#66 リバース村最強説?

「みんな、逃げてくれ……っ!」


 船から叫んだ俺の声は、魔物たちの咆哮にかき消された。


 リバース村の仲間たちが、魔族のヤツらに蹂躙されてしまう――俺は現実から目を背けるように、瞼をきつく閉じ、顔を下げた。


 何もできない悔しさで、身体が震える。

 くそ、俺はなんて無力なのか……!


「じゃかあしいのよ、このアンポンタン!!」


 …………え?


「「「ギャアアアア!」」」


 絶望しかけていた俺の耳に届いたのは、村のみんなの悲鳴――ではなく。

 魔族共の、阿鼻叫喚だった。


 俺は顔を上げ、皆のいる海岸の方へ視線を向けた。

 すると。


「おいおいおい……こりゃ、俺の目は節穴もいいとこだな、はは」


 リバース村の皆が、魔族を相手に大暴れしていた。

 黄金鎧を着こんだ村長――ユースティナを先頭にして。


 なんと村人たちは、魔族の大群を相手に、堂々と大立ち回りを演じてくれていたのだった。


「リバース村魂見せつけてやれぇぇ!」

「「「おおおおおお!!」」」


 叫びながら、リバース村の皆は思い思いの武器を振り回し、魔族を蹴散らしていく。

 畑仕事のためのくわ、杭を打つためのハンマーなど、日常に根差した道具を武器に変え、日常を脅かす脅威、魔族を跳ねのけていく。


「グギャアア!」「ギギィィィィ!」「ゴガァァァァ!!」


 予想以上の勢いと攻撃力に、魔族共は押されっぱなしだ。一切抵抗できずに次々と撃破されている。

 魔族の攻撃はいとも簡単に弾かれ、そこへカウンターを叩き込まれている。


 なんかもう正直、リバース村の皆さんの方が鬼に見える……。

 村人らの魔族を超える乱暴な戦いぶりに、シュプレナード兵もドン引きした顔してるし。


 リバース村の皆さん、強すぎ。

 まさかこれもう、シュプレナード最強集団なのでは?


「あ、そういうことか!」


 そこで、思い至る。

 あれか、毎日ビーンズを食べていたせいでステータスが爆上がりしていたというわけか!


 俺やアリアナ、シェリたちだけでなく、村で採れるビーンズは当然、村人の食卓にも毎日並んでいる。そのため、期せずして彼らも他を寄せ付けない強力な能力値に到達しているということなのだろう。


 すごい、すごいぞリバース村!

 そんじょそこらの騎士団なんかより強い集団になっちゃった!


「わたしの村を舐めんじゃないわよぉぉぉぉ!!」

「アギャアアアア!!?」


 闘気迸るユースティナが、情け容赦なく魔族を蹂躙する。それに続いてリバース村の面々たちも、追撃を叩き込んでいく。

 彼らの異常筋力で振り回される得物に、魔族たちは為す術なく撃滅される一方だ。


「レオォーーン! 一人でカッコつけてないで、こっちにガンガン回しなさぁい! わたしたちリバース村が、魔族をぶっ飛ばしてやるんだからっ!!」


 俺を見つけたユースティナが、頼もしすぎるほどの雄叫びを聞かせてくれる。

 思わず、笑ってしまった。


 こりゃ、一本取られたな。


「よし、クロエ。俺たちももうひと暴れするか」

「ガウ!」


 毒血による状態異常が解け、体調が元に戻ってきた感覚を確かめながら、ゆっくりと身体をストレッチする。


 みんなは心配いらない。

 俺は前を向いて、暴れるだけでいい。


 と、気を取り直した瞬間。


 ドゴゴゴゴオオオオオオオオオオ


「うおっ!?」「ガウゥゥ?!」


 ガレオン船に大きな衝撃があり、船体が揺れに揺れる。

 なんと――他のガレオン船が、そのまま突っ込んできたらしかった。


 俺は縁に必死にしがみつき、クロエは帆柱に噛みつくことで体勢を安定させる。


「囮の船ごと沈めようって魂胆か!?」


 敵の目論見がわかった途端、案の定魔族たちが押し寄せてきた。

 俺とクロエは船の揺れに四苦八苦しつつも、魔族たちを蹴散らしていく。


「クロエ、大丈夫だ。こいつらも相手にならん!」

「ガウ!」


 毒血攻撃をする個体には気を付けなければならないが、未だ俺の一撃を耐えきる魔族は現れていない。

 このまま押し切れれば、勝利は自ずと見えてくるはずだ。


「魔王様のおっしゃっていた通りだな。『レオン・アダムスが一番の障害となる』と」

「ん?」


 乱戦の中、やけに通る声に名前を呼ばれたと思った瞬間――白刃が煌めいた。


「ぐッ!?」

「ほう、この一撃を受けるか」


 咄嗟に構えたケルベロスウェポンで、何者かの一撃をガードした。

 おそらく何かしらのパッシブスキルが発動したのだろう。おかげでなんとか命拾いした。


 人間の反応では追い付かず、間違いなく首を落とされていただろう。


「お初にお目にかかる、レオン・アダムス。オレはギンリュウ・マガツヒノカミ。魔王様をお支えする、四天王の一柱である」

「ご、ご丁寧な挨拶をどうも……っ!」


 鍔迫つばぜり合いをしたまま言うギンリュウ。

 ヤツは魔族にはもったいないほどのダンディな声で、続けた。


「オレと手合わせ願おうか」

「望むっ、ところだ……っ!」


 ガレオン船の甲板。そこで。

 俺とギンリュウの一騎打ちが、はじまろうとしていた。



:【体力】が上昇しました

:【魔力】が上昇しました

:【筋力】が上昇しました

:【運】が上昇しました

:【魔族殺し】の職業熟練度が大幅に上昇しました

:【魔法狩猟師】の職業熟練度が上昇しました

:【ジャンパー】の職業熟練度が上昇しました

:【一般パッシブスキル『鍔迫り合い◎』】を獲得しました

:【一般パッシブスキル『一騎打ち◎』】を獲得しました

:【魔族殺しのパッシブスキル『毒血耐性・小』】を獲得しました

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