#67 対決、魔族四天王ギンリュウ

「でやっ!」

「ヌンッ!」


 鍔迫り合いを解き、俺はギンリュウと一定の距離を取る。


「ここまでの戦いを見て、確信した。貴様がこの戦場で最強だ」


 対面のギンリュウが、手に持った赤い大太刀『紅呉魔流べにくれまる』を鞘に納めながら言った。


 甲板の上、仁王立ちしたその姿は圧倒的な偉丈夫。

 ニメートルを超える筋骨隆々の巨体に武者鎧を纏い、魔族特有の頭の赤角は兜と一体化し、異様な威圧感を放っている。


 完全に――サムライのような立ち姿だった。


つわものに挑み、打ち勝つこと。それを求める衝動をオレは止められん。レオン・アダムス、本気を出してもらおうか」

「言われるまでもない」


 魔族には珍しい丁寧で時代劇風な口調と、重厚で腹に響く低音のイケボ。そして中二心を激しくくすぐる純和風の鎧武者的デザイン。


 ギンリュウ・マガツヒノカミは『LOQ』でも、屈指の人気を誇る敵キャラクターだった。


「シネェェェェ!!」

「っ!?」


 と。

 俺がギンリュウの情報を思い出していた瞬間、周りを囲んでいた魔族の一体が俺に向かって飛び出してきた。


 咄嗟に身構える――が。


「邪魔をするな」

「ッ?」


 俺の目の前で。

 飛び出した魔族が一刀両断された。


 あの表情、おそらく自分が“半分になった”ことすらわからず消え去ったことだろう。


 ギンリュウの得意技――居合い抜きである。

 ヤツだけが使いこなす、何者をも刀の錆とする即死攻撃。


 俺はあの巨体が動いた姿を、視認できなかった。

 それだけ瞬間的な速度で抜刀し、一刀の元に切り捨てたのだ。


「我々の戦いに介入することは、何人も許さん」


 魔族でありながら、正々堂々を好み、同時に義を重んじる者、ギンリュウ。

 この実直で武士道を追求する姿勢も、人気を集めた理由だった。


 あと、やっぱり声が良すぎる。


 リメイク版でのCVは津〇健次郎さんだったっけな。

 そりゃ、いくらでも聞いていたくなるわけだよ……。


「皆の者、よく聞け。魔王様より賜った作戦はここまでとする。ここから先はオレの戦い。誰にも邪魔だてはさせぬ」


 それを聞き、ピンとくる。

 魔力吸収の魔石でダンジョンを発生させたり、ガレオン船を囮にしたり、毒血魔族を特攻させるなどの作戦は、あの三頭六腕の魔王の入れ知恵したものだったのだろう。


 ……くそ、魔王のヤツめ。


 おそらくギンリュウは魔王への忠義を示す意味も込めて、ヤツが言った作戦を実行したと考えられた。


 しかし、リバース村の皆の予想以上の強さに作戦が崩れた今、ギンリュウは己の本能と情熱に従い、俺にこうして一騎打ちを申し込んできたということなのだろう。


 一人の男として、俺は応えることにした。


「クロエ、キミは海岸に戻ってリバース村の皆をフォローしてくれ」

「ガウゥゥ」

「大丈夫だ、心配いらない。必ず勝って戻る」


 俺を想ってか顔をすり寄せてくるクロエ。なんてかわいいのかしらん。

 だけど大丈夫。俺は負けない。


 そんな根拠のない自信が、ある。


「いってくれ、クロエ」

「ガウ!」


 甲板を蹴り、海岸へと戻ったクロエの背を見送る。

 その間、魔族はただの一人も襲い掛かってはこなかった。


「……これで、正々堂々だ」

「潔いこと。いざ、尋常に――」


 俺とギンリュウが睨み合い、空気がしんと冷える。

 場が、静まり返る。


「「勝負!」」


 声に合わせて、俺は床を蹴る。

 同時、ギンリュウも飛ぶ。

 再び、ケルベロスウェポンと紅呉魔流がぶつかり合う


「オレの居合いを二度も受けるか!」

「そっちこそ、この戦場で一撃じゃなかったのははじめてだ!」

「ヌハハ、それは光栄!」


 続けて、巨体を素早く捻るようにして二撃目を打ち込んでくるギンリュウ。

 魔王に次ぐ存在、魔族の四天王として作中最強クラスの強さを誇る。


 が、しっかり対応できている。

 FFシリーズのオーディ〇とは違い、ヤツの『居合い抜き』は絶対に防げない即死攻撃ではなかったはず。


 ここまでの戦いでスキルによって防御できているのならば、向上したステータスと『魔族殺し』としての補正で押し切れるはず。


「でいっ!」

「押し返すとはっ!」


 俺はケルベロスウェポンを力いっぱい振り切る。

 圧倒され、ギンリュウが後ろに飛び退った。


「ヌン!」

「おおっ!」


 続けて、打ち合う。

 剣と剣がぶつかり合う音が響く。

 

 ギンリュウの一撃一撃は、重く、鋭い。


「久方ぶりの血沸き、肉躍る戦い。さぁ、もっとだ、レオン・アダムス!」


 興奮状態となったらしいギンリュウが、激しく速い斬撃を繰り返しながら言う。

 俺はそのすべてをパリィしながら、体内で魔力を練り始めていた。


 ――不意打ちでのスクープエクストラクションでなら、ダメージを与えられるか?


 より集中し、俺はギンリュウの顔を睨みつけた。



:【体力】が上昇しました

:【魔力】が上昇しました

:【筋力】が上昇しました

:【運】が上昇しました

:【魔族殺し】の職業熟練度が大幅に上昇しました

:【魔法狩猟師】の職業熟練度が上昇しました

:【ジャンパー】の職業熟練度が上昇しました

:【一般パッシブスキル『正々堂々』】を獲得しました

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