第21話 サクサク迷宮攻略からの魔族登場
僕の作った装備+料理のおかげで、黄昏の竜の面々は超パワーアップした。
「そりゃああ!」
ズバァアアアアアアアアアアン!
シーケンさんの
「おらおらおらおらおら……!」
ズバババババババババッ!
チビチックさんの高速(自称)の連続攻撃で、
「
どごぉおおおおおおおおおおん!
エルシィさんの魔法で、
皆さんが敵を、一蹴してくれる。
今まで見たいに、敵が出てくる→長々と戦闘、ということはない。
ダンジョン探索は、非常にスムーズに進んでいた。
さて。
「いやぁ、ケースケくんのおかげで、おれたちかなり強くなれたよ!」
「モンスター倒しまくって、レベルもそーとー上がったぜ!」
シーケンさんとチビチックさんが、笑顔で言う。
現在、僕らは26層を突破。
25層へと繋がる階段を上っている。
「良かったですね。あ、でも、そろそろ魔力が切れちゃうんじゃないですか。25層入る前に、ご飯食べます?」
僕の問いエルシィさんが答える。
「大丈夫よ。ケースケ君の料理のおかげで、魔物をたくさん倒せるようになったわ。その結果、レベルが上がり、素の力も上がってるの」
はえー、そうなんだ。
皆さん、ちょっとは強くなったみたい。(←※全員、人類強さランキングで最上位層に入ってます。召喚者・転生者除く)
「こんだけ強くなったらよぉ、【魔族】も楽勝で倒せちまうかもなっ」
チビチックさんが興奮気味に言う。
「魔族?」
ネット小説ではよく見掛けるフレーズだ。
凄い魔法の力を持っている、とても強い種族ってイメージ。
あ、それと魔王の配下っていうイメージもあるからも。
「スペさんの部下?」
『いや、
「あ、そうなんだ」
てっきり
でもよく考えると、スペさんはフェンリル、魔物だ。
「魔族って言うのはね、かつて存在していた、人類とは敵対関係にあった種族のことよ」
エルシィさんが説明してくれる。
……?
かつて、存在していた……?
「今はいないの?」
「ええ。いないわ。大昔、人類と魔族が激しい戦争を繰り広げていた頃、大勇者ミサカ様が、魔族をやっつけてくださったの」
ミサカさん!
魔族やっつけてたんだ!
わぁ、すごいなぁ!
「魔族は滅ぼされ、以後、彼らは歴史上の表舞台から完全に消えたのよ」
「へえー!」
……ん?
じゃあ、なおのこと、人類って今誰と戦争してるんだろう。
ワルージョ女王は、魔王に世界を支配されかけてるって言っていたけど……。
じゃあその魔王って、誰?
スペさん封印後に新しく出てきた魔王?
でも魔族は滅んだんでしょ?
あれ……あれあれ?
……。
…………。
………………なんか、きな臭くなってきた。
オタクさんに会えたら、もっと詳しく、この世界のこと調べないとねえ。
「何はともあれ、大昔には魔族っていう、恐ろしく強力な敵対種族がいたの。それよりもっと前、神話の時代には、魔神っていって、もっと強い敵もいたんだけど、そいつらは全員、【聖女神キリエ】様が封印してくださったの」
うーん……色んな新しい単語が出てきた。
全部覚えきれない……。
これがゲームやマンガの固有名詞なら、覚えられるんだけどなぁ。
「っと、そろそろ25層につくぜ」
26層から続いていた階段の、終わりが見えてきた。
「もう25層! このまま何事もなくすぐ外に出れそーだぜ!」
「よかった、無事に脱出できそうで。おれ、この冒険終わったら、残してきた幼馴染みと結婚することになっててさー」
「け、ケースケ君……あのね、このダンジョン突破したら、君に伝えたいことがあって……」
黄昏の竜の皆さん、気が抜けてるのか、饒舌に色々語っている。
『我マンガ読んだから知っておるぞ? こーゆーの、死亡フラグっていうんじゃろう?』
スペさんが訳知り顔でうなずく。
たしかにそれっぽいセリフ言ってたけども。
「いやそんな、死ぬようなことなんてないでしょ。このダンジョンの最大の難関、魔王さまはここにいるんだから」
『ま、それもそうか! 我並にヤバいやつなんて、そうそうおらんじゃろうしな!』
で、25層にたどり着いた。
階段を上りきると、そこは、少し広めのフロアになっていた。
「フロアボスの部屋だな」
フロアボスとは、階層に存在(することもあるし、無いときもある)するボス的なモンスターのことらしい。
「今までもフロアボスは何体も倒してるし、問題ないわね」
「…………」
「チビチック?」
チビチックさんが、前を向いて固まっていた。
かたかた……と体を震わせている。
「どうしたんですか?」
「あ、あ、あれ……あれ……ふろあ、ぼす……」
ホールの奥に、大きな魔物がいた。
翼が生えている、巨大なドラゴン。
……しかし、フロアボスのドラゴンは、横たわって死んでいた。
何故死んでるのかわかるかって?
血の池が、死体の周りにできていたから。
そして……。
「ぐちゃ……あむ……もぐ……ごくん……古竜は、筋張っててまずい」
フロアボス・ドラゴンの、腹の上に、誰かが……いた。
「あのドラゴンの上にいるのって、人間ですかね」
「「「…………」」」
「皆さん?」
三人ともが、まるで雪山の中にいるみたいに、ガタガタと体を震わせていた。
それはかつて、牛さんと対峙したときの、彼らをまた見ているようだった。
黄昏の竜の皆さんは、明らかに、怯えていた。
フロアボスを食らう、その……小さな陰に。
「ん? 貴様ら……人間か?」
皆さん、ガン無視。
ええー……。
「あの、皆さん。無視はよくないと思いますよ? 聞かれてるんですから、答えましょうよ」
だが、黄昏の竜の皆さんは、僕の言葉に対しても、何も答えない。
えー、かんじわるーい。
「ま、ま、まぞ……魔族……」
エルシィさんが、か細い声で言う。
フロアボスを食らう小さなその人を、指さしながら。
「あれが? 魔族?」
僕はドラゴンの上に座っている、魔族(仮)をよく見る。
パッとみ、人間だ。サイズは僕らと変わらない。
ただ、人間じゃない証拠として、頭からツノが生えている。
「な、なんで……なんで……魔族が! 大勇者さまが滅ぼしたはずなのに!」
魔族は不愉快そうに顔をゆがめる。
「そいつの名前を口に出すな。不愉快だ。……殺すぞ」
「「…………」」ドサッ!
え!?
「シーケンさん、チビチックさん!」
二人が、その場に白目を剥いて倒れていた。
そんな……。
「人が話してる最中に、寝るなんて、マナー違反ですよ!」
「……妙なガキが一人まじってるな」
魔族さんが僕をにらみつけてくる。
ん?
「眼ぇ、悪いんですか?」
お年寄りの人がよく、遠くを見るときに、こう眼を細めるじゃない?
あれをやってるのかなって。
「……生意気なガキだ。不愉快だ。全員……消えろ」
魔族さんが指を立てる。
すると……。
ずぉおおおおおおおおおおおおお!
「なっ!? な、なな、なんて……大きな……魔法の炎! あんな大きな炎……見たことない!」
この大きめのホールの天井を、覆い隠すほどの、大きな火の玉を作り出したのだ。
「ま、まさか……伝説の極大魔法……【
「ふっ……極大魔法ではない。これは……【
愕然とした表情の、エルシィさん。
「そ、そんな……初級の魔法で……この大きさ……この魔法力……かないっこない……」
ぺたん、とエルシィさんがその場にへたりこんでしまった。
シーケンさんたちは眠ってるし、彼女は戦意を喪失してる。
たしかに……あの火の玉ぶつかったら、ヤバいかも。
「死ぬが良い、矮小なる
くい、と魔族さんが指を曲げる。
巨大な火の玉が、僕らにむかって落ちてくる。
ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
「ふ……
「あのぉ~生きてますけど?」
「なっ!? なんだとぉ!?」
魔族さん、驚いてる。
「ば、馬鹿な! 魔法の直撃を食らったはず!?」
「え? 食らってませんよ? 魔法……僕のカバンが吸い込んじゃったんで」
「カバンで吸い込んだだとぉ!?」
魔法の火の玉が地面に激突し、激しい爆発を起こす刹那……。
僕は聖武具、勇者のカバンの蓋を開ける。
そして、派生スキル【魔法
魔法
「魔族さんの魔法、収納しちゃいました。だから、僕らにはダメージが入ってません」
「…………」
「あれ? 魔族さん、額に冷や汗かいてますけど、寒いですかここ?」
魔族さんは目を剥きながら、僕に尋ねる。
「き、貴様……何者だ!?」
「あ、はい。僕の名前は
「名前を聞いたのではなぁあああああああああい!」
え、違うの……?
まあ、何はともあれ……。
「魔族さん、そこ、どいてくれませんか。僕……早く外に出たいんです」
「さ、
「命令じゃなくて、お願いなんだけどなぁ。聞いてくれないなら……しょうがない……実力を行使しますよ?」
魔族さんは、何故か知らないけど、滝のような汗をかいていた。
うーん、今度はあついんだろうか。
別に熱くも寒くもないけども。
「は、はっ! い、いい、いいだろう! 魔族の恐ろしさ、存分に教えてやれぅ」
めっちゃカミカミでウケる~。
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