第14話 冒険者さんと外に出よう
未来視で死ぬ定めだったパーティメンバーさんたちを助けた。
「君、助けてくれて、ありがとう!」
剣士の男性が、僕に近づいて、がしっ、と僕の手を掴んできた。
わ、ゴツゴツした手だ。
「君は命の恩人だ。本当にありがとう」
ぶんぶんぶん! と剣士さんが僕の手を振る。
すると……。
「ちょっと、【シーケン】!」
エルフさんが、剣士さんの肩をつかみ、僕から引き剥がす。
剣士さんは、シーケンさんって言うんだ。
「シーケン! 何普通に会話してるのよ! ど~~~~~~~考えても、この子……危険人物でしょ!?」
ええっ? 危険人物ー?
どこがだろう?
「普通の小さな男の子じゃないか」
「あほなのシーケン!? この子……
ああ、ランクの低い、経験の浅い冒険者さんだから、見たことないんだなぁ。
「伝説の魔神かもしれないわ。近寄らない方が吉よ!」
きっ、とエルフさんが僕をにらみつけてきた。
そんな、怒らなくても……。
「あの、それより僕とお話を……」
「近寄らないで! 頭ぶっ飛ばすわよ!」
が、がーん!
嫌われちゃった……しゅん……。
「彼は、おれらを助けてくれた恩人じゃないか。悪い子じゃないよ」
「ふん! あたしは信じないわよ! あんなヤバいの!」
はう……エルフさんにヤバいのって言われた。
完全に嫌われちゃった……。
近づかないでって言われたし、嫌われちゃったし……。
もっと話したかったけど、離れることにしよう。
「じゃ、僕はこれで……」
「あー! 待って君! どこいくんだい!」
「どこって……地上ですけど?」
「君ひとりで? 危ないよ! そんな軽装の子供をひとりにしておけない。おれたちが地上までさ送ってってあげるよ!」
「え……?」
地上まで送る……?
え、なんでだろう……。
ひとりで危ないから?
いや僕にはスペさんいるし、聖武具もあるし……。
「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫なんで。じゃ」
別に、彼らに案内してもらわなくても、僕にはミニマップスキルがあるうえ、スケスケビームと空歩のコンボで、地上まで真っ直ぐ帰れるしね。
彼に送ってもらう必要は全くない。
「いやでも君……危ないって、ひとりじゃ」
「大丈夫ですって」
「いやでもホント危ないから……」
と、そのときだった。
「あ~~~~~~~~~~~! やっぱりだ! シーケン、そいつ……【ケースケ・サクダイラ】だよ!」
シーケンさんの仲間である、ハーフフットさんが、声を張り上げる。
……って、あれ?
なんで、僕の名前知ってるだろ?
あ、さっき名乗ったか。
でも名前をただ知ってるだけじゃないニュアンスに聞こえたんだよね。
「なんだ、【チビチック】? 彼を知ってるのか……?」
ハーフフットさんはチビチックって名前らしい。
変な名前だなぁ。
シーケンさんはハテナ? と首をかしげる。
「【
「
なんだろう、それ?
「
と、エルフさん。
………………え?
召喚者が、ギルマス……?
それに
「あ、あのエルフさん!」
「ひっ! 近寄らないでよ!」
エルフさんが杖先を僕に向けてきたけど、それをどかして、僕は彼女に詰め寄る。
「もしかしてその、
「近……! そ、そうよ。たしか、オタク・イーダって名前!」
オタク・イーダ……。
飯田オタク!
やっぱりそうだ!
オタクさんだ!
「
シーケンさんが首をかしげる。
……ん?
なんか今、この人変なこと言ってなかった……? 10年前とか。
「知らねえ。でもこのガキを見つけて保護してきたやつには、【1億ゴールド】の報酬を出すって」
「「「1億ぅうううううううううううううううううううう!?」」」
チビチックさんの言葉に、僕、シーケンさん、エルフさんの三人がマジで驚く!
1億ゴールドって……じゅ、10億円じゃないか!
「この子にそんな大金掛かってるの!? マジでなんで!?」
とエルフさん。
そうだよ、
「さぁな。ただ……それだけ、
チビチックさんが言う。
「噂じゃ、
……オタクさん。
僕を探すために、そこまでしてくれたなんて……。
あの人にとって、僕は、ちょっと話しただけのほぼ赤の他人だっていうのに……。
うわーん! オタクさーん! あいたよー!
「商会のある【マデューカス帝国】まで、このガキ連れてけば、オレら大金持ちだぜ」
! オタクさんのありかを、この人知ってる!
「あ、あのっ! チビチックさん、僕を……オタクさんのとこに、連れてってもらえないですかっ?」
「え、そりゃもちろん。1億欲しいし」
「やったー!」
さっきまで、この人達についてくメリットは一切無かった。
でも、この人達はオタクさんのいる場所を知ってるらしいからね。連れってもらおう!
「よろしくね、ケースケくん。改めて、おれは剣士のシーケン。で、そっちは
ハーフフットさんは盗賊の職業をしてるらしい。
盗む人っていうより、鍵開けとかしてくれるサポーターって印象だ(ゲームだと)。
「ちょ、ちょっとシーケン! ほんとにこの子連れてくの!?」
で、名前がまだわからない、エルフのお姉さん。
凄い嫌そうな顔をしてる。
「【エルシィ】。君は反対なのかい?」
エルフさん、エルシィさんって言うんだ。
「あったりまえじゃない! シーケン、チビチック、忘れたの? この子は魔神かもしれないのよ!」
またでた、魔神。
なんだそれ? 違うんですが。
「でも、こんな小さな子をこんな危ない場所に、おいてけないし……」
「連れてけば1億だぜ、1億! 目もくらむような大金が楽して手に入るんぜ!?」
シーケンさん、結構いい人かも。僕に賞金が掛かってるって知らない段階で、僕を連れてこうとしたし。
逆にチビチックさんは、幼い見た目に反して、結構ゲスイって言うか。
でも逆にわかりやすい。
「あの、大丈夫ですよ。僕魔神ってやつじゃないですし」
「そう言っといて、後ろから攻撃とかしてくるんでしょっ?」
疑り深いなぁ、このお姉さん。
「第一、なんでお姉さんたちを襲わないといけないんですか? あなたたちのような弱い人たちを襲って、僕に何のメリットが?」
ぽかーん……とする三人組。
「は、はぁ!? 弱いぃいい!? あんた【黄昏の竜】を知らないのぉ!?」
エルシィさんが顔真っ赤にして怒ってくる。
黄昏の竜……?
「え、知りませんけど。なんですそれ、有名なんですか?」
「有名なんですか~~~~? きぃい~~~~! あのねええ!」
シーケンさんが「まあまあ相手は子供だから落ち着け、エルシィ」と彼女を取り押さえる。
「それに、エルシィ。彼は
「だから!?」
「よく考えるんだ。
「あ……」
エルシィさんが、やっと落ち着く。
「シーケンさんの言うとおりですよ。そんなのちょっと考えればわかることじゃないですか? バカなんですか?」
「このくそがきゃぁ……!!!!」
ぶち切れるエルシィさんを、シーケンさんとチビチックさんが取り押さえる。
僕のエルシィさんへの評価はもう結構落ちてる。
エルフってもっと物静かで、理知的なイメージあったのに。
こんなのエルフじゃないやい。
「ま、まあとりあえず、よろしく。ケースケくん」
「はい、よろしくです、シーケンさん。チビチックさん。エルシィ」
「さんをつけなさいよぉ!」
こうして、僕は冒険者さん達に、オタクさんのとこへ、連れてってもらうことになったのだった。
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《エルシィ視点》
あたしたち、Sランク冒険者の、【黄昏の竜】は、超難関ダンジョン【
七獄。世界に7つある、ものすごい難易度のダンジョンの総称。
一説によると、神話の時代にできて以降、誰1人としてクリアしたものはいないらしい。
あたしたち黄昏の竜は、ゲータ・ニィガでも名うての冒険者パーティだ。
シーケンは世界最強の剣士、剣聖と画角に渡り合うほどの剣の腕を持つ。
チビチックは優秀な
索敵から鍵垢までなんでもござれ。多くのダンジョンにもぐり、生き残ってきた実績あり。
そしてこのあたしは、アイン魔法学園を主席で卒業した、天才! 魔法使い。どやぁ。
そんな最高の人材が集まった、最高のパーティ、それが黄昏の竜。
あたしらなら、前人未踏のダンジョンもクリアできる……って思ってたんだけど。
まさか50階層にたどり着くのに、ひと月もかかってしまうなんて。
正直、ここのダンジョンのレベルは桁外れだった。
強敵、トラップ、複雑な地形。
今まであたしたちが突破してきたダンジョンが、子供の遊び場に思えてしまうどだ。
50階層でこの難易度。これより下は、人間の立ち入れる場所じゃない。
シーケンは撤退を宣言した。正しい判断だったと思う。
けど、運の悪いことに、そこへフロアボスと遭遇してしまった。
あたしたちは情けなく、誰1人として、その場から動くことができなかった。
死んだ、そう思った。もうやばすぎるって、直感したんだ。
そこへ、謎の少年が現れて、一撃で敵を倒してしまった!
Sランクパーティが、これはもうあかん! と思って、死を覚悟した相手をだ!
警戒するに決まってるでしょ!?
どう見てもこの少年、人間の皮を被った化け物よ!
お人好しのシーケン、お金大好きチビチックは、この子と普通に接するつもりみたい。
けど、あたしは信じないわ! こいつ絶対、魔神よ!
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