第19話 冒険者たちの新しい武器作ろう



 魔神水で作った牛カツを、冒険者パーティ【黄昏の竜】の面々(withスペさん)が食べた。


 セーフゾーンにて。


「んがー……」

「んごぉー……」

「ぐぅ~……」


 黄昏の竜の皆さんが眠っている。


「食べて直ぐ寝たら牛さんになっちゃうのにね」

『なぬっ? 異世界の人間はそんな進化するのかっ? こわいのぅ!』


 ぶるぶると震えるスペさん。

 どうやら勘違いしてるらしい。


「まあそれはさておき。眠ってる間に、やるべきことやっちゃおっと」

『む? 何をするのじゃ、ケースケよ?』


 スペさんが僕の頭の上に、ぴょんっ、と乗っかる。

 最近そこがお気に入りのポジションみたい。


「黄昏の竜さん、強化計画~」


 このままだと、脱出までに1ヶ月くらいかかっちゃう。

 それは黄昏の竜の皆さんが弱いのが原因だ。


 早く脱出するために、この三人を強くしよう、っていう魂胆。

 

『む? 魔神水入りの料理は食わせたではないか? まだ何かするのかの?』

「うん。武器、防具を作ろうかなって」


『ほぅ……なるほど。彼奴らの装備を、より質の良いものにするのじゃな?』


 そういうことだ。

 ちょうど、新しい聖武具も手に入ったし、その力の試し打ちもしたいしね。


 黄昏の竜の装備は、こんな感じ。


・シーケン(剣士)→片手剣、鎧

・チビチック(盗賊)→ダガー、靴

・エルシィ(魔法使い)→杖、ローブ


『聖武具と比べると、なんとも貧弱な装備じゃのう』

「彼ら弱いし、駆け出しでお金無いのかもね」(←※全てAランク装備)


 鑑定するまでもないよね、多分こんな貧弱装備(←※以下略)


『しかしケースケよ、新しい装備を作るのはいいが、具体的にどうやって作るんじゃ?』

「勇者の鎚を使うよ。固有スキルに、鍛冶(最上級)があるんだ」


・鍛冶(最上級)(SSS)

→最高ランクの武器や防具を作成するスキル。素材がそろっていれば、作りたいものを100%の確立で作成可能。


『毎度思うが、廃棄勇者は皆とてつもない力を持ってるのぅ』

「ほんとね。彼らを捨てる王族ってほんとバカ」


 さて。


『鍛冶スキルを使うにしても、素材はどうするのじゃ? 武器を作るとなると、鉱石など必要じゃろ? 魔力結晶以外に、もっとったかの?』


「実はね、スペさん。これを見てほしいんだ」


 僕は勇者のカバンの口を開いて、【それ】を取り出す。

 ころん……。


 鈍色の、ゴツゴツとした鉄だ。


『! こ、この魔力の波動……もしや! 神威鉄オリハルコンではあるまいか!?』


神威鉄オリハルコン

→神が与えた最も硬い金属。武器、防具に使うことで、最高ランクの武具が作れる。 


『なぜケースケが神威鉄オリハルコンを持ってるのじゃ? いつの間に採取を……?』

「これね、僕のじゃないの。鎚さんのなの」


『鎚の勇者の……? 一体どういうことじゃ?』


 僕はステータスウィンドを開く。

 そこには……。


~~~~~~

神威鉄オリハルコン

・ヒヒイロカネ

魔銀ミスリル

・魔鉱石

~~~~~~


「これ、鎚の勇者さんが採取して、アイテムボックスに入れておいたものなんだ」

『!? ど、どういうことじゃ……? なぜ他勇者のアイテムを、おぬしが……?』


「わっかんない」

『ぬぅ……もしかして、カバンの聖武具の力なのかもな。遺体のアイテムボックスを、共有するみたいなの』


 真相はわからないけど、なんかそんな気がする。


「鎚さんがアイテムボックスに、いっぱい鉱石を入れといてくれたんだ。これを使わせてもらおうかなって」

『なるほどのぉ~……。ん? 武器は入っておらんの? 鎚の勇者が作った武器が』


「それがねえ、ないんだよねえ」

『不思議じゃの……武器を作る素材はあれど、肝心の武器がないなんての』


 うーん、と僕らは首をかしげる。


「ま、考えてもしょうがないことは、考えないでいいよね。だって考えても答えでないし」

『じゃな。それより今は、武具をそろえるほうが先決じゃて』


 さて。

 

「じゃあ、まずはシーケンさんの剣から作ろっかな」


 僕は鎚の勇者さんの聖武具、勇者の鎚を手に取る。

 聖武具の固有スキル、鍛冶(最上級)を発動。


『たしか、素材があれば、作りたいモノをイメージするだけで、簡単に作れるんじゃったな』


 ということで、作ります。


「えいや!」


 かーん!

 かーん!

 かーん!


 神威鉄オリハルコンを何度かハンマーで叩く。


 ぼんっ!


「おー! できた、お手軽~」

『うーむ、まさか火入れなどの作業をせずとも、ハンマーかんかんで作れてしまうとは。さすが勇者スキルじゃ』


神威鉄オリハルコンの剣(S+)

→伝説の金属、神威鉄オリハルコンから作られた片手剣。古竜の硬い鱗すらバターのように切れる。


「こりゅーってどんなもんなの? スペさんよりすごいの?」

『ふん。すごくないわい。古竜の鱗なんぞ、紙っぺらも同然じゃ。切れても自慢にもならんぞ』


 古竜はそんなすごくないのか。(※←SSS+ランクの魔王視点)


 じゃあこの剣もたいしたことないのかな?

 まあ、よく考えれば、S+。


 聖武具のスキルが軒並みSSSと考えると、そんなに凄くないかも(※←すごいです)。


『ま、でも駆け出しのやつらからすれば、この剣を装備すれば、多少ましな強さになるじゃろう』

「おお、スペさんすごい、なんか……武の達人みたい」


『わはは! じゃろ~?』


 剣ができたので、鎧も作る。

 ついでにチビチックさんのダガーも神威鉄オリハルコンで作った。


「ブーツとかローブはどうしよう」

『革製品のがよいじゃろうな。ほれ、黒炎蜥蜴ブラック・サラマンダーや、ミノから採取したやつがあったじゃろ?』


 黒炎蜥蜴ブラック・サラマンダーの皮に、上位エルダーミノタウロスの皮か。

 それらを使って、ブーツとローブを作る。


 かーん!

 かーん!

 かーん!


黒炎蜥蜴ブラック・サラマンダーローブ(S+)

→火・地属性魔法無効化。防御力大幅+。斬撃、打撃耐性。



・ミノブーツ(S+)

→攻撃力超上昇(蹴り限定)。全地形踏破可能。筋力超上昇。


 ま、こんなものか。

 ブーツ微妙だなぁ。靴さんの聖武具と比べると、あんまたいしたことない。


「あとは杖か。杖ってどうすればいいと思う?」

魔銀ミスリルを使うと言い。あれは魔力を最も通しやすい鉱石じゃからな。そこに、魔力結晶を少しまぜてやるのはどうじゃ』


 スペさんの知恵を借りて、僕はエルシィさんが使う、杖を作る。


・超魔銀の杖(SS)

→魔力量超上昇。詠唱速度超上昇。魔力消費量大幅減少。魔法威力超上昇。魔法効果範囲増加。


「剣とかより良いモノができたね。なんでだろう」

『魔力結晶を一緒にまぜたからじゃろうな』


 魔力は人を強くするっていうもんね。


「あれ、ケースケくん、何やってるの?」


 背後から、エルシィさんに話しかけられた。


「あ、エルシィさん。起き……え?」


 え?

 あ、あれ……? エルシィ……さん?


「? どうしたの?」

「いや……あの、その……あなた、誰?」


「? エルシィだけど……寝ぼけてるの?」


 状況、説明しよう。

 僕の目の前には、エルシィさんがいる。

 ちょっと口うるさい、ちょっと食いしん坊な、エルフお姉さん。

 胸つるん、顔も普通。……だったはずが。


「な、なんか……エルシィさん、顔……というか、見た目が……」


 僕は鏡さんの、聖武具を取り出して、エルシィさんにむける。


「なんっじゃこりゃああああああああああああああああああああああ!」


 あ、驚き方がエルシィさんだ。

 ちょっと安心……。


「なんだ、エルシィどうした……ええええええええ!?」

「おいおい誰だよこの超絶ビッグボインな美人エルフはよぉお!?」


 シーケンさん達が驚くのも無理はなかった。

 エルシィさん、めっちゃ美人になっていたのだ!


 髪の毛さらっさら。

 顔もうわ! まぶしい!

 胸もおっきい!


「え、エルフだ! マンガとかアニメでよく見る、エルフだ! 本物だぁ!」

「ちょ!? 失礼じゃない!? 最初から本物のエルフなんですけどぉ!?」


「あんなのエルフじゃないやい!」

「ひどい!」


 ややあって。


「いやぁ、まさかこんなにエルシィが美人になるとはな……」


 シーケンさんちょっと照れながら言う。

「一体何が起きたんだよ……? すごい化粧品とか使ったのか?」

「ううん。ほんと、なんでだろう……?」


 うーん……と僕らは首をかしげる。

 するとスペさんが言う。


『そのエルフ女、存在進化したのではないかの?』

「そんざい……しんか……?」


『魔物が大量の魔力を体内に摂取したときに、別の種、あるいは上位個体に進化する現象のことじゃ』

「コロモ●がア●モンに成るみたいなやつか!」


『そのたとえはわからが、魔物にはそういう、一段階上の存在なるシステムがあるのじゃ』


 なるほど……。

 ん?


「でもエルシィさんってエルフだよ。魔物じゃない」

『エルフなどの亜人は、魔物を祖に持つ。それゆえ、彼奴らと同様に魔力を大量に摂取することで存在進化を引き起こすのじゃ』


 エルシィさんが美人になったのは、魔力を大量に摂取したから……。


「あ」

「あ? ってなによ」


 ……あー。

 僕の作った料理に、魔力ってめっちゃ含まれてるんだった。


 魔神水使ったし。

 特に、エルシィさん、牛カツ誰よりもたくさん食べていたから……。


 結果、魔力をたくさん摂取して、進化した……と。


「ダンジョンで魔物たくさん倒したからじゃないか?」

「それか、ダンジョンに長くとどまってたからかもな。ダンジョンって魔力が貯まりやすいんだろ?」


「そ、うかなぁ~……?」


 あ、それで納得してくれてるっぽい。

 じゃあ説明しなくていっか。こっそり魔神水混入させたこと、バレたら怒られちゃうかもだし。


「あれ? おれの剣がないぞ。鎧も」


 三人の前の装備は、僕が回収しておいた。


「あ、こっちにありますよ~」


 そういって、僕は新しい武器・防具を指さす。


「あれ? おれの剣……こんな重かったかなぁ?」


 神威鉄オリハルコンの剣の外見は、シーケンさんが使っていた前のものと、同じものにしました。

 鍛冶スキルを使えば、外見をイジるのも容易いこと。


 他の皆さんのも、全部そんな感じで、見た目だけ前と同じで、スペックが上昇してる。


「なんかやたら体が軽い気がするんだけど……」

「なんかものすっごい、頭がしゃっきりするわ……」


 うーん……と首をかしげる面々。


『バレそうじゃないか?』


 大丈夫、僕に秘策ありだ。


「たっぷり食べて、たっぷり寝たから、体調万全になったんですよ!」


 だから体が軽いし、頭がしゃきっとしてるんだ。

 ってことにしておく。


「そうかぁ、なるほどなぁ」

「ナルホドナットクナルホドナー」

「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜全然納得できないんですけど、変じゃないねえ!」


 まあ、何はともあれ、これで駆け出しパーティの強化は、完了!

 これでもっとスムーズに、先に進めるぞ!


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