第18話 魔族「自害しろ」
僕の前に現れた、魔族、えと……。
「スペさん、相手の名前なんていうんだっけ?」
『【断頭台のギロチン】じゃ』
「やっぱり意味被ってない……?」
頭痛が痛いさんとか(※←煉獄のインフェルノ)。
もう全部まとめて経験値でいいよ。
経験値さんのみためは、人間サイズのクワガタムシだ。
人間っぽい見た目だけど、頭から2本のツノ、そして背中からは翅。
全体的に黒光りしてる、マッチョなおっさんで……うん……。
なんか、キモい!
「ふぅうううううううううううううううううううううううううううう」
経験値さんが、僕を見て深くため息をついた。
「やめだ。興が冷めた」
「? どういうこと?」
びっ!
経験値さんが、僕に指を向ける。
「貴様は……弱い。我よりも、圧倒的に弱い」
?
何言ってんだろうあの経験値……?
「ふぅ……やれやれ。ダズルを殺った相手と聞いて、少しは骨のあるやつが来たのかと期待したのだが」
ダズルってだれ……?
(※↑幻惑のダズルです)
誰なの……?
(※↑だから幻惑のダズル)
ねえ、誰?
(※↑啓介がさっきたおした魔族です)
「こんな弱いやつとは思わなかったぞ」
「はぁ……何を持って僕を弱いとか言っちゃってるんですか?」
もう首切っていいかなっ?
早く経験値(くび)欲しいんだけどっ。
まあでも、遺言くらいは聞いてあげよっかな。
「その、魔力量だ」
「はい……? 魔力量が、なんですって?」
「ふぅうううう。無知、あまりに、無知……」
腹立つなぁ。
経験値にしちゃうよ?
「スペさん教えて」
『うむ。魔族はな、魔力量で相手の強さを量るのだ』
「魔力量で? じゃあ、魔力が少ないと、相手が弱いって思ってるの?」
『そうじゃ』
え、魔力で何がわかるって言うんだろう……。
「ガキ、貴様の魔力量は……ほぼゼロに等しい。雀の涙程度の魔力しか無い。よって貴様は弱い」
んんぅ?
魔力が【ほぼ】ゼロ……?
おっかしいなぁ……。
「ねえ、スペさんおかしくない? 僕の魔力ってゼロになってるはずじゃ?」
『ふふふ、それはのぅ……』
スペさんが気持ちよく、解説しようとしたところに……。
カランッ……!
僕の前にナイフが落ちていた。
「なんです、このナイフ」
「我からの慈悲だ」
どうやら、経験値さんが、僕の足下にナイフを投げてきたみたい。
「はぁ……慈悲……?」
「そうだ。おい人間のガキ……そのナイフで、自害しろ」
え、自殺しろってこと?
僕と、肩に乗ってるスペさん、目を見合わす。
お互い首を傾げる。
「貴様が我と戦えば、死ぬよりも辛い苦しみを味わうことになる。そんなのはいやだろう? 我もこんな雑魚の血で拳を穢したくない。ゆえに、そのナイフを使わせてやるから、自分で死ね」
「『…………』」
僕とスペさん、目を見合わせ、首をかしげる。
一方……。
「ま、まま、待て……! お、おまえの……相手は……こ、ここ……この、わ、私だぁ……!」
ずっと黙って震えていた、ディートリヒさんが、銃を手に持って言う。
カタカタカタカタ……と銃身がぶれまくっていた。
え、寒いの……?
(※↑恐ろしい魔族を前に怖がってます)
「ふっ……」
と経験値さん(名前なんだっけ……?)
が、少し笑う。
(※↑断頭台のギロチンです)
「女のほうが気骨があるではないか。それにくらべて……だらしない。なんとだらしないのだ、小僧。女に守られて、男として恥ずかしくないのか?」
別に恥ずかしいなんて思わない。
地球に居るときは、姉ちゃんが僕を守ってくれていた。
女とか、男とか、関係ないと思う。 狭い価値観の人だなぁ、あの経験値。
「だ、だ、だま……黙れ! 勇者様は……私が守……」
ディートリヒさんが銃を発砲しようとした。
キンッ……!
しかし銃身が、一瞬にして切断された。
もちろん僕は目で追えていた。
「な、なんだ!? 銃身がいつの間にか真っ二つに!? なにをされたのだぁ……!?」
ディートリヒさんが震えてる。
「ふっ……我が
「あ、あああ……あ……」
震えるディートリヒさん。
もういいかな?
「下がってて、ディートリヒさん。ヘルメスさんのところまで」
僕のずっと後ろに、ヘルメスさんボディの、ヒキニートさんがいる。
『杖の勇者め……一人だけ逃げよって……』
スペさんがあきれたように言う。
ヒキニートさんがクズなのは、今に始まったわけじゃないので、別段驚かない。
「す、すみませぬ……」
ディートリヒさんが下がっていく。
あとには僕と、スペさん。
そして経験値さんだけが残される。
「さぁ、小僧、そのナイフで自害しろ。でなければ……我の異能で、貴様に教えてやろう」
「何を?」
「世の中には、死ぬことよりも辛いことなんて、たくさんあるっていうことなぁ……わーーーはっはっは!」
何笑ってんだろう。
はあ、もういいや。やっちゃおう。
「なんだ、戦うつもりか? そんな魔力量でぇ?」
「てい」
僕はちょっとむかついたので、自分に嵌めてる、【暴食の腕輪】を外した。
僕の魔力を喰らう、制御腕輪を外した瞬間……。
「オロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ!」
と、経験値さんが、ゲロ吐いたのだ。
うげえ、きちゃなぁい。
「な、なんだ……? 断頭台のギロチンが、急に吐き出した……だと……?」
ディートリヒさんは驚いてる。
僕も正直、何が起きてるのかさっぱりわからない。
「あのぉ、どうしたんですか?」
「無理ぃ……!」
「え?」
経験値さん、大泣きしながら、首を振る。
「無理無理無理ぃ……! わたしもぉ無理ぃいいいいいいいい!」
えええー……?
なに? 何が無理なの……?
(※↑断頭台のギロチンは、ケースケの圧倒的魔力量を前に、びびり散らしてる)
ふっふっふ、とスペさんが笑う。
『相手が悪かったの。断頭台のギロチンよ。貴様が相手してるのは、魔力を完全にゼロにする暴食の腕輪を身に付け、それでも、魔力量が漏れ出るほどの、相手だぞ?』
どやぁ……と得意マンフェイスのスペさん。(女子だからウーマン?)
「おたすけぇええええええ! おたすけくださいぃいいいいいいいいい! どうかぁあああああああああああ!」
えー……何この人。
急に命乞いしだしたんだけどぉ。
「僕、何かしちゃいましたかね?」
きょとん?
なんかブルブルと震える経験値さんを見てたら、やる気なくなっちゃった。
弱すぎるんだもん。
(※↑啓介が強すぎるだけです)
どうしよっかなぁ。
あ、そうだ。
「てい」
僕は、ギロチンから投げられた、ナイフを投げ返した。
からん。
「あ、あのぉ……? これは……?」
「経験値さん、自害してくださ」「ハイ喜んでぇええええええええええええ!」
ギロチンさんがナイフを、自分の首につきつけ……。
ザシュッ……!
ぼとっ!
「自殺しちゃった……こわぁ……」
『ま、当然の結果じゃろうて』
「そうなの?」
『うむ。ケースケと戦っても、苦しい死を味わうだけだからのぅ。賢明な魔族じゃ』
そうかなぁ。
だいぶバカな気がするんだけど。相手の力量を見誤って、自死しろとか言ってくるし。
ま、いっか!
「
カバンから黒い触手が伸びる。
経験値さんの
『聖武具のレベルが上がりました』
『聖武具のレベルが上がりました』
『
おっしゃ……!
「一気にレベルが、2も上がったぞぉう!」
『ぬはは、よかったのぅ。これで愛しの大勇者の封印解除に、近づいたのぅ』
「ちょ、やめろし~♡ からかうなし~♡」
『ほれほれ、好きなんじゃおぉ? なあ、なあ、ミサカのこと好きなんじゃろぉ?』
あはは、うふふ……と笑い合う僕たち。
『クレイジーだ……首を集めて笑ってやがる……』
ヒキニートさんが何か言っていた。
「なんですか?」
『なんでもないっす!』
暇なのかな?
「ちゃんと情報集めてる? サボってたら経験値にしちゃうよ……? なーんてうっそぴょーん」
『…………』
ヘルメスさんが淡吹いて倒れていた。 なんでぇ……?
(※↑冗談に聞こえなかったからです)
さて……一方、ディートリヒさんはと言うと……。
「な、なにが起きたのだ……?」
ディートリヒさんが困惑顔。
「急に魔族が勇者殿に怯えだしたとおもったら、自殺した……? いったいどうして……?」
さぁ……正直なにがなにやら。
(※ディートリヒは、あまり強くない一般人なので、勇魔の圧倒的な魔力量を観測できませんでした。だから、この莫大な魔力を前に、何も感じられません)
(※一方ギロチンはある程度の強さがあるため、啓介の暴力的なまでの魔力量に恐怖し、死ぬことを自ら選んだのです)
(※ということを、この場のスペルヴィアと杖の勇者以外理解してません)
「ま、いっか!
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