ゲームの不遇おっさんキャラに転生したおっさん ~必ずパーティーで飼い殺しにされる無能なおっさんキャラでも、マイペースに楽しく生きれば主人公より強くなれるみたいです~
#55 趣味回:サウナ手作り編① 下準備
#55 趣味回:サウナ手作り編① 下準備
よく晴れた空の下。
俺は早起きし、日課の筋トレと大陸パトロールを済ませ、動きやすい服装に着替えてリバース村敷地内に流れる川縁に出た。
腰には工具入れの巾着をぶら下げ、足元には一人せっせと運び込んだ大量の木材などが転がっている。
これらは言うまでもなく――サウナ作りの材料である。
「夢の自作風呂、その第一歩、サウナを作るぞ!」
「なにを一人で浮かれているのかしら」
と、俺の気分を害してきたのは、同じく、朝早くから集合したユースティナだ。いつもと違い、今は動きやすそうな服装をしている。
が、これはついさっき俺がキレ散らかして、無理矢理着替えさせただけだ。この格好になる前は得意のドレス姿だったので、ゴネる彼女を追い返し、着替えさせた。
日曜大工しようってのに高級そうなドレスとか、アホかいっての。
「じゃ、わたしは指示出しするから、レオン、あなたがせっせと働きなさいね」
「馬鹿言うな。ユースティナも動け。じゃないと入浴禁止」
「はぁぁ? このわたしになんの権限があってそんなこと言ってるの?」
「うるさい。サウナ作りに関しては俺が全権を任されている」
ユースティナは俺に任せてサボる気満々なようだが、そうはいかない。俺の全てを賭して、きっちり彼女にも手伝わせる。
なぜ、大浴場からサウナ作りにシフトしているのかと言えば。
大浴場建設計画は、案の定、アリアナとシェリに大反対された。
理由としては、お金と時間がかかりすぎる、作ったところで採算が取れない、意味がない、ユースティナのわがままに付き合ってられない……などなど、様々な不満が噴出した。
本来ならもっと冷静で思慮深い二人があの調子だ、ユースティナへのヘイトの高さがうかがい知れるというもの(事後報告にした俺も悪いんだけど……)。
が、わがまま娘へのヘイトとは関係なく、村に素敵な公衆浴場を作るのは、俺個人としての夢の一つではあった。
だもんで、俺は二人をめげずに説得し、なんとか折衷案として、一先ず小型のサウナハウス作りの許可を得たのだった。
なぜ、サウナは許されたのか。
一つは、圧倒的にコストが安いという点。
シュプレナードから派遣されている職人さんにそれとなく聞いてみた。するとどうやら、大浴場を作るとなると常に清潔な水を組み入れる大規模水道設備から作らなければならないそうで、予想の何倍ものコストがかかるらしかった。だが、サウナであれば小屋を建て、中に熱源となる窯などを作ればもうそれっぽくなる。
しかも木材はイービルトレントから採れるので半ば無限だし、熱源にしたいサウナストーンも、川周辺にいくらでも転がっている。ほぼ材料費はゼロ。
二つ目は、結構簡単にできるという点。
小屋の規模にもよるのだが、一人から二人用の小さなサウナであれば、数日で完成させることができるだろう。俺も最初期にクロエの犬小屋を作ったところから、少しは日曜大工パワーが成長しているはずだし。
そして最後、三つめ。それは美容に良いという点だ。
ぶっちゃけ、これが説得の決め手だったと言っていい。
どうやらアリアナもシェリも、リバース村で暮らすようになってからというもの、外での作業が多いためか、肌荒れが気になってきたらしい。
まぁ俺からすれば二人ともとんでもなく愛嬌があって可愛らしく、村に来てからさらに活き活きとして魅力がマシマシになっていると思っていたが、本人たちとしては違うらしい。
そんな話を聞いた覚えがあったので、それとなくサウナの発汗作用が肌に物凄くいいと、前世で読んだ東〇経済オンラインかなにかのネット記事の知識を、我が物顔で披露した。
すると、頑なだった二人の牙城がわずかに揺らぎ、気付くと小規模サウナであれば作ってみても、という話になっていたのだった。枯れそうな俺とは違い、まだまだ二人は年頃の女性である。当然、美容に良いと聞けば無下にはできないものなのだろう。
「完成したらレオン、一緒に入る?」
「お、おぅ……?」
シェリの魅力的すぎる誘いに、思わず俺も声が裏返った……そんなんじゃ整うもんも整わないぞ、シェリさんよ?
なにはともあれ、そうして俺は夢への第一歩、自家製サウナを作ることとなったのだった。
まだ構想段階だが、集めた石を炎魔法で温め、そこから出る熱と蒸気でロウリュウっぽく楽しむ、というのができたらいい。さらに川へ一直線の滑り台とかも設けたいところ。
いやー、これは整っちゃうなぁ、絶対整っちゃうだろー。
「…………」
……というかなにより、ルルリラがいなくなってしまってから、村のみんなに、どこか意気消沈した雰囲気があった。
そんな皆に対して村長(元)の俺ができることと言ったら。
――サウナというリフレッシュ空間の提供かも、と、そんな風に思ったのだ。
「よし、まずはサクっと小屋を作ってしまうか」
俺は一瞬感じた切ない気配を、声を出して打ち消す。
「そうね。さ、レオン。この木材を運びなさい」
「お前もやれっつの」
あと、もう一つ。
自分で作ったサウナで村のみんなが喜ぶ姿を見れば、このダメ村長ユースティナも、少しは村への愛情が上がるのでは?
:【体力】が上昇しました
:【魔力】が上昇しました
:【筋力】が上昇しました
:【知力】が上昇しました
:【精神力】が大幅に上昇しました
:【日曜大工】の職業素養を獲得しました
:【魔族殺し】の職業熟練度が上昇しました
:【魔法狩猟師】の職業熟練度が上昇しました
:【ジャンパー】の職業熟練度が上昇しました
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貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。
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