硝子色のお姉様


 お姉様の瞳は、いつもきれい。


 いつだってキラキラとしているから。


 お姉様が瞳を向けると、誰もがみとれるの。


 期待するような、悦にひたるような、うっとりと惚けるような。


 そんな、ふしぎな表情でこちらを見つめる。


 けど、そんな人たちをお姉様は見ない。


 たとえそこが視野の中だとしても、気にしない。


 お姉様が見たくないものは、その瞳に映らない。


 そんなお姉様が、私を見る。


 笑いかけてくださる。


 抱きしめて、頭をなでてくれる。


 大好き、大好き、大好き。


 けど、なのに、何で?


 何で、見てくれなくなったの?


 こんなに、大好きなのに。


 愛して、愛して、愛しているのに。


 お父様も、お母様も、その瞳に映るのに。


 私と…お兄様を、どうして映してくれないの?


 いつから、映してくれなくなったの?


 いいえ、本当は分かっているの。


 成長につれてこの感情が、好きだけに収まらなくなっていることくらい。


 お姉様を私だけの者にしたい、そんな仄暗い想いに変化しつつあることくらい。


 この粘着質な独占欲は、お姉様のお気に召しませんか?


 この愛らしい妹の重苦しい愛は、お姉様にとって負担ですか?


 …それでも私は、この愛を捨てることはできません。


 お姉様の瞳に映れる程に、純粋で深い愛へと育てましょう。


 そしてお姉様の瞳にまた映ることができたのなら。


 今度こそお姉様を私だけの者にしてしまいましょう。


 ね?


 お姉様。


 


 

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