第18話 新入生代表トーナメント2回戦

 昨日行われた新入生代表トーナメント本戦1回戦を何とか勝利できた。

 今日は2回戦が行われる。

 相手は鈴木岑守。

 昨日のバトルを見た限り、ハイオーガでエントリーしている。

 オーガは鬼種に属するモンスターで総合的なステータスがとにかく高い。

 ただ魔法適正は無いので、近接戦闘しかできない。

 昨日のバトルでも遠距離攻撃があるようには思えなかった。

 素早さも高いので、上手くいくかわからないけど、基本は距離を取って魔法攻撃。

 近接戦闘は避ける方向でいこう。

 あの棍棒をまともに受けたら一撃でやられかねない。


「それでは時間になりまたので、新入生代表トーナメント2回戦第1試合を始めます!」


『バトル START』


「出よ、ブルー」


「出よ、ハイオーガ」


 バトルSTARTのウインドウが表示されると2体のモンスターが召喚される。


「先手必勝!ハイオーガ、ラッシュガン」


「ブルー、プロミネンス」


 両手で棍棒を振り上げながらブルーとの距離を詰める。

 それをさせまいとブルーはプロミネンスで反撃。

 炎の塊は真っ直ぐブルーに突進してくるハイオーガに直撃するが、何事も無かったかのように向かってくる。


「プチサンダー!」


 今度はプチサンダーをお見舞いするが、それをも無視して突っ込んでくる。

 ダメージはそれなりに入っているのに、怯まず突進してくる。

 このままハイオーガの攻撃を受けると1回戦第2試合で見せたハイオーガの勝ちパターンに突入してしまう。


 ハイオーガの攻撃範囲までブルーが侵入を許した。

 すると両手で持っていた棍棒を勢いよく振り下ろす。

 ハイオーガの攻撃力はかなり高い。

 その一撃をまともに受けたらブルーも一撃でやられかねない。

 バトル前にこの状況にはならないようにしようと考えていた状況。

 バトル序盤でハイオーガの必勝パターンに持ち込まれてしまった。

 しかし、この状況でもまともに攻撃を受けなければ問題はない。


「ブルー、ハイオーガの脚にプロミネンスアタック!」


 この状況でまともに攻撃を受けない為にはどうしたらいいか。

 答えはシンプル。

 ハイオーガの体勢を崩してしまえばいい。

 ただ、言うは易し。

 言葉で言うほど簡単なことではない。

 それに1回成功したとしても2回目以降も成功する保証はない。


 ブルーの物理攻撃力とプロミネンスアタックの威力。

 これらがハイオーガの物理防御力を突破して少しでも重心をグラつかせないと試みは失敗に終わる。


 グギャアァァーーーー!!


 ブルーの放ったプロミネンスアタックは見事にハイオーガの体勢を崩した。

 体勢を崩されたハイオーガは顔から勢いよく倒れた。


「今だ!プチサンダー、プロミネンス」


 今がチャンスと捉え、クールタイムが明けたばかりのプチサンダーとプロミネンスで一気に畳み掛ける。

 これだけの攻撃を浴びせられても未だに怯まず、倒れたままの状態にも関わらず、左手1本で棍棒を振り回し、ブルーを吹き飛ばす。


 今の攻防でブルーのHPは残り1割。

 ハイオーガのHPは残り5割。

 今の残りHPだけを見ると圧倒的にハイオーガが優勢。

 しかし、ブルーには回復魔法がある。


「回復する前に仕留めて。ラッシュガン!」


「プチヒール」


 ハイオーガにブルーが回復する前に倒すよう指示を出すが、あと1歩間に合わなかった。

 ブルーの回復の方が早かった。

 それでもこの一撃でHPを削りきれば関係ないと言わんばかりに両手で棍棒を振り下ろす。

 完全に勝負は決まった。

 この状況では万が一にも攻撃を耐えたとしてもプチヒールはクールタイムに突入し、回復ができない。

 そもそも完璧な体勢から繰り出されるハイオーガの一撃をスライムであるブルーが耐えられる訳がない。

 ハイオーガの攻撃をくらう=ブルーの敗北。

 なら攻撃を受けなければいい。

 ブルーはそう言わんばかりに華麗に攻撃を躱した。

 その鮮やかな回避に誰もが信じられないと思ったことだろう。

 あのタイミングでの攻撃をあそこまで華麗に回避するとは。

 ブルーの回避技術だけ見たらとてもEランクには収まっていなかった。


 ブルーは今まで幾度となく、負けている。

 その度にポイントを使ってブルーを復活させていた。

 Eランクのプレイヤーとそのモンスターはあまり敗北を知らない。

 蓮とブルーのコンビは数多の敗北を乗り越えてきた。

 この程度、ブルーにとってはいつもやっていることだ。


「ナイス、ブルー!そこからプロミネンスアタック」


 ハイオーガの攻撃を巧みに躱したブルーは流れるようにハイオーガの背後からプロミネンスアタックを叩き込む。

 棍棒を振り下ろし、体勢が前のめりになっていたのも相まってハイオーガは再び顔から倒れる。

 そこからは先ほどと同様の猛攻撃が始まった。

 プロミネンスはクールタイムがそこそこ長く、連発はできないが、プチサンダーはクールタイムがかなり短い。

 クールタイムの短いプチサンダーを軸にプロミネンスやプロミネンスアタックを織り交ぜて攻撃する。


「ハイオーガお願い...」


 グギャアァァーーーー!!


 岑守の願いが届いたのか起き上がったハイオーガは雄叫びを上げながらブルーにラッシュガンを叩き込む。

 それに対し、ブルーもプロミネンスアタックで真っ向から受けてたった。

 当然と言えば当然の結果だろう。

 ハイオーガの一撃にブルーはあっさり吹き飛ばされた。

 しかし、それこそがブルーの狙いだった。

 ブルーはハイオーガとの距離を取りたかったのだ。

 その為にやられないように吹き飛ばされた。

 これにより、ラッシュガンの連続攻撃はキャンセルされる。

 そして遠距離攻撃のないハイオーガは再びブルーとの距離を詰める前にプロミネンスでHPを削り切られる。


『ハイオーガ DOWN』


「決着!!何と何と鬼灯蓮、2回戦突破!最後、ハイオーガが執念を見せて逆転勝利をもぎ取るかと思いきやそれを華麗に受け流して勝利を掴み取った!」


 最後は危なかったけど、ブルーの機転のおかげで勝てた。

 帰ったらブルーをこれでもかってくらいに労わないと。



 その後すぐに2回戦第2試合、谷口有栖と姫島莉奈のバトルが行われた。

 結果はかなり一方的だった。

 姫島莉奈のモンスター、エルナという名前の天使は常に空を飛んでいる。

 遠距離攻撃の手段がないと一切攻撃が当てられず、上から魔法が降ってくるという地獄と化す。


 それに対し、谷口有栖のモンスターはミリスという名前の人類種エルフ。

 エルフは魔法適正があり、魔法攻撃や弓などを使った遠距離攻撃か魔法攻撃や剣などを使った魔法剣士スタイルの2種類ある。

 ミリスは魔法攻撃を主体とし、魔法攻撃がクールタイムに入ったら弓で攻撃するという遠距離攻撃に特化したモンスターだった。


 しかし、空中にいるエルナに対し攻撃があまり当たらず、当たってもプチヒールなどの回復魔法で即座に回復されてしまう。

 ミリスは回復魔法が使えない為、少しずつダメージが蓄積していき、最後は呆気なく敗れた。

 最終的にエルナのHPはマックス残っていた。

 ダメージを与えても即座に回復されるとか地獄でしかないだろう。

 これは完全に相性というか相手が悪かった。



 続いて行われた2回戦第3試合、紫藤綾音と二階堂郁斗のバトル。

 紫藤綾音のモンスターはウインドマンティス。

 それに対する二階堂郁斗のモンスターはコンという名前の妖狐。

 序盤はウインドマンティスが風魔法を巧みに使い、コンに着実にダメージを与えていった。

 ウインドマンティス優勢で進んでいたけど、急にあらぬ所を攻撃し始めた。

 そのせいで隙だらけとなり、コンが一方的に攻撃し始める。

 ウインドマンティスの不可解な行動の原因はコンに幻覚を見せられているからだろう。

 狐の妖怪種は火魔法と妖術を使える。

 妖術の中には幻覚を見せる類いのものがあった筈。

 幻覚は一種の状態異常。

 状態異常を解除するスキルが無いと時間経過で解除されるのを待つしかない。

 時間経過で幻覚の状態異常が解除される前にコンとウインドマンティスの勝負は決した。



 そして今日最後の2回戦第4試合、大津優奈とオリヴィア・ブラウンのバトル。

 大津優奈のモンスターはミーシャという名前の人類種獣人(猫人)。

 対するオリヴィア・ブラウンのモンスターはカーラという名前の悪魔だった。

 そう、準最強種で天使と双璧を成す幻想種の悪魔。

 1回戦で初めて登場した時は誰もが自分の目を疑った。

 まさか白黒学園 新入生代表トーナメント本戦で天使と悪魔が登場するとは。

 過去、竜はもちろん天使や悪魔がEランクのプレイヤーが出場するトーナメントに登場したことは数例しか無い。

 それも片手で数えられる程度の数だ。


 バトルの内容はかなりの激戦だったと言える。

 ミーシャは両手爪クローを装備している完全近接戦闘タイプ。

 カーラは闇魔法と槍を使う遠距離、近距離両方に対応できる万能タイプ。

 序盤、カーラは空中から闇魔法を放ち続けるが、ミーシャは持ち前の素早さを活かしてそれを回避する。

 遠距離からの魔法ではダメージを与えられないと悟り、カーラは距離を詰めての近接戦に移行する。

 ミーシャの防御の隙間を巧みに槍で貫こうとするが、あと一歩のところで届かない。

 持ち前の素早さを活かして翻弄し、着実にカーラに対してダメージを与えていたが、ミーシャがカウンターをもらった瞬間、状況は大きく動いた。

 突如としてミーシャの動きが鈍くなったのだ。

 カーラの一撃には闇魔法が付与されており、それを受けたミーシャは素早さが下がるデバフ状態に陥った。

 素早さが落ちて、被弾が増え、更にデバフで弱体化。

 完全な負の連鎖に陥ったミーシャはそのまま敗北した。

 途中まではミーシャが勝つのではと思えるくらい押していたが故に最後は残念だった。


 2回戦の最終的な結果はこうだ。

 第1試合、鬼灯蓮VS鈴木岑守 鬼灯蓮の勝利

 第2試合、谷口有栖VS姫島莉菜 姫島莉菜の勝利

 第3試合、紫藤綾音VS二階堂郁斗 二階堂郁斗の勝利

 第4試合、大津優奈VSオリヴィア・ブラウン オリヴィア・ブラウンの勝利


 そして、次の準決勝の組み合わせも決まる。

 第1試合、鬼灯蓮VS姫島莉菜

 第2試合、二階堂郁斗VSオリヴィア・ブラウン


――――――――――――――――――――

新入生代表トーナメント本戦 トーナメント表

https://kakuyomu.jp/users/Yumaku00/news/16818093075909946191

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る