街づくり編 中章

#50 新たな波乱?

 ルルリラが魔王と共にいなくなってから、二週間が経過した。

 明るいムードメーカーだった彼女を失い、意気消沈していたリバース村のみんなも徐々に活気を取り戻しつつあった。


 俺はと言えば。


 うん、今はもう元気だ。

 ……そう自分に言い聞かせていくしかないというのが、本心ではあるけれど。


「…………」


 俺は今、七大国が一つ『ロマンラング公国』の海岸にいた。

 ボーっと風に吹かれながら海岸線を眺めていると、空しい気持ちが込み上げてくる。


 おっと、いかんいかん。また後ろ向きになったらダメだ。


「うん、今日はこのぐらいにしておこう」


 切り替えるため声に出しながら、俺は今日のパトロールを終了する。


 魔王と遭遇して以来、俺は魔領域での魔族狩り、魔法研究の時間を減らし、人間の領土内のパトロールをより入念に行うようにした。

 こうして様々な国に赴き、日々魔族の出現と発生を警戒していれば、自ずと魔王とルルリラに遭遇できる確率が上がると思ったからだ。


「なんにせよ、一つ一つ課題をクリアしていかないとだな」


 そう、何事も焦っても仕方ない。

 一つ一つ強くなり、あのチートな魔王と渡り合えるぐらいになって、魔族発生の根源を絶つしか抜本的な解決方法はない。

 それに、ルルリラを連れ戻すにもそれしかないのだから、焦れば焦るだけ無駄、ということだ。


 ヘコんでその場に蹲っていても、なにも解決しない。


「ガウワウ!」

「おお、クロエ。そっちは問題なしかー?」


 一緒にパトロールに来たクロエが、人懐っこく顔を寄せて来る。

 もうすっかり身体が成長しきり、顔の高さが俺の身長を超えている。


 立派になったなぁ。


「ガルゥ! ワウ!」

「ん? どうした、なにかあったか?」


 クロエが服の端に牙を引っかけ、引っ張ってくる。

 なにかあったのか?


「ガウ!」

「……ん?」


 クロエが口先を向けた先、海岸とは反対の森の中。

 よーく目を凝らすと――走り回っている人影が、二つ。


「ヴァンー! いい加減、わたしのことを仲間と認めたらどうなのっ!?」

「う、うっせー! オレはお前と一緒なんて絶対にごめんだッ!!」

「いいじゃない、せっかく出会ったんだもん! 一緒に冒険しましょーよーッ!!」


 まさか、ヴァンなのか?

 そういえば、LOQのメインストーリーでパオマ村の次に訪れるのはここ、ロマンラング公国だったかも。


 最初の仲間でヒロイン格の『ユースティナ・ロマンラング』がパーティーに加わるんだったな。


「……あれ!? お、おい、レオンとクロエじゃねーかよ! ちょうどイイトコにいた!」

「み、見つかった」「ガル」


 目ざとく俺とクロエを見つけ、こちらに向かって走ってくるヴァン。うげ、なんか絶対に面倒なことに巻き込まれそうな予感。


「た、助けてくれぇぇ!」

「い、いやです!」「ガル!」


 なんとなくトンズラした方がいいのではと感じ、背中を向けるように俺とクロエが回れ右するが。


「こらーヴァン! ヴァン・オルフェン!! わたしから逃げられると思わないでよっ!」

「ひぃぃっ! た、頼む、隠れさせてくれ!」

「んなっ!?」「ガウ!?」


 素早く俺たちを追い越したヴァンが、クロエの巨体の後ろに身を隠した。


「ちょっとあなたたち! そこに隠れてる人を渡してちょーだい」


 可憐な声に振り返ってみると、ヴァンを追いかけていたのはとんでもない美少女だった。

 天使が実在したのなら、きっと彼女のような美しさをしていることだろう。


 そう――『ユースティナ・ロマンラング』だ。


「どなたか知らないけれど、その赤髪の人はこのわたし、ユースティナ・ロマンラングがはじめて認めた勇者なの。さ、渡して?」


 染めたような金ではなく、ともすれば白銀のように見える美しい金髪をなびかせ、ユースティナ・ロマンラングは言った。ドレスのようなゴージャスな服に身を包んだその姿からは、神々しい輝きが溢れていた。


 出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる、完璧なプロポーション。


 そして名前からもわかる通り、彼女はロマンラング公国の君主であるロマンラング家の一人娘であるため、一国の最高権力者と言っても過言ではない。


 全てを持つ完璧お嬢様、それが作中のユースティナ・ロマンラングだった。


「…………っ」


 が、俺は後ずさる。

 本音を言うと、この子とはあまり行動を共にしたくない。


 それは、なぜか。

 なにを隠そう、このユースティナという美しいお嬢様は――


「もうっ、早く渡すかどくかしてよ! わたしの言うこと聞かない人は入国禁止っ!!」


 ――作中屈指の、嫌われヒロインなのだった。



:【体力】が上昇しました

:【魔力】が上昇しました

:【筋力】が上昇しました

:【知力】が上昇しました

:【精神力】が上昇しました

:【運】が上昇しました

:【魔族殺し】の職業熟練度が大幅に上昇しました

:【魔法狩猟師】の職業熟練度が大幅に上昇しました

:【ジャンパー】の職業熟練度が大幅に上昇しました

:【魔法狩猟師のパッシブスキル『哨戒』】を獲得しました

:【魔法狩猟師のパッシブスキル『高精度索敵』】を獲得しました

====================

貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

読者の皆様の応援が書く力になっています!

更新がんばります!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る