#58 解決の糸口、発見

 石の移動を試みて、三日目。

 俺は相変わらず海辺で一人、巨石とのにらめっこを続けていた。


「う、おおおおっ」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………ズゥゥン。


「はぁ、はぁ」


 初日とは違い、石を一瞬震動させるぐらいのことはできるようになった。一日中、魔力が尽きるまで転移にチャレンジし続けたおかげだろう。


 だが、まだまだ瞬間移動には程遠い。


「ふぅ……もういっちょ、いってみるか」


 言って、俺は再び魔力を練り上げていく。

 今度はいっそう集中し、心を研ぎ澄ませる。


「ぬぅ…………っ!」


 体内で練り上げた魔力を、両手から石へと流し込む。

 大きく重たい大石を、持ち上げるようなイメージで魔力で包んでいく。


 じわりと、額に汗がにじんでくる。


「…………フっ!」


 ゴゴゴゴ……ガキキ、ピキ。


 く、失敗か。

 大きな石は変わらず、その場に佇んでいる。


「はぁ、はぁ…………ん? 一部が欠けてる」


 息を整えつつもう一度石を見ると、端っこの辺りがソフトボール大に抜け落ちていた。

 さらに観察すると、断面が異様なほど滑らかに欠けていた。

 いや、どちらかと言えば、欠けたというより“斬り落とした”かのように、つるっとした切断面だった。


「これは……もしかしたら」


 そこで、ピンと来る。


 先ほどまでの俺は、物体を任意の場所に移動させる『ルームーブ』を強化していくつもりで、ずっと魔法を使っていた。

 しかしその過程で『どこか小さい範囲でも動かせないか』という風に、思考が少しずつ変わっていたのかもしれない。


 そのおかげで、おそらく『ルームーブ』とは違う魔法――『スクープエクストラクション』を習得したらしかった。


 この魔法は、簡単に言えば“物体の一部分のみを異次元へと移動させる”魔法だ。

 物体そのものを移動させるのが『ルームーブ』。

 物体の一部を移動させるのが『スクープエクストラクション』。

 と、いうことになる。


 ……勘の良い人は、お気づきのことと思う。


 ゲームでの『スクープエクストラクション』は、『敵の残りHPを1/〇にする』という割合ダメージ系の魔法で、バトル初っ端に使う以外ではあまり威力が出ず、使い勝手の悪い攻撃魔法として、ゲーム後半ではほぼ使われなくなるものだった。


 が、攻撃の際の演出では、敵の身体のあちこちを異次元に消失させダメージを与えるという、中々にエグい攻撃方法が採用されていた。


 もし、そんな風に敵の身体の一部をこちらの思い通りに消し飛ばすことができたなら――割合ダメージなどではなく、それこそ即死魔法となり得るわけだ。


 至極当たり前のことだが、ほとんどの生物は重要な臓器一つどこかへ飛ばされれば、息絶えることになる。グロさの面でも、身体の内側を消して倒せる方が精神衛生上ありがたいしな。


「この『スクープエクストラクション』を極めれば、城塞用に石を即座に加工できるだけじゃなく――魔族に対しても、かなりの有効打になり得るな」


 しかも俺の場合、これに魔族殺しとしての攻撃力補正もつくし、かなり強力な攻撃方法となるはずだ。


 遠距離から最小限で、魔族を蹂躙することができるかもしれない。


「…………俄然、燃えてきたぞ」


 俺は再び集中し、今度は意図的に石の端だけを丸く切り抜いて移動させるイメージで魔力を練り上げていった。


 必ず、モノにしてみせるぞ。



:【体力】が上昇しました

:【魔力】が上昇しました

:【筋力】が上昇しました

:【精神力】が上昇しました

:【魔族殺し】の職業熟練度が上昇しました

:【魔法狩猟師】の職業熟練度が上昇しました

:【ジャンパー】の職業熟練度が上昇しました

:【ジャンパーのアクションスキル『スクープエクストラクション』】を獲得しました

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