第15話 ブルーVSジャイコス

 ゴブリンキング、ハイフェアリー相手に予選2連勝。

 この勢いで残りの3戦も勝ちたい。


 次の予選第3試合は白黒学園 中庭で午後4時30分とウインドウが表示される。

 俺は時間ギリギリの到着となり、対戦相手は既に中庭で待っていた。


「ようやく来たか。不戦勝かと思ったが、そうはならなくて良かった」


「すみません、遅くなって」


「気にするな。時間設定がギリギリを攻めすぎているだけだ」


「そう言ってもらえると助かります」


「時間だ」


『バトル START』


「出でよ、ブルー」


「来い、ジャイコス」


 予選第3試合の相手のモンスターは人類種の巨人。

 相手のプレイヤーは”ジャイコス”って呼んでいたから恐らくブルー同様に名前を与えられている。

 名前を与えているってことはそれだけ丁寧に育て上げている証拠。

 今までの相手よりも数段強いと思った方が良さそうだな。

 それに巨人は魔法適正こそ無いけど、素早さ以外のステータスが極めて高い。

 正面からの殴り合いはブルーが不利だ。

 距離を取りつつ、魔法攻撃でダメージを蓄積させていくのが無難かな。


「ジャイコス、踏み潰す!」


「距離を保ちつつプロミ…!躱せブルー」


 ジャイコスはその巨体の通り素早さは低いが、歩幅が大きい。

 その為、10メートル近く離れていたその距離も一瞬にして詰められ、危うくブルーは踏み潰される所だった。

 間一髪のところでブルーが回避に成功したけど、これがこの後も上手く決まる保証は無い。

 距離を取るとダメなら一か八かだ。


「ブルー、相手の巨人にできる限り近づいて距離を離すな」


「うん?ジャイコス気にせず、踏み潰す」


 俺がブルーに出した指示に対戦相手のプレイヤーは戸惑っていた。

 ジャイコスは左足を上げて再びブルーを踏み潰そうとする。

 ここだ!


「ブルー左に回避。それからプロミネンスアタック!」


 ジャイコスがブルーを踏み潰そうとしている足とは逆足の方向に回避し、そのまま足にプロミネンスアタックを叩き込む。

 軸足に攻撃をくらったジャイコスは大きく揺らいだ。


「しまった!それが狙いか」


「今だ、プロミネンス、プチサンダー!」


 ジャイコスがバランスを崩し、大きく揺らいだのをチャンスと捉え、ここで一気に攻撃を仕掛ける。

 その後、バランスを取り戻したジャイコスが今度はブルーを殴りに来た。

 連続でブルーに向かって腕を振り下ろすジャイコス。

 その衝撃で凄まじい砂煙がたち、ブルーの居場所をジャイコスの目から隠す。


「ブルー、プロミネンス、プチサンダー」


 砂煙の中から巨大な炎の塊が突如として現われ、ジャイコスに襲いかかる。

 しかし、小さな雷撃は外れた。

 今、ブルーは適当に魔法を放っていた。

 俺は適当に撃ってもジャイコスの巨体なら当たると踏み、指示した。

 しかし、このタイミングで相手も砂煙で互いが見えないのを利用してきた。


「ジャイコス、地団駄!」


 ジャイコスは足で地を何回も踏みつけ始めた。

 砂煙が余計ひどくなるが、そんなのお構いなしだ。

 ジャイコスは砂煙でブルーが見えていない。

 それはブルーも同様だった。

 見えないジャイコスから無差別に連続で踏み潰そうとしてくるこの状況。

 ブルーはどうにか距離を取ろうとしたが、その前にジャイコスに踏み潰された。


「ブルー、プロミネンス」


 ジャイコスに踏み潰されたが、まだHPは残っている。

 反撃のプロミネンスが再びジャイコスに直撃し、地団駄は終わる。

 やがて、砂煙が晴れて互いのモンスターのHPが見えるようになった。

 ジャイコスは残り6割ほど。ブルーは残り3割ほどだった。

 ブルーの方がより多く攻撃を与えているが、それでも4割ほどしかダメージを与えられていなかった。

 巨人であるジャイコスのステータスの高さがうかがえる。

 しかし、ブルーにはまだがある。


「ブルー、自分にプチヒール」


 ここでブルーは自分に対してプチヒールをする。

 これでブルーのHPはマックスまで回復した。


「嘘だろ…。このスライムも回復魔法が使えるのかよ。なら一気に倒すしかねえよな。ジャイコス、地団駄!」


「それはさせない。ブルー、軸足にプロミネンスアタック!」


 回復魔法が使えると判明した瞬間、一気に倒しきるという考えにシフトし、地団駄でブルーのHPを削りにかかるが、それをブルーがプロミネンスアタックを軸足に当てて、バランスを崩すことで阻止する。

 最初ほど大きくバランスは崩さなかったが、プロミネンスやプチサンダーですかさず攻撃する。


「ジャイコス、蹴り飛ばす!」


 ブルーの攻撃スキルが全てクールタイムに突入したのを見計らっていたのか、そのタイミングでジャイコスはブルーを蹴り飛ばした。


「そのまま殴りつける!」


「まずい。ブルー、プチヒール!」


 ジャイコスの殴りつけるが直撃するよりもほんの僅かだがプチヒールの方が早かった。

 その為、ブルーはギリギリのところで耐えた。


「プロミネンス、プチサンダー」


 プチヒールのクールタイムがまだ明けていないので、ここは攻撃を仕掛けて、相手の攻撃を少しでも封じにかかる。


「ジャイコス、突っ込め!殴りつける」


 ここが勝負どころと判断したのかなりふり構わず、ジャイコスに攻撃に突っ込むよう指示を出す。

 ジャイコスの残りHPは3割ほど。

 これだけ残っていたら耐えることができるという計算からの行動か。


「ならこっちも。ブルー、プロミネンスアタック!」


 ジャイコスの拳と炎を纏ったブルーが正面からぶつかる。

 意外にも両モンスターの攻撃は拮抗している。

 物理攻撃力とスキルの威力面で絶妙な均衡が保たれているということだろう。

 両モンスターの攻撃は相殺し合う形となった。


「よし!プチヒール」


 そしてこのタイミングでプチヒールのクールタイムが明ける。

 ブルーのHPは再び全回復する。


 ブルー、ジャイコスともに全ての攻撃スキルがクールタイムに突入している。

 ブルーは通常攻撃でジャイコスにダメージを与えることはできないだろうが、ジャイコスなら通常攻撃でもダメージを与えられる。

 その差が両プレイヤーの指示に出る。


「ブルー距離を詰めろ!」


「ジャイコス、通常攻撃で応戦しろ」


 ジャイコスは殴る、蹴るの通常攻撃でブルーに攻撃を仕掛けるが、ブルーは巧みな動きでそれを回避する。

 スキルの補正なしでは素早さの問題でブルーに攻撃が当たらない。


「プチサンダー!」


 とにかく、ブルーに攻撃を与えて少しでもダメージを与えないとという意識が仇となった。

 ここでブルーの攻撃スキルのクールタイムが明け始めた。


「プロミネンス、プロミネンスアタック!」


 ブルーからの攻撃はないと無意識に考えていたジャイコスはこれらの連続攻撃に対応できず、正面からまともにくらってしまう。

 この連続攻撃でジャイコスの残りHPは1割を切った。

 対してブルーのHPはマックス残っている。

 勝負は見えたかと思われたが、最後まで諦めること無く、ジャイコスに攻撃の指示を出すが、健闘むなしくブルーのHPを残り5割まで削ったところで終わった。

 最後はブルー渾身のプロミネンスでジャイコスのHPを削りきった。


『ジャイコス DOWN』


「……負けたか。いやあでも、強かった。こんだけ強い相手に負けたならしょうがない!俺に勝ったんだから必ず本戦に出場してくれよな」


「もちろん、そのつもりだよ!」


「そうか。……お前なら姫島莉菜にも勝てるかもしれないな。あいつのモンスターはとんでもなく強い。でも、ジャイコスと正面からあれだけ戦えるお前なら……」

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