第20話 準決勝 コンVSカーラ

「手を抜いていたとかじゃないからね」


「そっか。でもあの攻撃で倒しきれなかった俺たちの負けだよ」


「すごく強かったよ。また機会があったらバトルしようね」


「うん、そうだね」


 俺は準決勝第1試合を終えて対戦相手の姫島莉菜と話をしていた。

 曰く、最後まで火魔法を使わなかったのは相性の問題だったらしい。

 ブルーに火属性の攻撃は効果が薄いと判断して光属性のみの攻撃だったみたいだ。

 その後、また機会があったらバトルをしようと再戦の約束をして、控え室に戻る。

 次は二階堂郁斗とオリヴィア・ブラウンの準決勝第2試合が行われる。

 ここで勝った方が決勝戦で姫島莉菜とバトルする。

 注目の一戦。


「準決勝第1試合の熱い激闘を終えて息つく間もないまま準決勝第2試合、二階堂郁斗VSオリヴィア・ブラウンの試合!」


 既に2人はいつでもバトルできる状態。

 開始の合図を待っている。

 観客席の興奮冷めることなく、準決勝第2試合が始まる。


『バトル START』


「出よ、コン」


「君臨せよ、カーラ」


 フィールドには2本の尻尾を持つ狐と槍を右手に持った悪魔が召喚される。

 悪魔、カーラは召喚と同時に空へ飛び上がる。


「カーラ、プチダーク」


「コン、陽炎かげろう


 空中から闇の塊を放つカーラ。

 しかし、地上にいるコンの姿がユラユラと揺れ始め、狙いが定まらずコンに当たらなかった。

 コンは妖怪種特有のスキル、妖術が使える。

 この陽炎という妖術を使い、相手を翻弄するのがコンの戦い方。


「これでは遠距離からの魔法はダメそうですね。カーラ、闇刺突やみしとつです」


 コンの陽炎の前には遠距離からの魔法は通じないと即座に判断したカーラは槍を使った近接戦闘に移行。

 距離を完全に詰めてコンに向かって槍を突くが、そこにいた筈のコンが消えた。

 まるで幻を見せられていたかのように。


「今だ、狐火、二尾の焔!」


 カーラの背後に突如として現われたコンから紫色の炎が飛んでくる。

 気付くのが遅れたカーラは回避できず、攻撃をまともにくらう。

 コンの攻撃はそれだけで終わらず、2本の尻尾が紫色の炎を纏い、カーラを薙ぎ払う。


「カーラ!」


「大丈夫。それより今何があった?」


「目の前にいたコンが消えたと思ったら背後から突然現われました」


「なるほど。何となく理解したわ」


 カーラは一度、空中に退避すると地上にいるコンに向かってプチダークを再び放った。

 するとプチダークが当たったコンの姿は再びそれが幻であったかのように消えた。

 しかし、消えた直後に全く別の場所から突如として姿を現した。


「今度は本体かしら」


 再び姿を現したコンに向かって今度は闇の球ダークボールを放つ。

 それを今度は躱すコン。

 今まで回避行動を一切取っていなかったのにも関わらず、回避行動を取った。

 つまり、今姿を現したコンは幻ではない。


「やっぱりね。その妖術は幻が攻撃を受けると本体が全く別の場所に現れる類いかしら。かなりクールタイムが短いみたいだけど、その分弱点もしっかり存在しているわね」


「もう見切ったのかよ。あと1、2回はこれで攻撃を決めたかったけど、もう無理か。でも陽炎の弱点?一体何のことだ?まあいいや。コン、狐火」


 コンコン


 どうやらカーラは完全にコンが使っている妖術の仕組みを見抜いたようだ。

 二階堂郁斗の発言からも間違いないだろう。


「カーラ、ダークボール、プチダーク」


 空を飛んでいるカーラに対してコンは狐火を放つが、カーラの放ったダークボールとぶつかり相殺され、プチダークがコンに迫る。


「くそっ!コン、陽炎」


 コンの姿が再び揺らぐ。

 プチダークが揺らいでいるコンに当たったが、やはりそこにいるコンは幻影だった。

 カーラはコンの幻影には見向きもせずに全く違う何も無い場所を見ている。

 そしてそこに向かって一直線に急降下を始める。

 するとカーラの軌道上にコンが出現した。


 コン!?


 予想外のことに驚きを隠せないコン。

 そんなのはお構いなしにカーラはコンに闇刺突をくらわせる。

 カーラの一撃はこのバトルが始まってから初めて完璧に決まった。

 物理防御力の低いコンにはかなり重たい一撃となった。

 カーラの残りHPは7割ほど。

 対するコンは3割ほどしか残っていない。

 あと一撃でもくらえば確実に負ける状況。

 それに加えてカーラの闇刺突の効果で何かしらのデバフを与えられている。

 コンはかなり分が悪い。


 陽炎という妖術はユラユラと揺らいでいる幻影に注目しがちだが、実際に俯瞰でフィールドを見渡すと僅かだが、空間に揺らぎが生じている箇所がある。

 カーラはその揺らぎを上空から見つけていたが故に闇刺突を当てることができた。

 地上からでは空間の揺らぎを見つけることがかなり難しく、今まで陽炎の弱点は露呈していなかった。

 コンにとっては相手が悪かったとしか言えない。


「ただのハッタリだと思ってたけど、マジみたいだな。これじゃあ陽炎はもう使えないな」


「流石カーラね!私は何が何だかまだ全然わかってないけど」


「…ほんとは決勝戦まで温存したかったけど、無理そうだな。コン、蜃気楼!」


 ここにきてまだ温存していたスキルがあると判明。

 コンが蜃気楼を発動させると、周辺の空間が歪な形に変貌し続けている。


「これも幻覚の一種かしら」


 コンのいるであろう方角を注視していると全く違う方向から狐火がカーラ目掛けて飛んできた。

 少しの間を置いて次も全く別の場所から狐火が飛んでくる。

 このまま姿を隠したまま狐火でカーラのHPを削りきる作戦か。

 下手に近づけばカウンターにより、コンが倒される危険性がある。

 これ以上ないくらい理にかなった作戦と言えるだろう。

 相手が悪魔カーラじゃなければ。


「カーラ、ナイトメア!」


『コン DOWN』


「やっぱりナイトメア使えるのか…」


 最後コンがカーラを追い詰めていたが、勝負はカーラが陽炎の弱点を見抜き、闇刺突をコンに当てた瞬間に決していた。

 ナイトメアは悪魔専用スキルでデバフや状態異常に陥っている相手にしか効果を発揮しない代わりに必ず攻撃が当たる。

 今回みたいに相手モンスターであるコンの姿が見えていなくても、コンは既にデバフをかけられていたので、ナイトメアが必中だった。

 悪魔専用スキル、ナイトメアは悪魔が竜に次ぐ準最強種と言われる所以ゆえんでもある。

 ちなみに天使には専用スキルはないが、回復魔法が使えて単体での戦闘能力の高さから悪魔と双璧を成す準最強種とされている。


 これで決勝戦の対戦カードが決まった。

 準決勝第1試合 鬼灯蓮VS姫島莉菜 姫島莉菜の勝利

 準決勝第2試合 二階堂郁斗VSオリヴィア・ブラウン オリヴィア・ブラウンの勝利


 決勝戦 姫島莉菜VSオリヴィア・ブラウン

 Eランクプレイヤー同士のバトルにおいて前代未聞の 天使エルナVS悪魔カーラとなった。

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