第14話 瘴気? なにそれ美味しいの?
盗賊団のデブ団長を、倒した。
麻酔針で眠らせたあと、ロープでぐるぐる巻きにして、放置しといた。
こんなののために時間を割くの、惜しいもんね。
まあいちおう、ジャガーさんに取りに来てもらう手はずにはなっている。
今、杖の勇者セーバーさんんとこ行ってるから、帰ってきたら回収しといてって、ヘルメスさん経由で伝えておいたんだ。
で……だ。
僕らはいよいよ、
「ふぉおお……! おっきぃ~! 木ぃ!」
僕の目の前には、巨大樹の森が広がっている。
木の一本一本が、もうびっくりするくらいでっかいんだ。
東京タワーかっ。
(※↑さすがに盛りすぎです)
鬱蒼と生い茂る巨大樹。
この奥に、魔蟲っていうヤバい敵がいるらしい!
『気をつけるのじゃ、ケースケ。ジャガーノートが言っていた、【ヤバいもの】がここにあるらしいからの』
元々ここはジャガーさんのナワバリだった。
でも、ここにヤバい虫の卵を発見したらしい。
で、ジャガーさんは逃げてきたって言っていた。
つまり……。
「それを収納すれば、聖武具のレベルが上がるってことだねっ。わくわくっ」
すると……。
どさっ……!
「え……? え!? ど、どうしたんですか、二人ともっ」
ヘルメスさんとディートリヒさんが、その場に倒れ込んだのだ。
二人とも顔が真っ青とおりこして、真っ白になっている!
「わわわ!
『待て、ケースケ。こやつらは、瘴気を吸って倒れたようじゃ』
瘴気!
たしか……死に至る毒ガス……だっけ?
大変じゃん!
なおのこと直ぐ治療しないとっ!
二人は僕をここまで、道案内してくれた。そのせいで、瘴気を吸って倒れちゃったんだから。
僕のせいで死んじゃう!
そんなのはだめだっ。二人を着けてくれた、オタクさんにも迷惑かけちゃうし!
「でも……どうしよう。
『ケースケ。今こそ、
「! そうかっ」
勇魔のカバンへと進化した際、僕は新しいスキルを身に付けた。
そのうちの一つ。
まだ、使っていないスキルがあった。
「
ぱかっ、と僕のカバンが開く。
カバンから出てきたのは魔法陣だ。
魔法陣は空中で留まる。
そして……。
カァアアアアアアアアアアアアアアアアア!
「ぬわ! ま、まぶし……」
太陽のような、黄金色の光が魔法陣から発生。
目を開けてられないほどの、強い光だ。
やがて魔法陣の中からゆっくりと、大きな……箱が出現する。
黄金色の、横に長い直方体。
どこか、エジプトのミイラが入ってる棺桶を彷彿とさせられる。
箱の上面には、黄金でできた鷲が2羽座っている。
「これが……
ず……ずずず……。
箱の上蓋が、横にずれていく。
そこから出てきたのは……。
「黄金の……目玉……?」
ミレニ●ムアイみたいな、黄金でできた、巨大な眼球が出現した。
生物感は全くない。
巨大な黄金の塊を溶かして、球体にしたような、そんな目玉だ。
目玉が、瘴気で苦しんでいる二人をロックオンする。
ビゴォオオオオオオオオオ!
「目からビームだ!」
『我ビームのパクりじゃあ!』
目から出たビームが二人の体に当たる。
けど、スペさんの我ビームみたいに、相手を破壊するような、禍々しい色合いをしていない。
太陽光線を彷彿とする光が二人の体に当たる。
瞬間……。
じゅおぉおお……!
二人の体から、黒い靄のようなものが吹き出す。
そしてそれは、目からの光線を浴びて、煙のように消えていった。
やがて、黄金の目玉がビームを辞めて、箱の中に戻っていく。
箱は魔法陣の中に戻り、そして魔法陣はカバンの中に収納されていった。
「う、うう……あれ?」
「体がとても楽になりました……」
良かった!
体内の瘴気が浄化されたようだっ。
ふぅ~……よかった。
二人が無事で。
「あ、あの……鞄の勇者殿。何をなさったのですか?」
ディートリヒさんが困惑しながら僕に尋ねてきた。
「二人は瘴気を吸って倒れてしまったんです。僕のせいで、すみません」
僕が瘴気を吸っても無事だから、つい、二人も大丈夫だって思ってしまった。
思い込みで二人を危険な目に遭わせてしまった。
「ごめんなさい」
「い、いや! 鞄の勇者殿が謝ることはないですっ。私が弱いのに、着いていきたいとワガママを言ったせいですっ」
たしかに二人は弱い。
(※↑勇者、魔王基準)
弱い二人を連れてくって決めたのは僕だ。
今回のは僕の落ち度だった。反省だっ。
(※↑ケースケがいなかったら二人は即死だった)
「しかし……勇者様」
ヘルメスさんが僕を見ながら言う。
オッドアイになっていた。ヒキニートさん見てるみたいだ。
「
「勇魔のカバンの持つ派生スキルの一つですよ。あらゆる邪悪なる者(物)を、祓う効果があるんだって」
「! 浄化の力……! それって……神の力ではありませんかっ!」
いやいや、神って……大げさだなぁ。
ただ毒ガスを中和しただけなのに。
(※↑奇跡の御業です。神、あるいは神に祝福を受けた特殊な聖女にしかできない芸当)
きっとヒキニートさんも、そう思ってるに違いない。
(※ひっくり返って驚いてます)
「まあ、無事で何よりです」
「ほんとに、ありがとう、鞄の勇者殿……」
でも、これで証明された。
「二人とはここでお別れですね。瘴気の中進んでけないでしょ?」
巨大樹の森をよーく観察すると、紫がかった靄が見える。
僕、これ知ってる。
ダンジョンの中、魔族の……煉獄……きょうじゅ……いや、煉獄……頭痛が痛いさんだ。
(※↑煉獄のインフェルノ)
頭痛が痛いさんをやっつけたときに、発生した毒ガス。
これが……瘴気!
「
だから、中にうかつに入れない……と。
「じゃ、二人とも。ここで見送りは十分です。あでゅー」
「「イヤイヤ待って待って!」」
二人が全力で僕を止めてきた。
えー?
「どうしたんです?」
「危険だ! あんな高濃度の瘴気の中入ったら、君も死んでしまうぞ、鞄の勇者殿!」
ディートリヒさんが首を横に振りながら言う。
うーん……大丈夫だと思うけどなぁ。
「僕なら大丈夫です。二人より体が丈夫なので」
「しかし……これで鞄の勇者殿が一人で入って、瘴気に当てられ、気絶でもしたら……一体誰があなた様を治療するというのです?」
うーん……確かに。
念には念を入れておいたほうがいいかも。100%ほぼあり得ないことだろうけども。
『我がおるが?』
「スペさん治療できるの?」
『ふぐぅううう』
できないみたい。
そりゃそうだ、スペさんが治療してるとこ、見たことないもんね。
「あたしは治癒魔法が使えます」
「私も、近いことができるぞっ」
じゃあやっぱり念には念を入れて、二人についてきてもらうかぁ。
でも、そうなるとこの瘴気が邪魔だなぁ。
『瘴気を祓うとなると、大勇者ミサカの聖剣技が必要になるの』
あれだ。
瘴気を祓う、剣の奥義。聖剣技・祓魔。
でも……。
「今の僕のレベルじゃできないなぁ」
神眼持ちの僕は、ミサカさんの剣技をトレースできる。
けど、あくまで初級の聖剣技だけをマネできるのだ。
『大勇者ミサカの聖剣技・祓魔は、最上級奥義じゃ。彼奴の魂が憑依してる状態でないと使えぬ』
ミサカさんは今もカバンの中で眠ったまま。
じゃあ祓魔は使えないか。
「先ほどの、
「あれは、あくまで物(者)に取り付いた邪悪を、取り払う技なので。瘴気を完全に消し去ることはできないんですよ」
二人の体から出た瘴気は、あくまで、体外に放出され、空中に霧散しただけ。
中和させたわけじゃないんだよね。
「うーん……うーん……中和はできない……うーん……ん? まてよ……」
僕は自分のカバンをじぃと見た。
このカバンは、何でも収納できた……。
アイテムなら、なんでも……なんでも……。
だってデブ団長の、光の魔力を吸い込めたし……。
……うん。
「行けそうな気がする!」
「どうなさるおつもりで……?」
僕はカバンをかぱっ、と開ける。
「困ったときは、やっぱりこれ!
瞬間……。
ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
黒い触手がでない、初期の、収納スキルのように、カバンが吸い込みを始める。
でも、吸引力が桁違いだ!
なにせ、あのぶっとい巨大樹がぐわんぐわんと揺れ動いてるんだもん!
引き抜かれてないのが奇跡ってレベルで、大樹が傾いてる!
で……!
「瘴気が、勇者様のカバンの中に吸い込まれていきます!」
「そおおおおおおおいっ!」
ヘルメスさんが驚く横で、僕は瘴気を吸い込みまくった。
気分は星のカ●ビー!
瘴気が大量に吸い込まれていく。
ドンドン吸い込まれていく。
ドンドン……。
ドンドン……。
まだ吸い込んでいく!
どんだけあるんだよ!
……って、ちょっとウンザリしだした、そのとき。
紫色のガスが消えた。
「あ、全部飲み込んだのかな……?」
あたりに静寂が戻る。
「す、すごい……森を包んでいた、あんな高濃度の瘴気が……きれいさっぱり消えてしまっている……!」
澄んだ空気があたりに漂っていた。
すうぅ……はぁ……うん。空気が美味い!
「長年帝国の頭を悩ませていた、
ヘルメスさんがびっくりしてる。
そんなに驚くことかなぁ。ただ吸い込んだだけだよ?
(※↑杖の勇者はひっくりかえって、後ろでんぐり返しを決めました)
ま、何はともあれ、これで奥へ進めるね!
いざ、
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