#82 お風呂回:五右衛門風呂に入ろう
※クロエ視点※
人型になれることを村のみんなに話してから、丸一日たった。
おどろかれるかなと思ってずっと言えなかったけれど、みんな優しく受け入れてくれて、本当によかった。
「楽しみー」
うれしくて、つい言葉が出ちゃう。
今はレオンと一緒に作ったゴエモンブロというお風呂のお湯がわくのを待っているところ。
ボクは洋服を脱ぎながら、早く入りたくてうずうずしていた。
「クロエさん、本当に楽しそうですね」
「うん!」
今回は、アリアナとシェリと一緒に入ることになった。
ボクは最初、一番大好きなレオンと一緒に入りたいと言ったんだけど、ダメだって言われちゃった。
アリアナとシェリが鬼みたいな顔になって、ボクを止めたんだ。
「ク、クロエさん! あなたとレオンさんが一緒に入っていたら、レオンさんが捕まってしまうんです! わかりますか!?」
「見てみなさい、あのレオンの鼻の下の伸び切った顔! 絶対に一緒に入ろうなんて言ってはダメ!」
アリアナもシェリも、普段は絶対に見せないような顔をしてて、すごく怒ってて怖かったから、従うしかなかったよ……。
レオンが説得してくれるかなぁ?と思って見てみると、遠くを見つめるような顔をしていた。
声をかえたら「……大丈夫、一種の賢者タイムさ」と、ちょっとむずかしいことを言われた。
賢者タイムというぐらいだから、もしかしたら大賢者のように知識と思考力をフル回転させて、ボクと一緒にお風呂に入る方法を考えてくれていたのかもしれないよね。
やっぱり、レオンは優しいや。
「よし、いっくぞー!」
レオンと入れないのは残念だけど、いつまでもクヨクヨしてられない。
ボクはゴエモンブロに走った。
「うわー、湯気がすごいや」
三つ並んだ石のお風呂から、もくもくと湯気が出ていた。
なんだか、霧の国に迷い込んだみたいだ!
「濡れているところもあるから、足元気を付けてね」
「うん、わかった」
犬のときと違って、人間になっているときは二足歩行なのでバランスも悪いしあんまり速くも走れない。
でもそのかわり、両手を器用に使うことができるよね。そういうところ、人ってすごいなぁと思う。
「よーし……えいっ」
「わぁっ」「ちょ、クロエったら!」
気を付けて、と言われたけど、ボクは我慢できなくてジャンプして飛び込んだ。
湯がばしゃっとなって、アリアナとシェリにかかった。
あはは、楽しいなぁ。
「ふぅー。あつつ、ちょっとアツいかもー!」
「身体が冷えてるから余計に熱く感じるのよ」
「クロエさんの体感温度は、人間的なのか犬的なのか、どっちなのでしょうね?」
「んー、よくわかんない! でも慣れてきたらちょうどいいよ」
そんなお話をしながら、三人それぞれ一つのゴエモンブロに入る。
アリアナとシェリの横顔を見ると、なんだか『ほふぅ』としていて幸せそうだった。
ボクも真似して、『ほふぅ』っとしてみた。
うわぁ、なんだか全身の力が抜けて、じんわりあったかさがしみ込んでくるみたいだ。
思わず上を向いてみると、そこには。
満天の星空と、満月があった。
「うわー、キレイ」
「本当ですね」
「こいういうの、『露天風呂』って言うんですって。レオンに聞いたの」
アリアナとシェリも同じように空を見ているみたいだった。
景色を見ながら入れるお風呂、最高だなぁ。
本当にレオンは、ボクらの知らない色んなことを教えてくれる。
「はぁぁ。気持ちいい」
「いいですねぇ、ゴエモンブロ」
シェリとアリアナが、嬉しそうに言った。
その横顔は熱さからか、少し頬が赤くなっていて、ツヤツヤしている。
シェリはお風呂の縁に腕をのせるようにして入っていて、胸から上をお湯から出していた。
わぁ、おっぱいが浮いてる!
「シェリ、すっごくおっぱいが大きいね!」
「あ、ありがとう」
「やわらかそうだし、オスは絶対喜ぶよね!」
「オ、オス? あ、ありがとう……なのかな?」
シェリはなんだか、むずかしい顔をした。
あれれ、喜んでいない?
「アリアナのおっぱいは、少し上向きな感じでツンとしているね! カワイイおっぱいって感じ! 身体の小さいボクからすれば、大きさも程よくてイイ!」
「あ、ありがとうございます……? 自分ではあまり大きくはないんだろうなって、思ってましたけど……」
「大丈夫! 大きいのはそれはそれで素晴らしいけど、おっぱいの魅力はそれだけでは決まらないって、レオンが教えてくれたよ!」
「レ、レオンさんが……」
あれれ、アリアナも喜んでいない?
お風呂に入る前、レオンからオスとメスの身体の違いをちゃんと教えてもらったのになぁ。
『シェリとアリアナのこう、胸の辺りな、ふっくらと膨らんでてな、その膨らみをな、おっぱい、というんだけどな。……ああ、おっぱいだ。絶対に覚えるんだぞ。で、そこがまぁ、なんだ、オスにはない最高の魅力を備えたものでだな、そこをだな、よぉく観察してくるんだぞ』
身振り手振りで、すっごく丁寧に教えてくれたんだ。
やっぱり、レオンは優しいな。
「レオンがね、たくさんおっぱいについて教えてくれたんだよ!」
「「…………」」
アリアナとシェリの深いため息が重なった。
あれれ、ボクなにか悪いこと言っちゃったかな?
◇◇◇
※レオン視点※
「ふぅー、あったまったー」
五右衛門風呂の竹垣の向こうから、ホクホク顔のクロエがバスローブ姿で出てきた。あのバスローブは、既存のローブを改良したもの。
俺が前世の知識でアイデアを出し、それを職人が仕上げてくれたものだ。サウナが出来上がった頃、ああいうものが必要だと思い、作ったものだった。
「ゆっくりできたかい?」
「うん! すっごく気持ちよかったよ!」
少し上気した顔で、嬉しそうに笑うクロエ幼女形態。
天真爛漫を絵にかいたようなその笑顔に、入浴していない俺の心まで温かくなる。
「そういえばね、シェリのおっぱいがすごく大きかったよ!」
「ぶほうぅ!?」
いきなりの爆弾発言に面食らう。
なにを言っているのかしらこの子は?
「アリアナのおっぱいはね、すっごくキレイでツンとしてた!」
「ぶへらっ!?」
何を言っているのかしらこの子は?
まったくけしからんよ、そんな不埒なことばっかり。
いくら俺が入浴前に熱くおっぱいを語ったとは言え、そんなことばっかり言ってると女性に軽蔑されてしまうぞ?
ま、せっかく好奇心旺盛なクロエが得た情報だしな、スルーしてしまっては可哀そうだし、一応、メモメモっと……。
「ふーん、クロエちゃんに丁寧に説明したのは、そういう魂胆があったからなのね」
「レオンさん、スケベです……」
「シェリ、アリアナ!?」
必死に羽ペンを走らせていた俺の背後に、湯上り美女のお二人が、睨みを利かせて立っていた。
なんだろう、お風呂上がりのはずなのに、背筋が凍るような冷気を感じる。
殺気かな!?
「もう……そういうことしたいんなら、ちゃんと正々堂々誘いなさいってば。ね、アリアナちゃん?」
「え、あの、はえ!? そ、そそ、そういうことというその、て、定義によるかと!!」
「…………」
と。
どこか挑発的に語るシェリと、慌てふためくアリアナ。
俺はなんとなく言われている意味を察し、ノーコメントを貫く。
メモは懐にしまい込んだぜ!
「さ、次に入るのはレオンでしょ? 入ってきなよ」
「お、おう」
促され、俺は風呂場へと進む。
が、シェリに呼び止められる。
「ねぇ、上がったらさ、アタシの部屋に来る?」
「え?」
「一緒にお酒でも、どう? ね?」
お風呂上がりの色香を漂わせながら、ふんわり微笑むシェリ。
……襲い掛かっちゃうぞ?
――その後。
俺は久しぶりに
……おっさんとは言え、まだ俺も枯れていなかったらしい。
:【体力】が上昇しました
:【魔力】が上昇しました
:【筋力】が上昇しました
:【おっぱい星人】の職業素養を獲得しました
:【一般パッシブスキル『性欲』】を獲得しました
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貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。
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