第30話 蜂の魔巣⑤

 ヤバい。

 このままじゃカーラが倒される。

 ブルーのプチヒールはまだクールタイム中。

 どうしたら…。


「エルナ、カーラにキュアヒール!」


 あ、そうだ。

 エルナにはキュアヒールがあったんだ。

 これでカーラの状態異常は解除できたけど、HPは回復できてない。

 それに女王雀蜂クイーンホーネットはこのまま追撃してカーラをここで確実に仕留める気だ。

 それだけは阻止しないと!


「ブルー、プロミネンスアタック!」


「コン、二尾の焔」


 女王雀蜂クイーンホーネットはあっさりと引いてブルーとコンの攻撃を躱した。

 これでカーラは首の皮一枚繋がったけど、まだ油断できない。

 再び、遠距離からカーラを狙ってくる筈だ。

 また、巨大竜巻で攻撃されたらこちらは致命傷を負う。

 それは女王雀蜂クイーンホーネットもわかっていると思うけど、使ってこない。

 恐らく、まだクールタイムが明けてないのだ。


 キュイィィーーーーーーーー!!!!



 女王雀蜂クイーンホーネットが大きな声で叫ぶ。

 ボスが叫ぶのは何かしらの前兆ってお決まりの流れだよな。

 もしかしてまた取り巻きの殺戮蜂キラービー雀蜂ホーネットが復活するとかじゃないよな?

 さすがにそれはご遠慮願いたい。


 暫く時間が経ったけど、特に何も変化は起きない。

 逆に不気味な感じがした。

 何かを見落としているような、そんな気さえもした。


「エルナ、ロックオン、フレイムランス!」


  ここで痺れを切らした?莉菜がエルナに攻撃を指示。

 結局のところダメージを与えないと勝てない。

 今は攻撃あるのみか。

 また誘いの可能性もあるんじゃ…。

 それでさっきカーラが危うく倒されかけた。


「みんな、今は攻撃に集中!もうすぐプチヒールのクールタイムが明ける。そしたらカーラも回復できる!」


「おし、やるぞコン!狐火」


「カーラ、私たちも。プチダーク、ダークボール」


「うん、そうだね。ブルー、プロミネンス!」


 莉菜の言う通りだ。

 焦り過ぎて視野が狭くなっていたみたいだ。

 もうすぐエルナのプチヒールのクールタイムが明ける。

 つまり、エルナより先にプチヒールを使ったブルーの方のクールタイムももうすぐ明ける。

 そしたらすぐにカーラを回復しないと。


 しかし、こちらの攻撃はエルナのフレイムランス以外当たっていない。

 ロックオンによる必中効果を得た攻撃しか当たらないのはちょっと問題だな。

 与えるダメージが少な過ぎて長期戦になる。

 正直、何してくるかわからないから短期決戦が望まれる。

 どうにかしてこちらの攻撃を当てないと。

 まだ女王雀蜂クイーンホーネットのHPは6割近く残っている。

 それでもカーラの攻撃が効いている。

 デバフもだけど、状態異常によるスリップダメージ。

 誤差の範囲とも思えるレベルだけど、じわじわと女王雀蜂クイーンホーネットが削れている。


「コン、影分身。陽炎、蜃気楼」


 コンは再び影分身を出した。

 そして今度はコン本体ではなく、影分身が陽炎と蜃気楼を使う。

 コン本体のスキルを温存する形だ。

 先ほどの反省を活かしている。


 この時を待っていたのか。

 タイミング良く女王雀蜂クイーンホーネットがあの巨大竜巻を巻き起こした。

 コンの影分身が陽炎と蜃気楼のコンボを発動させた所での攻撃。

 意図していたとしか思えない。

 それに今、攻撃を受ければカーラが倒される。


「ブルー、ファイアボール、マジックシールド!」


「エルナ、プチファイア、ファイアボール!」


「コン、狐火!」


「カーラ、プチダーク、ダークボール!」


 巨大竜巻に向けて全員、攻撃する。

 少しでも威力を落としてブルーのマジックシールドで防ぐ構えだ。

 ここで防ぎきれなかったらカーラが倒されてしまう。

 そうなるとかなりジリ貧となるので、阻止しないと。


 こちらの攻撃は全て巨大竜巻と衝突する。

 それでも相殺するには至らなかったが、ブルーのマジックシールドで防ぐことには成功したが…。

 巨大竜巻を防ぐことに意識がいって、女王雀蜂クイーンホーネットを完全に見失ってしまった。

 あの巨体を見失うなんて!?


 ブーーーーーーー!!


 羽の音はする。

 つまり、飛んでいる。

 でも、視界の範囲内にはいない。

 なら視界の範囲外にいる?

 範囲外…飛んでいる…。


「上か(よ)!」


 俺と莉菜が気づいたタイミングは全くの同時だった。

 しかし、問題なのは何故あんな高高度に移動したのか。

 ん?

 口元に何か集まっているような…。

 !!あれは風魔法のウインドボール。

 ヤバい。今、攻撃スキルは全てクールタイムに入っている。

 あの攻撃を相殺する術が俺たちには無い。

 あの攻撃の狙いは恐らくカーラだ。

 クソッ!どうしたら…。


「ブルー、カーラの回復を!」


 えっ、莉菜がブルーに指示を出した?

 カーラの回復?

 あ、そうか!

 プチヒールのクールタイムすっかり忘れてた。

 莉菜はエルナのプチヒールのクールタイムの残り時間からブルーのプチヒールがクールタイムから明けていると判断して指示を出したのだろう。

 その証拠にブルーも慌ててカーラにプチヒールを使っていた。

 どうやらブルーも忘れていたようだ。

 それでもカーラのHPは6、7割しか回復していないが充分だ。

 カーラは元々HPが高い。

 これだけ回復していれば次の1撃を耐えることくらいできる。


 ここで女王雀蜂クイーンホーネットはウインドボールをカーラに向けて放つ。

 そのタイミングを見計らってカーラは遥か上空にいる女王雀蜂クイーンホーネットに向かって突撃する。

 女王雀蜂クイーンホーネットはウインドボールが死角になり、カーラが向かってきていることに気づいていない。

 そしてウインドボールをギリギリまで引き付けて躱し、そこから更にスピードを上げて突撃する。


 ギィァ!!!


 自分に向かって突撃してくるカーラの存在に気づいても既に遅い。

 女王雀蜂クイーンホーネットは距離を取ろうと移動しようとするが、それを妨害するかの様にナイトメアが襲う。


 キュイィィィーーーーー!!!


 動きを止めたが最後、カーラの追撃が間に合う。

 闇刺突、連続突き(闇)とカーラの槍が続けて襲う。

 女王雀蜂クイーンホーネットもただ攻撃をくらい続ける訳なく、風魔法のウインドカッターで反撃を試みる。

 しかし、いつの間にか背後に回り込んでいたエルナのシャインランスが直撃し、反撃が失敗に終わる。


 その後、エルナとカーラは一旦、女王雀蜂クイーンホーネットから距離を取り、仕切り直しに掛かる。

 遥か上空での攻防だった故にブルーとコンは一切参戦できず、地上で成り行きを見守っていた。

 この攻防でエルナとカーラはHPを全回復させていた。

 エルナが上手く攻撃の合間にプチヒールを使って、効率良く回復していた。

 そして、女王雀蜂クイーンホーネットの残りHPは2割まで減っていた。

 ここから女王雀蜂クイーンホーネットは狂乱モードに突入

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