第8話 最難関迷宮でのんびりクッキング
ダンジョンにて、モンスターを初めて仕留めた。
「冒険者ギルドに持ってくために、死骸に解体スキル使って、
・解体(S)
→モンスターの死骸を、100%の確立で、完全な状態の素材アイテムに変える。
『む! ケースケよ。気をつけるのじゃ。大量のモンスターが近づいてくるぞ!』
スペさんの魔力感知がなかったら、やばかった。
素材化してる間に、モンスターに襲われて、今頃死んでたかも!
「逃げないとだね」
一旦、
『駄目じゃ。モンスターに囲われておる。群れで動くモンスターのようじゃな。厄介じゃ……我が蹴散らす!』
「待って、一対多数は、何があるかわからないから危ないよ」
『む……それもそうか。して、ケースケよ。どうするのじゃ?』
絶対切断スキルで蹴散らす?
でもスキルを発動中に、後からやってきたモンスターに食われちゃうかも……。
「いっそどこかに隠れる……とか? カバンの中とか」
カバンに腕を突っ込んだ、そのときだ。
『
「
僕の体が、カバンの中に、勢いよく吸い込まれていくではないか!
……。
…………。
………………はっ!
「ここ……どこ……?」
気づけばそこには、何もない、白い空間が広がっていた……!
「ネット小説でよく見る、神さまのお部屋みたい……」
『こ、ここはどこなのじゃ、ケースケよ』
スペさんもどうやら、一緒に移動してきたみたいだ。
たしか、ここへ来る直前に、
「
『勇者の鞄の、派生スキルではなかったの?』
それだ!
~~~~~~
勇者の鞄
固有スキル:
派生スキル:
~~~~~~
・
→異空間を作り出し、そこへ転移するスキル。
空間に入れるのはスキル使用者と、使用者が許可した者のみ。
※許可しない者は外からは絶対に入ることもできないし、この異空間を破壊することも不可能。
※
「鞄の中に、もう一つの世界があって、そこに入ることができる……ってスキルってこと?」
『なんという、凄まじいスキルじゃ……。セーフゾーンを持ち歩けるようなものじゃないか!』
「セーフゾーン?」
『ダンジョン内部にある、モンスターの入れぬ特殊な部屋のことじゃ』
たしかに、この
魔物が入ることなんてできない、安全な空間に、いつでも入ることできる……。
「あれ、このスキル、結構やばい?」
『結構どころではないのじゃ! 破格! 規格外じゃ!』
へぇ、そっかぁ。ラッキーだなぁ。
ややあって。
『次は何をするのじゃ?』
「安全な空間が手に入ったから、外の魔物がいなくなるまで、しばらくここで休憩しようかな」
待ってる間暇なので、僕はさっき手に入れた
『
「あ、たしかに……。今手元にカバンないや」
ぽんっ。
「わ! 念じたら
つんつん……と僕とスペさんは、
「どういう仕組みなんだろ?」
『考えるに、聖武具の内部と、この
「なるほど……。
試しに、他の聖武具を取り出したいと念じてみた。
すると、普通に鍋や短剣など、廃棄勇者から借りてる聖武具を、手元に出すことができた。
カバン……すごい。
色々できそうだ。
「とりあえず
僕は解体スキルを発動する。
ボンッ……!
一瞬で
・
・
・
・炎蜥蜴の火噴き袋
「わ、アイテムいっぱいだ!」
『麻酔針で仕留めた影響も、なさそうじゃのう。皮も肉も品質が落ちておらんわい』
解体スキルを使えば、死骸の状態を無視して、完全な状態の素材に変換可能ってことかぁ。
へー……。スキルってすごいなぁ。不思議だなぁ。
『いやケースケ……おぬし、もっと驚くべきところじゃぞここ?』
「そうなの?」
『うむ。魔物の解体というのは、難しく、また時間のかかる作業なのじゃ』
そうだよね。モン●ンみたく、倒したモンスターから自動でアイテムがドロップするわけじゃない。
「こんな便利なスキルを授けてくださって、ありがとう。短剣さん」
このスキル(聖武具)の元々の所有者、短剣の勇者さんに、僕は深く感謝する。
『おぬし……やはり変わってるの』
「あはは、姉ちゃんからもよく言われたよ。『あんたは変』って」
『いや言い方……』
さて、素材をゲットした僕。
これで外に出たとき、換金できるぞ。
「この解体してできたアイテムって、どうすればいいかな?」
『念じてみれば、収納されるのではないかの?』
やってみたら、たしかにアイテムがいずこへと消えた。
多分、勇者の鞄の中に収納されたんだろう。
『む? ケースケよ。
「うん、料理に使おうかな。お腹減ったし」
うへえ……とスペさんが顔をゆがめる。
『ケースケよ……やめてけ。魔物の肉はあまり美味しくないのじゃ……』
「そうなの? 最高級のお肉って書いてあったけど」
『我は好かん』
うーん……ホントに美味しくないみたい。
でも、僕は気になる。
牛や豚と違って、サラマンダーのお肉ですよ?
現代日本じゃ絶対に食べれないんだよ。これぞファンタジーって食品なんだから……。
興味、ありありです。
「じゃあ僕、このお肉使って料理してみるね」
『好きにするがよい。我は菓子パンを所望するのじゃ』
鞄に入っていた菓子パンを、スペさんに渡す。
「いでよ、勇者の鍋!」
ぼんっ。
聖武具のお鍋が出てくる。
このお鍋には料理スキルがついてる。
・料理スキル(最上級)
→食材、料理道具がそろっていれば、どんな料理でも、瞬く間に作ることができる。
僕あんまり料理得意じゃないから助かるぅ。
「食材と料理道具は自前で用意しなきゃなんだね。じゃあ取り寄せカバンスキルで、必要なものをそろえてっと」
『なんじゃ、この妙な魔道具は?』
僕が日本から取り寄せたものに、スペさんは興味を示したようだ。
「魔道具じゃないよ。これは、カセットコンロ」
『かせっとこんろ……?』
どうやらこっちでは、ないアイテムのようだ。
あ、そっか。
日本のグッズって、こっちには存在しないんだ。(包丁とか、食材とか、こっちでもありそうなものは別おつぃて)
あんまり、人目が突くところでは、日本のグッズは取り寄せないでおこう。
「料理道具、そして食材取り寄せ完了!」
ちなみに、取り寄せたのは……。
カセットコンロ、ミネラルウォーター、包丁、まな板。
にんじん、じゃがいも、カレールー。そして……お米(パックご飯)!
『何を作るつもりなのじゃ?』
「無難にカレーライスを」
『かりー?』
「カレー。まあ見てて、美味しいから」
『魔物の肉を使って、美味しい料理ができるわけないのじゃ。菓子パンこそ至高なのじゃ』
よし、じゃあさっそく……。
「料理スキル、発動!」
トトトトトトッ!
じゅ~~~~~~!
ぐつぐつぐつ……!
「完成! って、早ぁ……!」
まじで一瞬で料理できちゃったよ。
料理スキル(最上級)ほんと便利ぃ。
鍋の勇者さん、ほんとにありがとう。
『な、なんじゃ……この良い香り……』
すんすん、とスペさんが鼻をひくつかせる。
「お、気になっちゃう?」
『うぐうぅ……』
「一口だけでいいから、食べてみない?」
『し、しかたないのぅ。友がどーしても食べろというのなら、食べてやってもよいぞぉ?』
素直じゃ無いんだから。ふふふー。
さて、使い捨ての紙の器を取り寄せる。
お米は、パックご飯を取り寄せた。
加温スキル(鍋さんの派生スキル)で、ご飯を温める。
・加温(S)
→触れた物体の温度を瞬時に上昇させる。
温度に上限はない。
これがあれば電子レンジ要らずだよ。
わー、やっぱり便利、聖武具のスキル!
「さ、スペさん。カレーだよ。食べてごらん」
僕はカレーの入った器を、スペさんの前に持っていく。
子犬状態のスペさんは、ふんふん……と匂いを嗅ぐ。
『魔物の肉は美味しくないんじゃが……ええい、ままよ!』
ぱくっ。
もぐもぐ……。
『うっ!』
『う?』
『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!』
スペさんが、フェンリル姿になった!
そして吠えた!
「ど、どう?」
『ガツガツガツガツガツガツ!』
ふふふ、美味しいみたいだね。
僕も一口……ぱくんっ。
……うん!
美味しい!
ただのカレーなんだけど、ちょーうまい!
それにお肉!
すっごいジューシー!
全然筋張ってないし、わ、すご……うまぁい!
『な、なぁ……ケースケぇ。おかわり~』
「えー、魔物の肉は美味しくないんじゃなかったの~?」
『前言撤回じゃ! すまなかった! ケースケの作ったカレーは美味いんじゃあ!』
「よろしい。いっぱいあるから、いっぱい食べてね」
『わほーい!』
そんで僕らはそろって、カレーを食べた。
結構たくさん作ったんだけど、お鍋のなかにあったカレー、全部無くなっちゃった。
『しかしトンデモなく美味かったのじゃ。なんだか、体の調子も良くなった気がするのじゃ』
「そう?」
『うむ。力がみなぎるのじゃぁ!』
お腹いっぱいになったからかなぁ。(←※ステータスが上昇してます)
何にせよ、安全地帯で、こうしてのんびりご飯が食べれてる。
聖武具のおかげである。ほんと、感謝感謝だよ。
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