ブルーの攻撃スキルの少なさが原因だ。
近接戦闘はプロミネンスアタック、遠距離戦闘はプロミネンス、ファイアボール、プチサンダー、鳴神。
全部で五つしかない。
スライムは通常攻撃ではまともにダメージが与えられないので、スキルの数でカバーしないといけない。
それなのに攻撃スキル五つというのは少なすぎる。
タッグEトーナメントまでにこの弱点をどうにか克服しないとヤバい。
それに『追憶の回廊』攻略もかなり厳しい状況だ。
必然的に連戦が強いられるから全ての攻撃スキルがクールタイムに突入したままバトルが開始することもある。
スキルのクールタイムが明けるまで待とうとすれば、ウインドウに警告が表示された。
『次のバトルを開始しない場合、リタイアとなり再びフェーズ1からとなりますが、よろしいですか? はい いいえ』
恐らくゾンビ、グールとバトルしたから次はスケルトンナイトとのバトルになると思う。
このままじゃ厳しいと思ったから一度、リタイアした。
ショップでスキルの書を購入するなりして、どうにかしないとこれ以上の連戦は厳しい。
しかもHPも一切回復せずに次のバトルが始まる。
ブルーはプチヒールが使えるけど、回復魔法が使えないモンスターはもっと厳しい状況に追いやられているんだろうな。
それを考えるとまだマシなのかもしれないけど、今のままだとどの道攻略は厳しい。
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