第19話 サウナでととのう
魔族を自害させたよ!
で、その日の夜。
今日は森の中で野営だ。
『ふぅう~……ケースケ、今日のごはんも最高じゃったぁ♡ この、インスタントラーメンってやつは、うまいな!』
ちょっと今日は運動しすぎて、疲れちゃったから、即席麺でラーメンを作ったのだ。
『こんなに美味い麺は初めてじゃぁ~♡ ケースケと一緒に居ると美味いもんたらふくたべられて、はっぴーはっぴーじゃぁ~♡』
テーブルの上で、お腹ぽっこりスペさんが、満足げにつぶやく。
ヘルメスさん(ヒキニートさん)も、インスタント麺を「んめっ、んめっ」とずるずる食べてた。
こちらも満足そう。
でも……約一名、ずっと暗い顔をしてる人が居る。
「どうしたんですか、ディートリヒさん? ラーメン、お口に合いませんでした?」
僕がそう尋ねると、ディートリヒさんは慌てて首を振る。
「大変美味しかった……こんな美味しい麺類、はじめてだ」
『ふむ……ならば、なぜそんなシケタ顔をしておるのじゃ。美味しいご飯を作ってくれたケースケに、失礼じゃろうがっ』
ぷんすこ、とスペさんが怒る。
まあまあ、と僕はスペさんのぽっこりお腹をなでた。
ディートリヒさんは何かを言いかけて、そして言う。
「カバンの勇者殿……! どうか……私をあなた様の弟子にしてください!」
な、なんだろう……急に……?
「どうして弟子になりたいだなんて、急に言い出したんです?」
すると実に悔しそうな表情で、ディートリヒが内情を吐露した。
「私は……勇者殿を無事目的地に届ける役割を与えられて、ここにおります。ですが! 私は……ここまでずぅっと足手まとい!」
『たしかに。おぬし基本ケースケに驚くか、相手に怯えるか、ケースケに感心するしかしてないし。正直なんで着いてきたんじゃろう、ってずっと思っておったわ』
あーあ、スペさん、言っちゃったぁ。
まあディートリヒさんは、ほんとに何もしてない。
ただついてきてるだけだ。
「このままではいけないと、わかってます。だから、強くなりたいのです! どうか、カバンの勇者殿のように、強く、していただけないでしょうか!」
強く、ねえ……。
う~~~~~~~~~~~ん。
「お願いします……! どうか!!」
必死に訴えるディートリヒさん。
なんかちょっと可哀想になってきた。
「いいですよ」
「ほんとかっ?」
「はい」
彼女をひとりで帰らせて、途中で死んでしまったら、困る。
彼女に僕を道案内するよう頼んだのは、他でもない、大親友のオタクさんだ。
僕がここでディートリヒさんを、なんもせず帰らせて、ケガなんてさせたら、オタクさんの顔に泥を塗ってしまう。
一緒に着いてくるにしても、彼女が弱いままだと、ケガして、それもまたオタクさんに悪い。
なので、僕は彼女の望み通り、彼女を鍛えて、強くしてあげることにした。
「お手軽に強くするなら……手料理かなぁ」
「料理?」
「はい。僕の手料理には、バフ効果が…………ってあれ?」
そうだ……。
「ディートリヒさん、僕の手料理食べてましたよね? しょうが焼き」
さっきの即席麺は手料理じゃないから、ノーカンだとしても。
しょうが焼き……この人食べていた。
「強くなってるはずじゃ……?」
でも、彼女は経験値(※←魔族です)2体に、普通にびびってた。
しょうが焼き食べて強くなってるのだとしたら、オカシイ。
『ケースケ、この女……先天性の魔力欠乏症をかかえておるようじゃぞ』
「まりょく……けつぼーしょー?」
なんじゃそりゃ?
『この世界独自の病気じゃ。魔力を外部から取り込んでも、体に吸収できないという病気じゃ』
なるほど、だからしょうが焼きを食べても、だめだったんだ。
体の中に魔力が貯まらないってことなんだもんね。
「治らないの?」
『うむ。病気と言っても、体質に近いからの』
生まれつきの体質(=病気じゃない)じゃ、
う~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん……。
「体質改善……デトックス……。そうだっ!」
僕は、とあることを思いついた。
「皆さん、ここで待っててください! ちょっと準備してきますのでー!」
僕は
【とあるもの】を、取り寄せカバンで、地球から取り寄せた。
ややあって。
「準備できましたので、外に出てください!」
スペさん、ディートリヒさん、そして……ヘルメスさんが続く。
そこは、森の中。夜の
僕らの目の前には……。
「「『なんだこりゃぁ……!?』」」
みんな驚いてる驚いてる。
まあ、この世界にはないものだもんね。
「勇者様。これはもしや……テント、ですか……?」
ヘルメスさんが恐る恐る尋ねてくる。
「な、なるほど……言われてみると、天幕に見え無くないな」
とディートリヒさん。
あ、テントはなくても、天幕はあるんだね。
「そう、でもこれだけだと、ただ。ここからが……凄いんです!」
僕はテントのジッパーを下げる。
むわ……!
『な、なんじゃ……? テントの中から、熱気がむわぁっと……』
スペさんが首をかしげてる。ふふ……。
「これは……【テントサウナ】、です!」
「「『テントサウナ……?』」」
異世界人の皆さんは知らないようだ。
そりゃそうだ。
「勇者殿。な、なんなのだテントサウナとは……?」
「見ての通り、テントを張って、その中でサウナを楽しむグッズです」
今アマゾンでも普通に、テントサウナ売ってるんだよね。
それを地球から取り寄せたのだ。
『サウナぁ~~~~~~? はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~』
スペさんが、ちょーがっかりしていた。
おや、どうしたんだろう。
スペさんって、僕の出したものに、いつも感激してたのに。
今回のはなんだか、お気に召さない様子。
『我はなぁ~……お風呂が好きなんじゃ』
「あら、意外」
犬はお風呂苦手だと思ってた。
『風呂はいい。命の洗濯じゃ』
「ふーん……お風呂好きだから、サウナは微妙ってこと?」
てかそもそも、サウナってあるんだ、この世界……。
『サウナなんて、ハンッ。ただ蒸し暑いだけじゃないか。ケースケを否定したいつもりはないが……今回はちょっと、【スペP】マイナスじゃ』
『なんだよスペPって……』
と、ヒキニートさんが突っ込む。
もうすっかりツッコミ役になってるね、この人。
『高慢の魔王スペルヴィアを、喜ばせることで得られるポイントじゃ』
『なるほど』
『ちなみにケースケは今、5000000000000ポイント持ってる』
『もうカンストしてんだろそれ! これ以上Pもらってどうすんだよ!』
ヒキニートさん、突っ込むのお上手ですね。
働いてないくせに。
「ゆ、勇者殿……これがサウナであるのはわかったのですが。これに入ることと、私を強くすること、一体どういう繋がりが……?」
「まあまあ、だまされたとおもって、ちょっとサウナに入ってみてくださいよ」
うーん、と半信半疑そうな、ディートリヒさん。
『ま、仕方ない。ケースケの頼みじゃ。ちょこっと入ってやるかな』
スペさん優しい。
全裸で入るわけにもいかなかったので、僕は異世界から水着を取り出す。
「ど、どうだろうか……勇者殿……?」
ディートリヒさんが、赤いビキニ水着を着ていた。
わ、え、エッチ……。
おっぱい結構おっきいなぁ。
「勇者様……その……恥ずかしいです……」
ヘルメスさんは、パレオを巻いた、水着姿だ。
こちらも……おっきぃ。
「うわはは、ちっさいのぉ、おぬしら!」
でぇん! と爆乳の美女が、現れる……!
「だれ?」
「高慢の魔王スペルヴィア、人間形態じゃ」
あー! ひさしぶりぃ!
ずっとスペさん子犬姿だったけど、そうだった。
この人人間にもなれるんだったねぇ!
「なんで人間姿なの?」
「毛皮があると汗かいたときにむれちゃうからの。あんまりこの姿好かんがの」
スペさんは金色のゴージャスなビキニだ。
しかも結構……え、えぐい……。
股の付け根とか。あとおっぱいとか……。
「なんじゃ、好きな子おるのに、お姉さんに見とれちゃってよいのかぁ?」
「うう、スペさんのいじわるっ」
ちなみに僕も水着に着替えている。
「じゃ、サウナにれっつらごーです!」
大きめのテントサウナだ。
ジッパーを開けて中に入る。
椅子がおかれてる。
そして、暖炉も。
むわ……と暑い室内に、僕らは座る。
「はー。あついのぅ。むしあついのは苦手じゃあ。もうでていい?」
スペさんがすぐ出て行こうとする。
「だめだよ、スペさん。もっと我慢しないと」
「えー。肌べたべたするぅ~。やっぱりサウナは嫌じゃぁ~」
まだまだ。
僕は、カバンから【それ】入りの瓶を取り出す。
そして、暖炉に水をくべる。
ジュゥウウウウウウウウウウウウウウウウ!
「うわっぷ! 蒸気がやばいのじゃ! 暑いのじゃぁ!」
「不思議な匂いのする、水ですね……?」
とヘルメスさん。
ふふふ、でしょう?
「うーうー、なんだか頭がもーろーとしてきたのじゃあ~」
「じゃあ、外に出ましょうか」
ばびゅんっ! とスペさんが外に出る。
で、気づく。
「な、なんじゃこりゃ!?」
テントをでた先にあったのは……。
「プール?」
「水風呂です!」
子供用のプールに、水を入れたものを、あらかじめ用意しておいたのだ。
「水風呂ぉ?」
「はい。さあさあ、こっちは入って」
「えー……?」
と言いつつ、スペさんたちは大人しく、ちゃぽんする。
「ほわぁ……これは……なんじゃ……なんか……ちょうどいい……」
スペさんがとろけた顔になってる。
ふふ……。落ちかけてるね……。
「はい次もういっかい、テント入って~」
「またかの?」
というのを何度か繰り返す。
そして……。
「さ、仕上げです。椅子に座ってください」
と、地球から取り寄せた、サウナ用の椅子を、テントの隣に置く。
スペさんは椅子に座る。
外気が体温を下げる。
「お、お、おおぉお!?」
スペさんが体をびくびくさせて……。
「ふぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡」
甘い声を上げるスペさん。
「にゃにこれぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡ なんか、きもちぇええええええ~~~~~~♡」
ふふ……。
「これが……【ととのう】です!」
「ととにょうう~?」
「サウナに出たり入ったりしてると、こうして……気持ちよくなる……この現象を、ととのうというんです!」
異世界人のみなさんは、このサウナでととのうっていう概念がなかったんだろう。
でも、現代人の僕は知ってる。
サウナで整うことができると!
「ふんあぁ~~~~~~~~♡ やばいぃ~~~~~~~♡ からだけちゃうぅ~~~~~♡」
スペさんが奇声を発する。
「これは……きもちいいなぁ~……♡」
とディートリヒさん。
「外気が心地良いです……」
とヘルメスさん。
「ふにゃぁ~~~~~~~~♡ んにゃぁ~~~~~~~~~♡」
とスペさんが一番気持ちよさそうにしていた。
ふっふっふ、サウナ沼にはまったようだね。
「しかし……勇者様。サウナに入って、一体何がしたかったのでしょう……?」
ヘルメスさんは気づいてない様子。
「まあ、明日、魔物と戦ったときに、わかると思いますよ。僕が何をしたのかって」
ネクスト、啓介ず、ヒント!
魔神水!
正解は次回……!
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