ゲームの不遇おっさんキャラに転生したおっさん ~必ずパーティーで飼い殺しにされる無能なおっさんキャラでも、マイペースに楽しく生きれば主人公より強くなれるみたいです~
#56 趣味回:サウナ手作り編② 一気に整う
#56 趣味回:サウナ手作り編② 一気に整う
サウナ作りがはじまって数日。
すでに小屋はほぼ完成し、あとは熱源と、川への滑り台を残すのみとなっていた。
「あーもーやだ! 汗かく、疲れたっ!」
「もうすぐ完成なんだから、あとちょっと頑張れ」
作業がひと段落したタイミングで、駄々をこねだしたユースティナ。それを俺は宥めつつ手を動かし続ける。
できれば、今日中に入浴可能な状況まで持っていきたいところ。
「よっ、ほっ」
俺は『ジャンパー』としての空間魔法と鍛え上げた筋力ステータスを駆使しつつ、すいすい作業を進めていく。重たい木材、石材などもへっちゃらである。
「レオン、サウナができたら、わたしが一番風呂だからね!」
タオルで汗を拭いながら主張するユースティナ。
はいはい、わかってますって。作業中ずっと言ってたもんなー。
「ほら、もうできそうだから今のうちに着替えてこい」
「ふん、指図しないでよ」
「はいはい。汗をかいてもいいような服に着替えてこいよ。あと温まったあとに川に飛び込むと最高だから、あんまり水を吸わない生地のがいいぞ」
「だから、指図しないでっての!」
「はいはい」
そんな問答をしてから、ユースティナは召使たちがいるであろう自室へと戻って行った。『LOQ』の世界観はあくまでも中世ヨーロッパが素地のため、まだ水着などはない。
ちなみに今彼女は、倉庫として使っていた建物の一部を自室として改造して使っている。自分のための新居も建てたいと野望を語っていたっけな。
「ふぅ……さて。今のうちに温度を上げておかないとな」
俺は額の汗を拭ってから、熱源の用意をはじめる。
洗ったサウナストーンを耐熱レンガで作った窯に入れ、習得したばかりの炎魔法『フレイムフィンガー』で温める。
「やば、これじゃ時間がかかるな……」
フレイムフィンガーは、その名の通り指先から炎がチロチロと出る魔法だ。
熟達すれば炎を剣のように五指の先から出したりもできるカッコ良きな魔法なのだが、俺にはまだまだそんな芸当はできない。
どうしたもんか。
「レオン。なにか手伝う?」
「あ、シェリ」
と、そこでシェリが小屋の入り口から顔を出した。『サウナの熱源を炎魔法で作りたい』と言い出した俺に、基礎的な『フレイムフィンガー』を教えてくれたのは彼女である。
一緒に魔法を学んでいたはずの彼女が、気づけば俺を追い越し、先生のようになっている現状。あぁ、才能の差というのはおそろしい……。
「ついさっき、ユースティナの召使の人たちが慌てているのを見たから、なにかあったのかと思って来てみたの」
「ありがとう。もう入浴できそうなところまで来たから火を入れてみようと思ったんだけど、いかんせん俺の炎魔法だと時間がかかって」
端的に今の状況を説明する。
「なら、アタシに任せて」
言うとシェリはサウナに入ってきて、魔力を練りはじめた。
そして、手を窯へと向ける。目には見えないが、炎の魔力が送り込まれているのが体感でわかる。
少しすると、じんわりと中の温度が上がってきた。
「うん、温まったよ」
「ありがとう。さすがシェリ」
初心者な俺と違い、シェリはすでに炎魔法は達人級の腕前だ。
一瞬で、サウナストーンが熱を帯びる。
「で、これに水をかけると……」
俺はすぐに、汲んでおいた川の水を石にかける。
すると。
プシューーーー
弾けたような音を立てて、水が一気に蒸発。
蒸気が、サウナの中に満ちていく。
「ふぅ、これでひとまず完成だな」
サウナ小屋はこれで完成と言っていい。
川への滑り台は、また後日にでも作業すればすぐに終わる。
「ふぅ。熱いね。これならいい汗かけそう」
「た、確かに」
と、横を見ると思った以上にシェリの顔が近かったので焦る。
サウナの熱気で火照ったその顔は、やけに艶っぽかった。
「ユースティナが入ったあと、アタシも入らせてもらおうかな」
「あ、ああ。ぜひサウナの良さを知ってくれ」
「……レオンも、一緒に入る?」
「……お、おぉう……?」
近距離のまま上目遣いで、魅惑的なお誘いをしてくるシェリ。
サウナの熱さとたわわな谷間のダブルパンチで、もはや理性が吹き飛びそうだ……!
「ちょっと、なにしてんのよ。準備できたんだけど?」
「「っ!? は、はーい」」
理性と本能のせめぎ合いを止めたのは、サウナの出入り口に仁王立ちしたユースティナだった。
俺とシェリは慌てて、サウナから出る。
変な空気を追い払うように、お互いに汗を拭き衣服の乱れを直す。
おいこの事後みたい空気なんだこれ。
「まったく、このわたしより先に楽しもうだなんて百年早いんだから」
「「…………」」
ふ、ふぅ、外の風が気持ちいいぜ……(ある種の賢者タイム)。
「さ、それじゃサウナとやらを体験してみようじゃない」
言ってユースティナは、俺とシェリの空気など意に介することなく、入れ替わりにサウナの中へと入っていく。
「……え、これ熱くない? ちょ、汗すごいでるんだけど! 気持ち悪い! 出る!」
「待て待て。サウナはたくさん汗を出すもんなんだ。開き直って、じっくり身体を温めてみろ」
「はぁぁ? 本当でしょうね!? あーもう、慣れるまでがイヤな感じ!」
入った途端、びゃーびゃーと文句を言いはじめるユースティナ。
まぁ、確かにサウナの良さを知るには多少の慣れが必要だ。
が、慣れさえすれば、汗が出れば出るほど心地よく感じられるようになる。
そうして皆、サウナ沼にハマっていくのだ。
「あぁー……ボーっとしてきた。これ、そろそろ出た方がいいんじゃないかしら?」
「そうだな、一回目だしな。よし、出たらそのまま川に飛び込め」
「わかったわ」
ユースティナは珍しく俺の言う通りに、出てすぐに川に入っていった。
「わーっ、これ冷たっ、冷たいってばぁ!」
「気持ちいいだろ?」
「冷たすぎ! 冷たすぎて頭痛くなりそう!!」
そうしていちいち文句を言いながらも、ユースティナはサウナ、川の温冷交代浴を5セットほど行った。
「お疲れ。締めはこれだ」
「……なによ、これ」
隠しきれないポカポカ顔で、サウナ小屋脇のベンチに座って涼んでいたユースティナにコップを持たせ、俺は密かに作っておいた「コーヒー牛乳」を注ぐ。
風呂上りはこれで決まりだろ。
「グイっといきなさい」
「ん」
素直に頷くと、ユースティナはコーヒー牛乳を呷った。
ビールも最高だが、彼女はまだ未成年だからな。
「……っぷはぁ! 美味しい! すっごく美味しいわこれ!!」
「だろ?」
これまでに一度も見せたことがない満面の笑みに、 俺とシェリもつられて笑顔になった。
「このドリンク含めて、最っ高ね、サウナ!」
こうして、あっという間にサウナにハマったユースティナ。
その日から数日間連続で、サウナに入り浸っている彼女が目撃されたらしい。
ちなみに。
その日は俺とシェリもサウナを堪能した。
もちろん、別々に入りましたよ?
:【体力】が大幅に上昇しました
:【魔力】が上昇しました
:【筋力】が大幅に上昇しました
:【知力】が上昇しました
:【精神力】が上昇しました
:【運】が上昇しました
:【サウナー】の職業素養を獲得しました
:【上位:賢者】の職業素養を獲得しました
:【魔族殺し】の職業熟練度が上昇しました
:【魔法狩猟師】の職業熟練度が上昇しました
:【ジャンパー】の職業熟練度が上昇しました
:【一般パッシブスキル『ととのう』】を獲得しました
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貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。
読者の皆様の応援が書く力になっています!
更新がんばります!
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