硝子色の貴女


 貴女の瞳は、いつも綺麗。


 透き通っていて、何でも見通せるから。


 それなのに、少しだって汚れてなんかいないから。


 綺麗なものばかり見てきた、恵まれた証。


 正直、気持ちの良い気持ちばかりが芽生えるものじゃあないわ。


 少しでも、心が揉まれているのなら。


 子供でなく、大人になれているのなら。


 野心を、他人を羨む気持ちを持っているのなら。


 嫉妬、してしまうもの。


 けれど、綺麗なのに変わりはない。


 その瞳に映る全てを、鮮烈に映し出す。


 その瞳に映ることができたものは、美しい。


 だからこそ、その瞳に映った瞬間にそのものは数段価値を上げ、美しく鮮やかに昇華する。


 ああ、映り込んでみたい。


 でも、この話を聞いて映り込みたくなる私は、貴女の瞳に映れるほどに、もう美しくはない。


 もう、戻れない。


 どんなに美しく取り繕っていても。


 どんなに鮮やかに着飾っていたって。


 あの頃の、私には戻れない。


 幼い頃の、純粋に真っ直ぐ、前だけを見て突き進んでいた私には、もう。


 …ねえ。


 もし、私がもう一度輝けたなら、あの頃のように進めたのなら。


 貴女は私を、その硝子色の瞳に映してくれるの?


 


 

 

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