第39話 VSドライアド①

 何とか女王蜘蛛クイーンスパイダーに勝てた。

 みんなが力を合わせて頑張ってくれたおかげだ。

 これで『静寂の魔巣』の全てのエリアを攻略したことになる。

 残すはこのダンジョンのボスモンスターとのバトルのみ。

『静寂の魔巣』のボスモンスターはドライアド。

 普通に考えたらエリアボスの女王蜘蛛クイーンスパイダーよりも強いと考えられるよな。

 いろいろと調べてはみたけど、あまり情報は無かった。


「ふー、ようやくボス戦か」


「そうね。でも、ドライアドに関する情報が無いのよね。蓮たちは何か知らない?」


「ドライアドは妖精種のモンスターですから魔法メインなのではないでしょうか?」


「俺もオリヴィアに同感かな。エルナみたいな遠距離特化だと思う」


「オリヴィアと蓮の言う通り、妖精種のモンスターは魔法メインの遠距離特化が多いイメージあるよな」


「そしたらここまでのエリアボスが使ってきた属性的に風魔法と土魔法を使う可能性が高いわね」


 4人で話し合った結果、魔法を使った遠距離特化タイプじゃないかとなった。

 こればかりは実際にバトルしてみないとわからないので、これ以上の話し合いを辞めてボスに挑戦することにした。


 目の前に現れたウインドウでドライアドのいるボス部屋への移動を選択する。

 女王蜘蛛クイーンスパイダーのいたエリアボスの部屋から一瞬でドライアドのいるボス部屋に転移した。


「あななたちね。私の森を荒らしているのわ。許さないわ、絶対に」


 突如としてドライアドと思われる女性が俺たちに向かって話し出した。

 しかも相当、怒ってる。

 森を荒らした?

 それってここまで来るのにいろんなモンスターと戦ってきたことを言ってる?

 もしそうならこれはゲームの演出ってこと?


 ドライアドは地面と平行になるように右腕をスっと振り上げると、突如として地面から樹の根のようなものがブルーたちに襲いかかる。

 空を飛んで回避しようとしていたエルナとカーラにはブルーとコン以上の数が襲いかかり、まともに空を飛ばせてもらえない。

 完全に地上に釘付けにされている。

 そして、ドライアドの攻撃とほぼ同時にコンが陽炎と蜃気楼のコンボを発動させている。

 それにも関わらず、的確にこちらを攻撃してくる。

 普通なら幻覚に囚われて、全くの見当違いな場所に攻撃がいく筈。


「コン、稲荷狐の祟り、稲荷狐の祈り」


「カーラ、ナイトメア」


「ブルー、鳴神」


「エルナ、ロックオン、フレイムランス」


 こちらのやることは変わらない。

 先ずはコンがドライアドにデバフを、こちらにバフを付与する。

 そこをすかさずカーラのナイトメアで反撃した所までは良かった。

 ブルーの攻撃は無力化されて、エルナの攻撃は届かなかった。

 前上から降り注ぐ落雷に対して、自分の体から地面に根を張ることで、全てドライアドを通じて地面に流れていった。

 エルナの攻撃は無数にある樹の根であっさりと叩き落とした。


「ならスピード勝負よ!シャインランス!」


 叩き落とされないくらいに早い攻撃ならどうだと言わんばかりにエルナにシャインランスを指示。

 光魔法はとにかく早い。

 その分、威力は低いから当たってもダメージはあまり期待できないかな。

 ドライアドは俺たちの想像の上をいった。

 無数にある樹の根を掻い潜り、ドライアドに向かって一直線に飛んでいったシャインランスをまるでダンスでも踊っているかのように躱した。

 一連の動きがあまりにも流麗で一瞬見とれてしまった。

 魔法で攻撃してもこの距離だと躱される。

 距離を詰めたくても無数にあ樹の根からの攻撃を躱しながらとなると厳しい。

 どうすればいい…。


 どうしたらいいのかわからずにいた時、カーラがダークウェーブで反撃した。

 しかし、樹の根がひとまとめになってそれを完全にシャットアウト。

 その瞬間、樹の根による猛攻が無くなったことでエルナとカーラは空高く飛び上がることに成功する。

 ドライアドはエルナとカーラを再び地上に釘付けにしようと樹の根を巧みに使い攻撃するが、その悉くを回避している。

 空中なら立体的に動ける分、あの2体なら躱すのも容易ということか。

 それに空中へとドライアドの意識がいっているので、地上への攻撃が少なくなった。

 今なら通る。


「ブルー、プロミネンス、プチサンダー、鳴神」


「コン、狐火、鬼火」


 今度は完璧に入った。

 プチサンダーや鳴神もさっき見せた方法で防ぐ暇も無かった筈だ。

 その証拠にドライアドのHPがバトル開始時に比べると1割ほど減っている。

 残り9割か。

 まだまだ先は長いな。

 でも、こちらの攻撃は通る。

 ちゃんとダメージも与えられる。

 時間はかかるけど、倒せない相手じゃない。

 いける!


「この…忌々しい!どれだけ私の森を荒らせば気が済むの。誰の許しを得て、私の森を侵犯する。楽に死ねると思わないで!」


 俺たちへ怒りをぶつけてくるけど、これって本当にゲームの演出なのかな?

 この迫力、かなりリアリティがあるけど…。

 まさにドライアドの目が訴えかけてくる。

 おまえたちは絶対に許さないと。


 ドライアドが今度は地面と平行になるように左腕をスっと振り上げると、地面から樹が生えてきた。

 生えてきた樹は1メートルくらいの高さで成長を止めて、姿形を変え始めた。

 すると、さっきまで樹だったものはドライアドと全く同じ外見に変化した。


「これってコンの影分身と同類のスキルか?」


 郁斗がボソッと呟いた通り、コンの影分身と同類のスキルなら攻撃を一度でも受ければ消える筈。

 俺と同じ考えに至ったのか莉菜とエルナが動いた。


「エルナ、スターフレイムショット」


 スターフレイムショットは必中効果を持つ全体攻撃。

 ドライアド本体にも攻撃が届くが、本命は新たに出現した5体のドライアドの分身体の方。

 スターフレイムショットは樹の根を搔い潜って、見事に的中したが、新たに出現した5体のドライアドの分身体は顕在だった。

 これが表すことは一つだけ。

 コンの影分身とは根本的に違って、攻撃を受けても消えない。

 しかし、攻撃を受けたことで5体のドライアドの分身体にHPバーが表示された。

 エルナの攻撃で3割ほど削れているからドライアド本体ほどステータスは高くないと考えていいだろう。

 それでもかなりヤバい状況に変わりはない。

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