第13話 新たな力

 まずはスケルトンナイトと生前の血を合成する。

 生前の血は『嘆きの墓地』の虹色宝箱から入手したアイテムでアンデッド系専用の合成素材。

 ただ、これ単体では合成素材として使えず、他にも人類種の合成素材が必要となる。

 今回使う人類種の合成素材は『巨石の採掘場』で銀色宝箱から入手した下級合成素材交換チケットを使って交換する。

 合成素材交換チケットは下級、中級、上級の3種類ある。

 等級の高いチケットほどレア度の高い合成素材と交換できる。


 今回はエルフの合成素材(耳飾り)を交換した。

 他に人類種でいい感じの合成素材が無かったから消去法で決めた。


『スケルトンナイトと生前の血+エルフの合成素材(耳飾り)を合成しますか? はい いいえ』


 もちろん「はい」を選択する。


 生前の血とエルフの合成素材(耳飾り)が激しい光に包まれてスケルトンナイトに吸い込まれていく。

 光が収まると目の前に再びウインドウが表示される。


『スケルトンナイトが特殊進化条件を満たしました。進化させますか? はい いいえ』


 ここでスケルトンナイトが特殊進化条件を満たす。

 ブルーがフレアスライムに進化した時と一緒だ。


 もちろんここも「はい」を選択する。

 再びスケルトンナイトが光に包まれる。

 光が収まるとそこには見ず知らずのプラチナブロンドの髪を胸より少し下まで伸ばしている綺麗な女性がいた。


「ようやく話せるようになりましたね、我が主よ」


「!話せるんだね」


「私みたいな人類種やそれに近いモンスターは話せますよ」


「そうだったね…。ステータスを確認してもいいかな?」


「今まで通り、主のお好きにどうぞ」


 なら遠慮なくステータスを確認しよう。


 剣士ソードマン(人類種)Lv1

 HP:70→170(+60)

 物理攻撃力:5→16(+2)

 物理防御力:4→9(+3)

 魔法攻撃力:0

 魔法防御力:3→8(+3)

 素早さ:4→12

 SP:29→0

 スキル:閃撃Lv5、(状態異常耐性Lv1、デバフ耐性Lv1)

 武器:鉄の剣(物理攻撃力+2)

 防具:光狼の盾(物理防御力+3、魔法防御力+3、状態異常耐性Lv1、デバフ耐性Lv1)


 進化する前のスケルトンナイトの方が圧倒的に強かった気がするな。

 初期ステータスが全て5以下って相当弱いぞ。

 生前の血とエルフの合成素材(耳飾り)を合成した結果、特殊条件を満たして進化させたのに弱くなるなんて……。


「主は私のステータスを見て、恐らくスケルトンナイトの時の方が強かったと思われているのでは?」


「……」


「ふふ、それは当然ですよ。モンスターとしての格は剣士ソードマンよりスケルトンナイトの方が上ですから」


 モンスターとしての格ってどういう意味だ。

 今まで『Let's Monster Battle』についていろいろと俺なりに調べているけど、モンスターの格なんて聞いたことがない。

 俺のよくわかっていない雰囲気を察したのか剣士ソードマンが説明をしてくれる。


「主がモンスターの格について知らないのも無理はありません。殆どの方は知らないでしょうし。主もご存知のことでじょうが、モンスターは進化すると強くなることもあれば弱くなることもあります。強くなるのはモンスターとしての格が上がった為、弱くなるのはモンスターとしての格が下がった為。基本的に強いモンスター=格が高いと認識していただければ問題ありません」


「つまり、スケルトンナイトから進化したけど、モンスターの格は下がったから初期ステータスが弱いってこと?」


「はい、その通りです」


 モンスターに格という隠し要素があったなんて。

 今までいろいろと調べてはいたけど、そんなの聞いたことない。

 あれ、でもさっき……。


「さっき殆どの人はモンスターの格について知らない的なこと言ってなかった?それってどういう意味?」


「人類種やそれに近いモンスターの中にはモンスターに格があると知っている者もいます、私のように。しかし、その殆どが決してそれを主には教えることはありません」


「え、じゃあ何で俺には教えてくれたの?」


「主を信頼し、忠を尽くすと決めているからです。主ほどモンスターのことをおもんばかる方を私は知りません」


「いや、それはどうなんだろ。というより、他のプレイヤーのこと知ってるの?」


「元々、私は『嘆きの墓地』のボスモンスターですよ。挑戦してくる方はたくさんいました。皆返り討ちにしましたが」


 何となく剣士ソードマンの言っていることの意味がわかってきた。

『嘆きの墓地』のボスモンスターとして幾多の挑戦者を退けてきた彼女だから他のプレイヤーがモンスターをどう扱っているのかを知っているのだ。

 正直、酷い人はかなり酷いと噂程度で聞く。

 でも、俺もそこまで良いって訳ではないと思うけどな。


「主は初めて私に挑戦し、瞬殺されましたね。性懲りもなく、その日のうちに再戦を挑んできた。最初はただの馬鹿だと思いました。でも、結果的に主はブルーと力を合わせて私に打ち勝った。それに主はスライムに名前を与えている。スライムに名前を与えた方を私は知りませんよ。それだけで主を信頼し、忠を尽くすに値します」


 剣士ソードマンの話を聞いたブルーがプヨプヨと擦り寄って来る。

 モンスターとの信頼関係、これも大事ってことかな。

 見限られないように俺ももっと頑張らないとな!


「ありがとう、剣士ソードマン。これからもよろしく!」


「はい、主の為に精一杯努めて参ります」




 剣士ソードマンは人類種のモンスター。

 つまりは大器晩成型のモンスターであることを示す。

 人類種のモンスターは例外なく、大器晩成型だと言われているから間違いないと思う。

 これからどう育成していくかが大事になってくるな。

 まあ、そこは剣士ソードマン本人と話し合いながら決めていけばいいかな。

 本人の望む道を進むのが一番良さそうな気がする。


 とりあえず、スケルトンナイトは進化して剣士ソードマンになった。

 次はハイウルフの番だ。


 ハイウルフの場合、合成素材が山ほどある。

 それもこれも『見晴らしの草原』で属性持ちウルフの合成素材(牙)を大量に入手したからだ。

 ハイウルフはこのまま進化させたら恐らくリーダーウルフになるだろう。

 このままだと魔法適正なしの進化になってしまう。

『巨石の採掘場』みたいに物理攻撃に強いモンスターしか出現しないダンジョンだと魔法適正のないモンスターが全く戦えない。

 なので、ハイウルフはある程度魔法攻撃もできるようにしたい。

 その為には属性持ちのウルフの合成素材(牙)を合成するのがいいと思っている。

 ただ、問題はどのウルフの合成素材(牙)を合成するかだ。


「主は何を悩んでいるのですか?」


「えっと、ハイウルフに魔法適正を与えたいから属性持ちのウルフの合成素材(牙)を合成しようと思ってるけど、どれがいいのかなと」


「なるほど。それなら本人に選んでもらえばいいのでは?」


「あ、そっか!剣士ソードマンありがとう!」


「いえ、このくらいお気になさらず」


 よくよく思い返してみればブルーに初めて合成した時も似たような状況だったな。

 あの時はブルー自身が合成素材を選んだっけ。


 属性持ちのウルフの合成素材(牙)をボス部屋の床に並べる。


「ハイウルフ、合成素材はどれがいい?」


「クゥゥン」


 ハイウルフはライトウルフの合成素材(牙)を加えて渡してきた。

 どうやら合成素材はライトウルフがいいようだ。


『ハイウルフにライトウルフの合成素材(牙)を合成しますか? はい いいえ』


「はい」を選択。

 ライトウルフの合成素材(牙)が激しい光に包まれてハイウルフに吸い込まれていく。

 光が収まると目の前に再びウインドウが表示される。


『ハイウルフが特殊進化条件を満たしました。進化させますか? はい いいえ』


 ハイウルフも特殊進化条件を満たした。

 もちろん進化させるので「はい」を選択。



 ハイウルフが激しい光に包まれる。

 光が収まるとそこには純白の狼がいた。

 大きさもハイウルフになって、2メートルくらいあったが、今の大きさ1メートルにも満たないだろう。

 とりあえず、ステータスを確認してみよう。


 ライトウルフ(一般種)Lv1

 HP:130→220

 物理攻撃力:6→17

 物理防御力:7→12

 魔法攻撃力:4→14

 魔法防御力:6→10

 素早さ:12→20

 SP:38

 スキル:ノーマルクローLv5→ライトクローLv5、ノーマルファングLv3→ライトファングLv3、プチヒール、プチシャインLv1


 予想通り、ハイウルフはライトウルフに進化した。

 ライトウルフに進化したことで魔法適正を得て、光魔法が使えるようになっている。

 光魔法には相性の不利が存在しないので、それを使えるモンスターは序盤だとかなりレアだ。

 正直ありがたい。

 ただ、光魔法は無敵でもないし、万能でもない。

 闇属性のモンスターには抜群に効くが、その逆も然り。

 光属性と闇属性は互いが弱点同士なのだ。


 ブルーは回復魔法こそ使えるが、光魔法は使えない。

 なので、ブルー単体では火属性と水属性のモンスターとの相性が悪く、有効打がない。

 その点、ライトウルフは万能型でどんなモンスターとも戦える。



 スケルトンナイトが剣士ソードマン、ハイウルフがライトウルフにそれぞれ進化したので、次は先ほど銀色宝箱から入手した召喚石を使ってモンスターを召喚しようと思う。


『召喚石を使用しますか? はい いいえ』


 もちろん「はい」。


 魔法陣がボス部屋の床に現われて、光り輝き始めた。

 徐々に魔法陣の光が収まると1体のモンスター?が姿を現す。

 そこには1本の剣が転がっていた。

 モンスターを召喚する召喚石から武器が召喚された。

 どういうことかわからず、悩んでいると剣士ソードマンが答えを教えてくれた。


「主よ、これはリヴィングウェポンです」


「リヴィングウェポン?それって武器の姿形をしたモンスターってこと?」


「その通りです。リヴィングウェポン最大の特徴はモンスター枠、5枠には当て嵌まらないという点です」


「モンスターなのにモンスター枠には入らない?どういうこと?」


「リヴィングウェポンは人類種のモンスターしか装備することができません。それに加えて、単体では戦えないという制限もあります。その分、しっかりと育て上げれば最強の武器になります」


「なるほど。じゃあリヴィングウェポンは剣士ソードマンが装備するってことでいいかな?」


「問題ありません」


 リヴィングウェポンは剣士ソードマンが装備するということで決まった。

 それにしても、こんなモンスターまでいたんだな。

 全然知らなかったよ。

 でも、制限は少し厳しいかな。

 人類種のモンスターしか装備できないとか単体では戦えないとか。

 まあでも、これから剣士ソードマンと一緒に強くなってくれたらいいかな。



 その後はブルーにランダムスキルの書を使用し、プチサンダーを取得した。

 それからボスであるエルダーロックゴーレムが復活する度に挑戦してモンスターのLv上げを行った。

 ボスの復活待ちの時間ではボス部屋の外でロックゴーレムを倒し続けた。

 今回、予想外の収穫だったのは、リヴィングウェポンだ。

 剣士ソードマンに装備させて戦わせたが、何と闇属性のスキルを持っていた。

 これのおかげで物理攻撃に強いゴーレム相手にもまともにダメージを与えられるようになった。




 そして、遂に新入生代表トーナメントの日を迎える。



――――――――――――――――――――

後書き失礼します。

リヴィングウェポンについて補足で説明します。

人類種のモンスターしか装備できない制限上、人類種のモンスターを所有していないプレイヤーだとそもそも召喚できません!

今回もし、スケルトンナイトの進化ではなく、召喚を先に行っていたらリヴィングウェポンは召喚できませんでした。

また所有スキルですが、プレイヤーが所有している人類種のモンスターに最も相性の良い属性のスキルを持っています。

元アンデッド系モンスターのスケルトンナイトということもあり、闇属性のスキルを所持しています。

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