しおりお姉ちゃんはめがねっ子
神逢坂鞠帆(かみをさか・まりほ)
第1話
わたしの姉は、めがねをかけています。
しおりお姉ちゃんは、近しだそうです。近くばかりよく見るので、目の中のレンズがそのまま固まったのが近しです。だから、遠くはよく見えません。
むかし、お父さんとしおりお姉ちゃんとわたしの三人でめがね屋に行きました。
新しいめがねのフレームをえらびます。かりのレンズが入っためがねをかけて、かがみを見ます。でも、しおりお姉ちゃんにはよく見えません。
しょうがないので、妹のわたしがえらびます。お父さんにも、にあうか聞きました。よく分からないと言われました。そうか。新しいフレームをえらぶために、わたしもつれてこられたのだと分かりました。
し力は、がん科ではかってきました。新しいめがねができるまで、後はお楽しみです。
新しいめがねができました。その時も、わたしはめがね屋につれて行かれました。ピカピカのめがねは、よくにあっています。
お店の人は、「レンズが強いから、物にぶつからないように気をつけてください」と言いました。新しいめがねをかけたら、前よりよく見えるはずです。どうしてぶつかるのだろうと思いました。
いすから立ったしおりお姉ちゃんは、わたしと手をつなぎました。まるで、つりばしかおばけやしきを歩いているみたいです。
「強いレンズだから、物がゆがんで見えるんだよ。一週間くらいしたらのうみそがなれるはずだよ」とお店の人が教えてくれました。
それから少しして、しおりお姉ちゃんが魚がんレンズでとった写真を見せてくれました。
「これがどうしたの」
「新しいめがねにした時は、世界がこう見えるんだよ」
びっくりしました。これなら歩くのが大へんです。しおりお姉ちゃんがわたしの手をにぎりたくなるのも当たり前です。
「それで、世界はまっすぐ見えるようになったの」
「じつは、ちょっとまがって見える。このはしらとか」
「それじゃあ、大工さんになれないねえ」
「そうだね」と言って、しおりお姉ちゃんはわたしをぎゅっとしました。
近しの人は、めがねをかけていても大へんだとよく分かりました。
しおりお姉ちゃんはめがねっ子 神逢坂鞠帆(かみをさか・まりほ) @kamiwosakamariho
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