#81 五右衛門風呂、完成?

 竹の採取を終え、犬耳美少女化したクロエと共に村に戻ると待っていたのは。


 村の皆からの質問攻めだった。


「そのカワイイ子、どこから連れて来ちゃったの!?」

「え、俺がさらったと思ってる?」

「いくらカワイイからって、誘拐はまずいって、元村長」

「だからなんで俺がさらったみたいになってんの?」


 みたいなね。

 俺は断じてロリコンじゃないぞ!


 で、あらぬ誤解を解くために「この子はクロエ! 変身できるすごい種族だったらしい!」とざっくり説明した。

 というか喚き散らした。大人げないぞ俺!


「えっと、ボク、クロエだよ。みんなとお話したかったんだけど、驚かせちゃったら嫌だなと思ってて、今までタイミングがわからなかったんだけど……」

「まぁ、本当にクロエちゃんなのね! なんてカワイイのっ!」

「この可愛さは反則ですっ!」

「く、くすぐったいよみんなぁ」


 クロエ本人もいじらしく言うものだから、皆一瞬でメロメロになっていた。

 なでたり、ふにふにしたり、なで回したり。


 おい最後のヤツ俺よりロリコンの疑いあるだろ。

 さてはケモロリ属性ってやつか!?


 説明するまで俺を非難するような目で見ていたシェリ、アリアナも、人型クロエのつぶらでうるうるな瞳ともふもふの耳、尻尾、その庇護欲をそそるルックスにメロメロのご様子。


 うん、気持ちわかるよ!

 とにかくクロエは可愛いからね!!


 と、クロエと皆のコミュニケーションが終わるまで、俺は終始微笑を浮かべながら穏やかに佇んでいた。なんとも、平和極まる光景だった。


 うん、俺は断じてロリコンじゃないな。


◇◇◇


「レオン、手伝うよ」

「おークロエ。みんなようやく気が済んだか」


 翌日。五右衛門風呂の設置予定地にて。


 俺は朝の日課を済ませてすぐ、風呂作りに勤しんでいた。

 そこへ、人型クロエがやってきた。


 昨日は結局、一日中みんなにもふもふされていたらしい。


「ボクも手伝うよ」

「そうか? みんなにかまい倒されて、疲れがあるんじゃないか?」

「ううん、やっとみんなと会話できてうれしかったし、全然大丈夫だよ。それに、ずっとこういうことをやってみたかったんだ」


 潤いある目を輝かせて、足元の竹を拾い上げるクロエ。

 こんなにキラキラした眼差しを向けられて、断れる大人がいるのかしらん?


「わかった。じゃあクロエはこの竹をこのぐらいの長さで切りそろえてくれ。ノコギリの扱いは大丈夫だな?」

「うん! 昨日でだいぶ慣れたから、任せてよ」

「よーし、いい返事だ。怪我には気を付けるんだぞ」

「うん!」


 俺の指示に元気よく応え、えっちらおっちら作業をはじめる人型クロエ。

 わんこモード(?)のときの巨体と違い、今は子供のサイズ感なので手足が小さく、一つの一つの動作がなんとも可愛らしい。


 小柄な体躯で一生懸命に竹を加工する姿は、見ているだけで庇護欲が掻き立てられる。


 うん、これ、いつまででも見ていられるわ。

 それこそ前世で動物のもふもふ動画を見ていたときに近い多幸感がある。


 ……なんだろう、もし娘がいたらこんな気分になるのだろうか?

 エモすぎる、子供っ!!


「レ、レオン、そんなに見られてたら、や、やりにくいよ」

「お、おおっとすまん」


 ふいに目が合い、俺は視線を逸らした。

 きっと今の俺の顔はとろけにとろけて、かなり恥ずかしい感じになっていたことだろう。


「さ、さて。俺もちゃちゃっとやっちゃうとするか!」


 わざとらしく誤魔化しながら、俺も作業を再開する。

 竹の加工はひとまずクロエに任せて、俺は浴槽と風呂釜の作成だ。


 三つ仲良くならんだ石の浴槽の下を掘り、空間を作っていく。

 半円の浴槽がグラつかないよう、支えとなる四点を残しつつ(前日に測量士さんに測ってもらった)、アリアナが作ってくれたコンクリート(ローマン・コンクリートと言うらしい)で補強する。これは防火材的な役割もある。


 こうすることで、浴槽の下に空間ができる。

 ここに火魔法で高熱を込めた魔石を設置し、湯を沸かすという算段だ。


 要するに、ここが風呂釜になるわけだな。


「ふう、こんなもんか」


 三つ全部の風呂釜が完成し、一息つく。

 久しぶりの力仕事に、全身に適度な疲労感があった。


「レオン、こっちもできたよ」

「おお、すごいじゃないか!」

「えへへ」


 声をかけられ見てみると、クロエの周辺に綺麗に竹が切られて置いてあった。

 すべて均等な長さで切られており、かなり美しい。


「よーし、こっからラストスパートだ。今晩には入れるかもしれないぞ!」

「うん!」


 俺は凝った肩を回してから、再び気合を入れなおした。

 クロエの協力があれば、予定より大幅に早く完成させられるかもしれないぞ。


 もうひと踏ん張りするとしますか!


◇◇◇


「できた……」

「すごいね、レオン! これがゴエモンブロっていうんだ!」


 数時間後。

 すでにとっぷり日も暮れて、月明かりが辺りを照らしている。


 が、ついに完成した。

 夢にまで見た、五右衛門風呂が。

 スーパー銭湯風の、エモーショナルな五右衛門風呂が!


「…………」


 感慨深さに思わず、息を飲む。

 三つ並んだ半円の浴槽を、美しく均整の取れた竹垣が取り囲んでいる。


 なんというか、竹独特の見た目が、かなりイイ。

 町のスーパー銭湯感、出てる!


「よし、あとは湯が沸けばおっけーだな」


 今日は肉体労働と魔法使用をたっぷりと繰り返したため、心身共にかなりの疲労感がある。

 この状態でお手製の五右衛門風呂になど入ったら、感動もひとしおだろう。


 そして風呂上りの乾いた喉に、キンキンのビールを流し込めば……。


 くぅー、今からもうたまらんっ!


「ねぇ、お風呂が沸いたら一緒に入ろうよ、レオン!」

「……え?」


 と。

 俺が最高の晩酌を妄想してよだれを垂らしていると。


 隣のクロエが、そんな提案をしてきた。

 断れない、澄んだ瞳で。


 ……これって、いいのかな?

 倫理観的に?


 俺は断じてロリコンじゃないとはいえ、ねぇ?



:【体力】が上昇しました

:【魔力】が上昇しました

:【筋力】が上昇しました

:【知力】が上昇しました

:【ロリコン】の職業素養を獲得しました

:【魔剣王】の職業熟練度が上昇しました

:【魔法狩猟師】の職業熟練度が上昇しました

:【ジャンパー】の職業熟練度が上昇しました

:【一般パッシブスキル『庇護欲』】を獲得しました

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貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

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更新がんばります!

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