第22話 チートカバンで魔族を相手に無双



 ダンジョン25層にて、魔族と出会った。

 黄昏の竜の皆さんは戦う前から戦意を喪失してしまう。


 僕はひとりで、魔族と戦うことになったのだった。


『冥土の土産におしえてやろう! おれの名前は【煉獄のインフェルノ】! 数多くの英雄を、おれの炎で殺してきた男だぁ!!』


 煉獄のインフェルノ……。

 そんな……。


『ふはは! 今更怖じ気づいたか人間サルのガキぃ!』

「バカみたいなあだ名ですね」


『なんだとぉおおおおおおおおお!?』


 え、なんで怒ってるんだろう……?


「だって、煉獄のインフェルノって……。それ、意味被ってません? なんか、頭痛が痛いみたいな感じで、バカみたいだなぁって」


 って思わない?


「す、すごいわ……あの恐ろしい魔族を前に、平然としてるなんて……!」


 這いつくばった状態で、エルシィさんが言う。

 え、ギャグじゃないよね……?


 何もしてないのに驚かれてるんだけど……なんでだろ?


『ケースケ。我が戦おう。おぬしは下がっておるのじゃ』


 スペさんがどうやら、戦おうとしているらしい。


「え、いや大丈夫でしょ。スペさんが出るまでもないっていうか」


 黄昏の竜さんとの戦いを見てわかったことがある。


「だって、インフェルノさん、火球ファイアー・ボールしか使えないんでしょ?」

『!?』


「いや、だってさっき、凄い自信満々に、どや顔で、『さっきのは火球ファイアー・ボールだ』とか言ってたし。弱い魔法しか使えないのに、イキってるのかなって。だいぶダサいなって」


 だからあんまり強い感じしないんだよね。


「あんなの僕ひとりでやるよ。スペさんは気絶してるふたりを守ってあげて」

『ふむ……そうか。わかった。しかし、危なくなったら、我がおぬしを守るからな』


 ぴょん、とスペさんが飛び降りる。

 そして、気絶してるシーケンさんのお腹の上に乗っかる。


 スペさんがいれば大丈夫だよね、あのふたり。


『貴様……! そんな犬っころより、おれのほうが弱いとでもいいたいのか!』


「え、うん(即答)」


 だってその子犬、高慢の魔王スペルヴィアだし。

 大勇者ミサカさんと並び立つほどの、強い人だもん。


「頭痛が痛いさんより、スペさんのほうが何倍も強いよ」

『…………もう、容赦はせんぞぉおおおおおおおおおおお!』


 頭痛さん、もとい、インフェルノさんは体から炎を出す!

 おお! すごい、なんかドラゴ●ボールみたい!


『殺してやる! ガキぃいいいい!』

氷連槍フリーズ・ランサー!」


 エルシィさんが魔法を発動させる。

 人間の子供くらいの大きさの、氷の槍が、雨あられのごとく敵に降り注ぐ。


 だが……。

 じゅぅううううううううううう!


「そんな! ケースケ君のおかげで、強化された中級氷魔法が、当たる前に消滅した! なんて火力!」

『こんな児戯でおれを殺せるわけがないだろうが!』


 と頭痛さん。


「そうだそうだー」

「『おまえが言うのかよ!!!!!!!!!!!』」


 エルシィさんと頭痛さんがダブるツッコミ。


「炎ポケ●ンに氷の技が聞くわけないじゃないですかー、常識ですよ」

「ポケモ●ってなによ! あ、て、敵が突っ込んでくるわよ!」


「? 頭痛さんはさっきツッコんできたけど」

「ツッコミって意味じゃなくてほら後ろぉおおおおおおおおお!」


 うしろ?

 あ、頭痛さん直ぐ近くまできてた。


『死ねぇ……!』


 ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


「拳が当たったと同時に大爆発が起きた! あれが魔族の能力アビリティね!」


『ふはは! そうだ、おれたち魔族にはそれぞれ、固有の超強力な力、能力アビリティがある! おれの能力アビリティ【煉獄】は、触れたモノを煉獄の業火で万物を焼く恐ろしい力よぉ!』


「そんな……! ケースケくぅうううううううううううううん!」


「なーにー?」

「『なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?』」


 またエルシィさんと頭痛さんが、ダブルで驚いてる。

 仲良いなぁ~この人たち。


『そ、そんな馬鹿な!? どうして貴様無事なのだ!?』

「どうしてって言われても、無事なものは無事だし」


 全然痛くもかゆくもないや。


『ふ……まったくレベルの低い連中じゃ。ケースケが何をしたのか、わからぬとはな』


 スペさんが後方で腕を組みながら、したり顔でうなずいてる。


「ふぇ、フェンリル様はわかったの……?」

『無論。ケースケに攻撃が当たる瞬間、スキル【反射】が発動していたのじゃ』


・反射(SSS)

→相手の攻撃が当たる瞬間、眼前に魔法の鏡が出現。敵の攻撃を反射する

 ※反射中は攻撃も移動もできない。


『彼奴の能力アビリティ、煉獄を、ケースケは完全に反射した。だから、無事なのじゃ』

「攻撃が一切効かないってこと!?」


 ミラーコ●トってこと?


『攻撃の完全反射だと!? なんだそれは!? 反則じゃないか!!!!!!』


「え、戦いにルールなんてあるんですか?」


 遊●王とかポ●カみたいに。

 初耳~。


人間サルの分際で煽りよってぇ!!!!!!!!』

「え、これ煽りになるの……頭痛さん?」


『おれの名前は煉獄のインフェルノだぁあああああああああああ!』


 煉獄さ……頭痛さん(謎の強制力)が、連打を浴びせてくる。


 ドガガガガガガガガガガガガガガッ!


『ふははあ! 無駄無駄ぁ! 反射は自動スキルじゃ! いかに素早い攻撃をしてこようと、すべて反射してみせるぞ!』


 ちなみに、頭痛さんは反射スキルで弾かれた炎で、ダメージを負っていない。

 多分そういう能力アビリティなのか、炎に対して凄い耐性があるのかも。


 守ってばかりじゃ勝てないってことか。


『ぜえ……はあ……く、くそぉ! なんだ貴様は……』

佐久平さくだいら 啓介です。長野県出身で、両親健在、姉がひとり。今度姉に赤ちゃんが生まれる予定です」


『誰が貴様の家族構成を聞きたいと言った!?』

「え、違うんですか?」

『くそぉおおおおおおお!』


 頭痛さんが僕にまたしても、パンチを食らわせようとする。

 いい加減うざいな。


 パシッ!


『なっ!?』

「あんな素早いパンチを、ケースケ君が受け止めたですってぇ!?」


 素早いパンチぃ?

 何言ってるんだろう。


「遅すぎて蚊が止まるかと思いましたよ」

『ば、馬鹿な!? 魔族のパワーとスピードは、人間を遥かに凌駕してる! 攻撃を目しすることなど不可能!』


「いや普通に見えてますし」(※←神眼の超動体視力のおかげです)


 というか……。


「なんか、頭痛さんもそんな強くないですね」


 ここに出てくるモンスターと一緒で、攻撃がすっごく遅いし(※←神眼の以下略)


 煉獄とかいうたいそうな名前の能力アビリティでも、敵を倒せないし(※←反射スキルがヤバすぎるだけです)。


『ふ……初めてだよ……このおれをここまでにコケにした、馬鹿な人間サルはぁ……!』


 ばっ! と頭痛さんが両手を挙げる。


「もぉ怒ったぞぉ! 貴様ら全員! 灰も残らず消しとばしてくれるぅううう!」


『ふむ。どうやらやつは、火の魔法に自らの煉獄を付与し、超過力の炎を生成して、このダンジョンまるごと吹き飛ばすつもりのようじゃな』

「なんですてぇ!?」


 頭痛さんが元●玉のポーズ取ってる。

 その間に、空中にはさっきよりも大きな、火の玉が形成されていた。


『ふははあ! もうこれで貴様らは終わりだぁあああああああ!』


 うーん、ぶつけられると困るな。

 

「け、ケースケ君……どうしよう……」


 僕には反射スキルがあるから、多分あの攻撃は効かないだろう。

 でも……スペさんや黄昏の竜の皆さんには、ダメージが通ってしまう(反射は僕に対する攻撃を弾くだけだから)


 それは、いやだった。


「大丈夫ですよ、エルシィさん。あんなのたいしたことないので」

『はっ! 馬鹿な人間サルめ! この超巨大炎玉を、いったいどうやって防ぐというのだ!』


「いや、防ぐ必要ないですし」


 僕は聖武具のふたを、パカッと開ける。


「収納!」


 瞬間……。

 シュゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 カバンのなかに、空気が吸い込まれていく。

 頭痛さんが生成した、【魔法】の火の玉が、カバンの中に吸い込まれていった……。


『……………………は?』


 頭痛さんは、うれしくもないのに、ばんざーいしてるという、バカみたいな態勢のまま固まっていた。


『なるほど。勇者の鞄の派生スキル、魔法ボックスを使ったのだな』

「そう、魔法ならなんでも吸い込み、収納できるスキル」


 さっきの火の玉は、頭痛さんが魔法で作ったモノ。

 ならば、魔法ボックスで収納できる。


 そして、収納できるということは、取り出せると言うことで。


「おかえし」


 僕はさっき収納したばかりの、火の玉を、頭痛さんめがけて吐き出す。


 ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


『ふ、は! ば、馬鹿め! 自分の炎で、火傷するバカがどこにいる!?』


 そう、反射スキルではじき返された、煉獄の炎で、頭痛さんはダメージを負わなかった。


「自分の炎だけ、なら……ね」


 頭痛さんに攻撃が当たる。


『ぬぐわぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!』


「ほ、炎の攻撃が効いてる!? なんで!?」


 エルシィさんが不思議がっている。

 頭痛さんは自分の煉獄攻撃では、ダメージを負わない。ならば……。


「頭痛さんの煉獄に、僕のスキルを上乗せしたんです」

「スキルの、上乗せ……?」

「はい、【加温】スキルを使いました」


 鍋の勇者さんの派生スキル、加温。


「触れたものの温度を、上限なしに上げるスキルです。魔法■に取り込んだ炎の温度を、極限まで上げました!」

「あ、上げった……ってどれくらい?」


「6000℃!」


 確か太陽の表面温度がそんなものって聞いたことある。

 だからその数字にしてみました!


「ろ、6000……なんで周りにいるあたしたち無事なの?」

『わからぬ。が、勇者の力がかかわってるんじゃろう。敵にしか当たらぬみたいな』


『うぎゃぁああ! あが、あががが、あがぁあああああああ!』


 頭痛さんはしばらく悶えたあと、動かなくなってしまった。

 しゅぅうううう……。


 黒焦げ状態でピクリとも動かない頭痛さんを見て、エルシィさんが呆然とつぶやく。


「信じられない……まさか、あの恐ろしい魔族を、こんなあっさり倒しちゃうなんて……」『さすがじゃ、ケースケ! あっぱれじゃー!』

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