第24話 大勇者の剣術を習得し、更に強くなる
魔族の頭痛さん(本名忘れた)をぶっ倒し、魔核という呪物を取り込んだ結果、大勇者ミサカさんに掛っていた呪いが一つ解けた!
「ミサカさん、おにぎり以外で何食べたい? なんっでも取り寄せるよ!」
現在、僕の体に、ミサカさんの魂が憑依してる状態だ。
ミサカさん今までずっと飲まず食わずだったからね、おいしいものいっぱい食べさせたい!
【ありがと! でも、そんな時間ないかも】
「え……そうなの?」
【うん。こっちに出てられるの、あと数分くらいかな。そしたら、また眠りにつくと思う。まだ私を縛る呪いが完全に解除されたわけじゃないからね】
そっか……。
残念……。
【でも、呪いを解いていけば、外に出れる時間が延びると思うの】
「! そっか! じゃあ僕、頑張るよ! ほどほどに!」
と、そのときである。
「うが……!」「がはぁあああ!」
「ど、どうしたのシーケン、チビチック……うぐぅうう」
黄昏の竜の皆さんが、急に苦しみだしたのだ。
え、どうしたんだろ……。
『いかん!』
ぼんっ、とスぺさんがフェンリル姿になる。
『極大聖魔結界!』
スぺさんが口を開いて、叫ぶ。
魔法陣が頭上に展開。そこから、半透明なドームが僕らを覆う。
「ゲホ! ごほ!」「い、息が……息ができる……」「死ぬかと思った……」
なんだったの? 何が起きてるんだ?
【魔王、これってもしかして……】
『……そうじゃ、大勇者。【瘴気】、じゃ』
スぺさんはどうやら、状況を理解してるようだ。(スぺさん、僕にミサカさんが憑依してるのにい気づいてるみたい)
「しょーき、って?」
『死を招く、悪い空気のことじゃ。吸い込むとものの1分もせず、即死する。たとえ勇者であってもじゃ』
死を招く……吸い込んだら死んじゃうってこと!?
「そんな! 瘴気だなんて!」
真っ青な顔で、エルシィさんが説明する。
「いにしえの人間と魔族の大戦時、数多くの死傷者を出したっていう記録が残っている。あやうく、人類が滅びかけたって」
!? 人類を滅ぼしかける、やばい空気。
「おかしいわ。瘴気はその大戦時以降、発生の記録がなかったはず!」
確かにどうして今発生してるか、気にはなる。
でも、一番気になるのは、今僕らの置かれてる状況だ。
『現在、我が結界を張り、瘴気がおぬしらを殺すのを防いでおる。じゃが、結界の維持には莫大な量の魔力が必要じゃ。あと5分もせぬうちに魔力が切れる』
料理を作って、スぺさんに食べさせれば、魔力を回復させられる。
でも料理を作るための食材を取り寄せるのに、お金がかかる。
つまり……この状態は、長く続かないってこと。
「だ、打開策はねーのかよぉ、フェンリルさんよぉ! 瘴気を消す魔法とかないのかよぉ!」
チビチックさんがスぺさんに尋ねるも、彼女は首を振る。
『瘴気を消すことは、我に【は】できぬ』
「そんなぁ~……」
絶望の表情の、チビチックさん。
黄昏の竜の皆さんも、表情が暗い。
……でも。
僕は、不思議と絶望を感じてなかった。
「【大丈夫!】」
僕の声と、そして……大勇者ミサカさんの声が、重なった。
やっぱり、そうなんだ!
僕は、ミサカさんなら、できるって予感があった。
スぺさん、さっき言ってたもん。魔王には、消せないって。
そう、つまり、大勇者になら、できるって!
「【任せて!】」
「ま、任せてって……どうするの、ケースケ君」
エルシィさんに問われても、僕は答えを持っていない。
「ミサカさん、お願い」
【OK! ちょっと、体借りるね!】
ミサカさんに、体の主導権をわたす。
がくん、と僕の体から一瞬だけ力が抜けた。
次の瞬間、体に、不思議な力がみちみち、僕の体が勝手に動く。
「【剣士の君、ちょっと、剣、借りるね】」
「え? あ、え? け、ケースケくん……?」
シーケンさんが困惑してる。
ミサカさんは僕の口を借りてしゃべっている。
でも、外から見れば、僕がしゃべってるようにしか見えない。
僕はシーケンさんから、
「ちょ!? け、ケースケ君! 何するつもり!?」
『瘴気を打ち消すつもりじゃ』
「瘴気を消す!? そんなの無理よ……瘴気を消す方法なんて、記録に残ってないのに……」
『できる。信じるのじゃ』
エルシィさんは凄く、すごく、心配してるのがわかる。
でも、最終的にはスぺさんと僕を信じてくれるようだ。
【けーすけくん。信じてくれる?】
「うん! もちろん!」
ミサカさんは結界のふちに立ち、剣を構えた。
手を前に出し、重心を落として、突きの構えをとる。
「!? そ、その構えは!? まさか!」
「な、なんだよシーケン、あの構えがどうしたんだよ?」
「あ、あれは……伝説の大勇者が使っていた、世界最強の剣技! 【聖剣技】!」
「せーけんぎ……大勇者って、神眼の大勇者ミサカ・アイか!?」
「ああ、おれは
すると、
まばゆい太陽のような、強く、激しく、それでいて温かい……光。
体に、刃を通して力が満ちていく。
「聖剣技【
放たれた強烈な突きの後から、音が……ついてた。
ズバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
それは
強い光を放つ一撃が、大気をふるわせ、そして……。
「瘴気が……消えてく!?」
「す、すげえ……部屋中に広がった瘴気が、きれいさっぱりなくなってくぜ……」
エルシィさんとチビチックさんが、驚く。
その一方で、シーケンさんは、声を震わせながら言う。
「……ほんものの、聖剣技だ。
「【わわ、剣が壊れちゃった……ごめんなさい!】」
「剣なんてどうでもいいです! それより……おあいできて、光栄です。伝説の大勇者、ミサカ様!」
ぶんぶんぶん! とシーケンさんが僕の手をにぎって、何度もふる。
「でったときから、ただものではないと思っていました! まさか、ミサカ様が、生まれ変わっていらっしゃったとは!」
ん?
なんか、シーケンさん、勘違いしてない?
「今までずっと感じていた違和感の正体がはっきりしました! あんなに強かったのは、大勇者様の生まれ変わりだからなんですね!!!」
あ、やっぱり~。
【あ、ご、ごめん! けーすけくん、あと頼んだ!】
「ちょ、ミサカさん!?」
【どうやら時間切れみたいなの! またね、けーすけくん!】
すぅ……と、僕の体から、ミサカさんの魂が抜けていくのがわかった。
もぉ~……。しょうがないなぁ。
スぺさんが子犬姿に戻って、ぴょん、と僕の頭に乗っかる。
『しかし、聖剣技。久方ぶりに見たが、ふふ……やはり、見事なものじゃったな』
スぺさんはあの凄い剣技を、見たことがあったから、大丈夫だって言ったんだね。
すごいなぁ、あれ。
ファンタジー小説に出てくる、ヒーローみたいだった。
かっこよかったなぁ。
僕もあんなふうに、かっこよく剣が使えたら……。
『条件を達成しました』
『エクストラスキル【聖剣技(初級)】を習得しました』
え、あれ!?
「どうしました、大勇者さま!」
シーケンさんの中では、僕はすっかり、大勇者の生まれ変わりだと思われてるようだ。
「ちょ、ちょっと放して……スぺさんとしゃべりたい」
『む? どうした?』
僕はシーケンさんたちから離れて、聖剣技を習得したことを、スぺさんに話す。
『なるほど……おそらく、大勇者の魂をその身に宿し、剣をふるったことで、大勇者の剣術スキルが自動的に身についたのだろう』
「そ、そんなことってあるの……?」
『普通は、ありえん。じゃが、おぬしは召喚勇者、この世界のルールから逸脱するものじゃ。だから、そういうイレギュラーが起きても、おかしくはない』
ミサカさんに体をかして、剣をふるっただけで、大勇者の凄い剣術が、身についたってこと……?
『そうはいっても聖剣技(初級)じゃ。全盛期のミサカの剣には遠くおよばない』
じゃが、とスぺさん。
『史上最強の勇者の剣技じゃ。初級で、すでにこの世界でトップレベルの強さをもつな』
え、えっとぉ?
じゃあ、僕、なんにもしてないのに、世界トップレベルの剣士になったってこと?
「「「大勇者さま!」」」
振り返ると、黄昏の竜の面々がいた。
そして、僕に……土下座してきた。え、ええ~? なにぃ?
「大勇者さまとはいざ知らず、無礼な振る舞い、本当にすみませんでした!」
「ガキとか言ってほんとすんません!」
「散々怒鳴ったり突っ込んだりしたこと、お許しください!」
僕が、伝説の大勇者の生まれ変わりってことに、完全になってる……。
ええー……違うんですけどぉ。
『まあ、ほんとのこと言ったところで、信じてもらえぬじゃろうから、今はこれでよいのではないか?』
まあー……そっか。そうだね。説明めんどいし。
僕は、この一言だけ言っておく。
「このことは、内密にお願いしますね」
「「「ははぁーーーーー!」」」
まあ、なにはともあれ、僕は魔族を倒し、ミサカさんから大勇者の剣術を習得したのだった。
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