第40話 VSドライアド②

「コン、稲荷狐の祟り」


「カーラ、ナイトメア」


 ドライアドの分身体が5体出現したことでコンは再びデバフを付与する。

 ドライアド本体には意味ないが、分身体には効果がある。

 そこからのナイトメア。

 未だに分身体からの攻撃はない。

 なるべく早く倒して、ドライアド本体のみに集中したい。

 だけど、そこまで上手くはいかない。


 空中にいるエルナとカーラにドライアド本体から風魔法、ウインドカッターやウインドボール、更には範囲攻撃のトルネードまでもが襲い掛かる。。

 ただ、分身体は一切攻撃してこない。

 エルナとカーラは攻撃を凌ぐので手一杯の状況。

 この状況を打開できるのは地上組だけ。


「ブルー、鳴神」


「コン、狐火、鬼火」


 ここは少しでもドライアド本体にダメージを与えようとしたが、分身体が樹の根を操って防いだ。

 あの分身体は攻撃面ではなく、防御面をカバーしているのか。

 それに防御に一切、意識を割かなくて良くなったこともあり、ドライアド本体は攻撃に集中できている。

 それでも分身体が防御に樹の根を使ってしまっているので、空中にいるエルナとカーラへの攻撃手段が魔法しかない。

 それにブルーとコンに対して攻撃を仕掛ける余力がない。

 実際にブルーとコンには一切の攻撃が飛んできていない。

 だからといって、こちらの攻撃がドライアド本体に通る訳でもない。

 ある意味、膠着状態に陥っている。


 この膠着状態を打ち破るには、ブルーとコンで樹の根による防御を掻い潜って分身体を倒すしかない。

 その為には今までと同じ攻め方じゃダメだ。

 攻め方を変える。


「郁斗、攻め方を変えよう!距離を詰める」


「距離を詰める?…そういうことか!上手くいくかわからないけど、やってみる価値はあるな」


「ブルー、距離を詰めてプロミネンスアタック!」


「コン、二尾の焔!」


 ブルーとコンは今まで距離を取って魔法で攻撃していたが、ここは敢えて近接戦に切り替える。

 ドライアドの戦い方は相手を近づけさせないもの。

 今は特に厄介なエルナとカーラにドライアド本体の意識が割かれている。

 でも、距離を詰めようと動き出せば、ブルーとコンにも意識を割かないといけないと思う。

 ただ、この作戦は分身体が攻撃できず、防御しかできないことが前提となっている。

 防御しかできないなら遠距離から攻撃でもしない限り、樹の根でこちらの攻撃が防がれることはない。

 防ぐ前に攻撃が決まるか、ドライアド本体がブルーとコンに対処しようと動くかのどちらかになる筈。

 まだ見ぬ未知の何かが無ければだけど。


「くっ、この!…」


 ブルーとコンが自身に接近していることに気づいたドライアド本体は自ら樹の根を操作して迎撃を試みる。

 これで確定した。

 分身体は一切、攻撃ができない。

 もし、分身体が攻撃できるならこの局面でドライアド本体が直接迎撃はしない。

 分身体が迎撃している間に自分は上空にいるエルナとカーラを攻撃できるのだから。

 それにこれ程までに必死に迎撃するとなると近接戦に持ち込まれたくないと自分から自白しているようなもの。

 上空にいるエルナとカーラもそれを理解したのか、2体の動きが変わった。

 2体とも上空から魔法で攻撃を始めた。

 今までなら分身体が樹の根を操作して防いでいたが、今回は防がれなった。

 恐らく、ドライアド本体が樹の根を操作していると分身体は何もできないのだろう。

 慌ててブルーとコンを魔法で迎撃する方針に切り替えて、分身体に樹の根を操作させて上空からの攻撃を防ぐ。


「エルナはそのまま上空から攻撃を続けて!」


「カーラ、突っ込んでください!」


「ブルー、マジックシールドで防ぐんだ」


「コン、できる限り躱せ」


 それなら上空からの攻撃はエルナのみにして、カーラは上空から距離を詰めて近接戦に持ち込む。

 ブルーとコンは基本的に防御に徹して、余裕があれば反撃。

 余裕を与えたら反撃するぞ!という意思を示すことが大事だ。

 反撃してこないと思われたら再び、上空にいるエルナとカーラに風魔法による攻撃が行われる。

 そうすれば、分身体による樹の根を使った防御は上空からの攻撃を防ぐことに使われる。

 あとは、防御ががら空きになったドライアド本体に攻撃するだけ。


 ドライアド本体も風魔法による反撃を試みていたが、ペース配分を無視した影響から全ての魔法スキルがクールタイムに入った。

 この瞬間、カーラが自身の槍の間合いまで接近することに成功する。


「カーラ、霞連槍!」


 ドライアド本体の真上から降り注ぐ槍。

 本来ならありえない光景だけど、空を自由に飛べるモンスターならではの攻撃。

 ここまで接近すれば俺たちの勝ちだ。

 ドライアド本体が樹の根を使ってどうにかしようとすれば、ブルーとコンの攻撃が通る。


 ドライアド本体の選択は俺の、いや俺たちの予想外のものだった。

 風属性の範囲攻撃魔法、トルネードで分身体をも巻き込み攻撃をしてきた。

 至近距離まで接近しているカーラ、比較的近距離にいるブルーとコンが巻き込まれた。

 唯一、エルナだけは上空から攻撃していたので、範囲外にいて、未だに攻撃を継続しているが、分身体が操る樹の根に阻まれている。


 このゲームはフレンドリーファイアが無効とはいえ、ボスモンスターが自身の分身体を巻き込んで攻撃してくるなんて、考えもしなかった。

 でも、考え方次第ではそれだけ追い込んだということだ。


「カーラ、ダークウェーブ」


「ブルー、プロミネンス、プチサンダー、鳴神」


「コン、狐火、鬼火」


 上空に一度退避したカーラはダークウェーブを使って、樹の根を一箇所に集中させて敢えて防がせる。

 防御がカーラとエルナの攻撃を防ぐ為に上に向いた瞬間に横撃。

 今までもそうだったけど、やはり複数の方向から同時に攻撃を仕掛けると防ぐのは無理のようだ。

 ただ、仕掛けるにしてもドライアド本体に脅威と思わせないといけない。

 ブルーとコン単体では力不足が否めないが、エルナとカーラは単体でも脅威と思われている。

 そこを敢えて2体掛りで上から攻める。

 そしたら防御は上に集中する。

 それにエルナとカーラには必中効果の付与されている攻撃手段がある。

 今みたいに場所が固定されているなら、樹の根による防御壁を躱して攻撃できる。


「エルナ、スターフレイムショット」


「カーラ、ナイトメア」


 ブルーとコンの横撃、エルナのスターフレイムショットとカーラのナイトメア。

 これだけの攻撃を受ければボスモンスターといはいえ、相当なダメージになる。

 遂にドライアド本体のHPが5割を下回り、分身体のHPも残り3割まで減った。


 それにしても分身体のHPが思ってたより減っていない。

 もしかして、HPが減れば減るほど防御力が上がるとか?

 仮にそうだったとして何の意味がある?


 ここで突然、5体いる分身体の内、1体が動く。

 何かに祈るように両手を組んだ。

 すると、悪夢のようなことが起きた。

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