第19話 準決勝 ブルーVSエルナ

 遂に新入生代表トーナメント準決勝まで来た!

 正直、ここまで来れるなんて思ってなかった。

 ここまで来たら決勝までと思う気持ちもあるけど、準決勝の相手はあの姫島莉菜だ。

 姫島莉菜のモンスター、天使エルナはかなり強い。

 今までのバトルではまだ底を見せていない気すらする。

 でもそれはバトルする前から負けると決めつける理由にはならない。

 俺とブルーならきっと勝てる!

 そう信じて一緒にバトルするだけだ。


「それでは時間になりましたので、新入生代表トーナメント準決勝第1試合を始めます!」


 うぉぉぉーーーーー


『バトル START』


 白黒学園バトルスタジアムに駆けつけた観客が大いに盛り上がっている。

 それだけこの準決勝を今か今かと楽しみにしていたのだ。


「出よ、ブルー」


「降臨せよ、エルナ」


 ここに1体のスライムと天使が召喚される。

 天使、エルナは召喚されると同時に空へと舞い上がる。

 その光景はあまりに幻想的で美しく、見るもの全ての視線を釘付けにした。

 1人と1体を除いて。


「ブルー、プロミネンス!」


 空へと舞い上がったエルナに対して炎の塊が襲いかかる。

 それをギリギリのタイミングで何とか躱される。


「エルナ、プチシャイン」


「マジックシールド!」


 攻撃を躱したエルナは反撃のプチシャインを放つ。

 それをマジックシールドにより、展開される障壁で防ごうとした。

 辛うじて防ぐことには成功したが、この一撃でマジックシールドが割られた。

 相手は幻想種の天使、エルナ。

 最も弱い筈のプチ系の魔法でマジックシールドを割ってきた。

 これ以上強い魔法はマジックシールドでは防ぐことができないということだ。

 マジックシールドは魔法攻撃を防ぐではなく、威力の減衰狙いで使うべきか。


「シャインランス」


 次は光の槍を出現させて、ブルー目掛けて投擲。

 空中からもの凄い勢いで飛んでくる光の槍をブルーは躱せなかった。

 いや、反応することすらできなかった。

 光魔法の最大の特徴はその速さにある。

 威力こそ他の魔法よりも低いが、速さは他の魔法の比ではない。


 シャインランスがブルーに直撃したが、HPは6割程しか減っていなかった。

 いや、6割も減ったと言うべきか。

 威力の低い光魔法でブルーのHPを半分以上削ったことになる。

 光以外の属性魔法だったら一撃でやられていた可能性すらある。

 これだけで天使がどれだけ強いかわかるだろう。

 しかし、それを踏まえた上でシャインランスの威力が低い気がする。

 プチシャインのスキルLvが高いだけなのか、シャインランスのスキルLvが低いだけなのか、それとも両方か。

 何れにしろブルーの防御力ではそう何回も攻撃は受けれない。


「ブルー、プチヒール」


「あ、そっか。その子回復魔法も使えるんだった。これで振り出しか」


 ブルーのHPはプチヒールにより、全回復する。

 それに対して莉菜はまだ余裕があるかのような振る舞いをしている。

 いや、実際にまだ余裕はあるのだろう。

 まだエルナはダメージを一切負っていない。

 こちらはプチヒールで全回復こそしているが、プチヒールがクールタイムに突入している以上、しばらく回復はできない。

 まだエルナにはダメージを負っても回復するという選択がある。

 それに対してこちらにはその選択がない。

 この差は大きい。


「エルナ、プチシャイン」


「ブルー、プチサンダー」


 プチシャインに対してプチサンダーで迎え撃つ。

 両モンスターの攻撃は完全に相殺されると思いきや、プチシャインが打ち勝ち、ブルーに向かう。

 ただ、これに関しては回避に成功。


 ブルーのプチサンダーはLv3。

 まだスキルLvが低いとはいえ、ブルーの魔法攻撃力は高いのにも関わらず、押し切られた。

 エルナの魔法攻撃力がブルーよりも高い可能性もあるけど、やはりプチシャインのスキルLvはかなり高いとみた方がいいだろう。


 しかし、空を飛ぶエルナに対してブルーの取れる攻撃手段は魔法しかない。

 その魔法もブルーはプロミネンスとプチサンダーの2つしか持っていないので、どうしても戦い方が単調になってしまい、後手にも回ってしまう。


「プチシャイン、シャインランス」


 今度は2つの魔法を使ってブルーを追い詰めに掛かる。


「マジックシールド、それからプロミネンス!」


 しかし、この2つの魔法はマジックシールドと衝突し、威力が減衰したところをプロミネンスで相殺される。

 攻撃が相殺されたこと衝撃により、砂煙が立ちのぼる。

 そして、ブルーはクールタイムが明けたばかりのプチサンダーで反撃する。

 視界不良の中からの攻撃だった為、エルナは反応が遅れてプチサンダーが直撃する。

 それでもエルナのHPは1割ほどしか減っていなかった。


「エルナ、大丈夫?」


「はい、問題ありません」


「ならこっちも反撃いくよ!プチシャイン」


「躱せ、ブルー」


 とにかく速い。

 プチシャインを放ってから着弾まで数秒しかなかった。

 放つと同時に回避行動を取っていなければ、間違いなく、被弾していた。


 それからは防戦一方となってしまった。

 エルナはプチシャイン、シャインランスと2つの魔法で攻撃する。

 ブルーはそれをギリギリのところで躱すかマジックシールドを使い、威力を減衰させたところでプロミネンスで相殺するしか選択肢がない。

 2つの魔法がクールタイムに突入するタイミングでプチサンダーで反撃を試みているが、エルナにそれを読まれている為、全て余裕を持って回避されている。


「やっぱり手強いわね。どうやったらスライムがここまで強くなるの?」


「え?」


 バトルの最中に姫島莉菜が話し掛けてきた。

 しかもブルーのことを「やっぱり手強い」と言っていた。

 バトルする前からブルーを強いと認めていたってことなのか。


「俺はブルーを信じてるだけだよ」


「そっか。うん、そうだよね。やっぱりあなたちは強いな。でも、私たちも負けるつもりないから!」


「俺たちも負けるつもりはないよ!」


「うん。エルナ、シャインランス」


「ブルー、マジックシールドからのプロミネンス」


 ここでブルーは戦い方を変える。

 今までの戦い方では防戦一方になるだけと判断したのと蓮の信頼に応える為だろう。


 マジックシールドではエルナの攻撃を防ぎきれない。

 だが、障壁を破る瞬間に少しだけ時間的余裕が生まれる。

 その瞬間に攻撃の軌道上から逸れてカウンターに繋げる。

 ブルーの攻撃はエルナの翼をかすめる。

 それにより、エルナは一時的に空を飛ぶのに支障をきたし、地面に落ちていく。

 それを見逃すことなく、ブルーはプロミネンスアタックで追撃。

 飛行能力が著しく低下しているエルナはこれを回避できなかった。

 これにより、エルナのHPは残り3割まで削れた。


「いける!ブルー、プチサンダー」


「エルナ!」


 ブルーの更なる追撃が綺麗に決まった。

 このバトルを見ていた誰もがまさかまさかの大番狂わせに盛り上がる。

 誰もがブルーの勝利だと思ったその瞬間、炎の槍と光の槍がブルーに飛来した。

 炎の槍と光の槍が飛んできた方向には光に包まれているエルナがいた。

 しかもエルナのHPは全回復している。

 先ほどエルナを包んでいた光は回復魔法によって発生したエフェクト。

 そして、ブルーはというと。


『ブルー DOWN』


 この光景が物語っているのは、ブルーの力不足。

 最後、確かにプチサンダーは直撃したが、威力が足りなかった。

 その為、僅かだがエルナのHPが残り、回復が間に合った。

 プチサンダーを放った後に更なる追撃を試みていればと思える状況だが、ブルーの持つ攻撃スキルは全て使い果たされており、クールタイムに突入している。

 ブルーの通常攻撃ではエルナにまともなダメージは入らない。

 つまり、あの状況で一時いっときブルーが勝ったように見えたが、ブルーは負けるべくして負けたのだ。

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